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第四章
149「賢者《ワイズマン》の懸念(2)」
しおりを挟むその後、明凛、メイベルから一通り、賢者の凄さを丁寧に説明された。
「いい、ソラ? 彼⋯⋯賢者は前回の転移者同士の戦いで生き残った唯一の人物なのよ。これがどれだけ凄いことなのか、ちょっとは勉強したほうがいいわよ」
「⋯⋯はい」
「ソラ! あんたねー、自分がどれだけ幸運なポジションにいるのかってことをもう少し知ったほうがいいわよ! ていうか、勉強しなさい!!」
「⋯⋯はい」
二人から「いかに賢者が凄いか、そして自分がどれだけ幸運なポジションにいるのか」ということをくどくどと説明され、挙句「勉強しろ」とまで言われた。
「ま、まー、二人ともそこまでにしてくれ」
「そ、そうですか⋯⋯?」
「賢者が言うんなら⋯⋯」
最終的に賢者に助けられました。
********************
「で? 用事ってのは何だ?」
と、俺は賢者にいつものように聞いてしまった。
「あんた! 今言ったばかりなのに!!」
「ソラ! あんたバカなの? ねぇ、バカなの!!」
ムギュー!
俺の両サイドに二人が来るや否や、頬をギューと摘まれた。
「い⋯⋯いひゃい、いひゃい。ご、ごめん⋯⋯な⋯⋯ひゃい」
この後、賢者が「話が進まないから、本当にやめてくれ」と、明凛とメイベルは割とガチ目に説教された。
「さて、それでだが、用事というのは⋯⋯⋯⋯まずは『鏑木と早乙女』のことだ」
「え? それって、確か、俺と同じ転移者の⋯⋯」
「そうだ。実は⋯⋯最近あの二人と連絡が取れなくなっている」
「「「っ!?」」」
賢者は俺たちの反応を特に気にも止めず話を続けた。
「連絡が取れなくなったのは約1ヶ月前ほどだ。あと、タイミングの悪いことにここにきて『同時多発的』に問題が頻発している」
「⋯⋯え? 頻発?」
「ああ。まずはさっき言った『鏑木と早乙女の転移者の行方不明』⋯⋯。そして、次が『竜ヶ崎真司』の件だ」
「ええっ?! りゅ、竜ヶ崎真司⋯⋯?」
俺は賢者の言葉に一人、唖然とした。
********************
「ちょ、ちょっと、誰なのよ、ソラ! その⋯⋯リュウガサキシンジって⋯⋯?」
「え? あ、ああ⋯⋯」
呆然として立ったまま固まっていた俺に、メイベルが聞いてきたので竜ヶ崎のことを説明した。
「⋯⋯なるほどね。ソラ君やソラ君と一緒にいた同じクランの唐沢利樹や胡桃沢星蘭の元同級生⋯⋯か」
「そう言えば、確かちょっと前⋯⋯去年の春頃に日本の高校生探索者で注目されていた子がいたわね。もしかして⋯⋯」
「⋯⋯ああ。たぶん、メイベルの言っている人物と同一人物だ、竜ヶ崎は俺たちよりも先に高校生探索者になって活躍していたからな」
「ああ⋯⋯そう言えば、聞いたことがあるわね。確かその子って『竜ヶ崎ファーマ』の創業者の竜ヶ崎真命の子供よね?」
「え?⋯⋯『竜ヶ崎ファーマ』?」
「そうだ」
「「「⋯⋯賢者!」」」
「明凛の言う通り、奴は竜ヶ崎ファーマの竜ヶ崎真命の一人息子だ」
「え、えーと、その竜ヶ崎ファーマって⋯⋯⋯⋯何?」
「えっ?! あんた知らないの!!」
ということで、メイベルに丁寧に説明してもらった。
「『竜ヶ崎ファーマ』⋯⋯世界10カ国に拠点を持つ世界三大製薬会社の一角を担っている多国籍企業よ」
「ええっ!? 世界三大製薬会社の一角ぅ~!!」
な、何だか、スケールのでかい話に聞こえるんだが⋯⋯?
「彼の父親である竜ヶ崎真命の会社の主力事業は探索者向けの『魔力強化薬』の販売よ」
「え? 魔力強化薬⋯⋯?」
「うむ。竜ヶ崎真命はその魔力強化薬研究の第一人者だ」
と、ここからは賢者が説明をしてくれるようだ。
「魔力というのは、その名の通り、魔法を使う時に必要なエネルギーのようなものだが、魔力強化薬は自身の魔力を強化させて魔法の威力を上げたいときに使われる。さしづめ、強敵を相手にするときに使われる」
「なるほど。で? その竜ヶ崎がどうしたんだ?」
「竜ヶ崎真司君は最近まで行方不明となっていたのだが⋯⋯」
「えっ? 行方不明っ?!」
「ああ。しかし、問題はそこではない」
「⋯⋯え?」
「実は⋯⋯最近、竜ヶ崎真司らしき人物の目撃例が増えていてな」
「じゃ、じゃあ、あいつは無事だってことか⋯⋯よかった」
「何だ? 仲が悪いんじゃないのか?」
「いや、そんなことないよ。少なくとも俺は嫌っているとかはないぞ?」
「⋯⋯そうか」
まーだからといって、仲が良いってわけでもないけど⋯⋯。
「ん? 無事ならよかった⋯⋯って話じゃないのか?」
「⋯⋯ああ。実は、その竜ヶ崎真司君の目撃例のほとんどが⋯⋯探索者を襲っているところだったんだ」
「え?」
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