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タイムリープしたようなので人生をやり直そうと思います
再会でチャンス到来
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バックヤードで深く切った指を止血していた。
「だいぶ止まったな」
防水の絆創膏を貼ったところで、時計を確認するとおよそ1時間が経過している。
コンコンとノックの後、すぐにドアが開かれて、店内のBGMがひと際大きくなった。
「泉、お前お客さん入れないだろ? 買い出し頼めるか?」
山内先輩が入って来るなりそう言った。
「ああ、いいですよ」
「いつものにぎわい弁当だ」
過去にはなかったシーンだ。
僕が正社員になってから、弁当の買い出しに行った事は一度もない。
山内先輩がメモを差し出す。
『カレー1
鶏のから揚げ弁当2
生姜焼き弁当2
チキン南蛮弁当1
大盛焼きそば3
のり弁4』
きっちりスタッフの人数分の弁当注文のメモと、事前に預かったお金が入った百均のポーチが渡された。
「それから、これ」
山内先輩はメモ紙を差し出す。
「梨々花ちゃんがお前に渡してくれって。今年から高校生になるから、携帯を買ってもらったらしい」
メモには、電話番号とメールアドレスが、梨々花の手書きで書かれていた。
「あー、ありがとうございます」
これも、僕の歴史とは少し違っている。
あの日、帰り際に梨々花は『高校生になるから携帯買ってもらったの。電話番号とメアド交換しよう!』
と新品のガラケーを自慢げに見せて来た。
それから、毎日彼女から他愛もないメッセージが届くようになり、次第に親密になって行ったのだ。
担当スタイリストとして、これに連絡しないわけにはいかない。
筋道は変わっても、あった出来事は簡単には変えられないってわけか。
「さっさと行って来いよ。第一班が昼飯に入るまであと30分だ」
「わかりました。行ってきます」
山内先輩はこの店の副店長であり、確か僕はこの人の元で技術指導を受けるのだ。
厳しいが、いい先輩だったな。
そんな事を思いながら、買い出しに出かけた。
「えっと、にぎわい弁当は……、確か、この信号を渡って、あのコンビニの角から10メートルほど先か……」
信号待ちをしている間、街を見回す。
スクランブル交差点の大型LEDビジョンには、4月から消費税が5%から8%に引き上げになるというニュースが流れている。
改めて10年前に戻っているのだと思い知らせる。
信号が青に変わり、群衆が一斉に同じ方向に動き出す。
皆、同じような顔で、同じような足取りで――。
向こう側からも、人が押し寄せる。
その群衆に、ひと際目を引く人物が混ざり込んでいる。
長い黒髪をゆるく後ろでまとめ、耳には小さなピアスが揺れている。
白のスキニーパンツに、透け感のあるロングブラウス。
そういえば、こういう着こなしが流行っていた。
上品な胸元のネックレスが、彼女の透明感を更に引き立てていた。
僕は思わず足を止め、その人物に釘付けになった。
心臓がバクバクと激しく収縮し、血圧を上げる。
僕の真横を通り過ぎた彼女に、意を決して声をかけた。
「保坂さん!」
僕の声に気付き、立ち止まった保坂芙美。
ゆっくり振り返って、陽だまりのような笑顔を見せた。
「泉君! 久しぶり!」
こんなチャンスは二度とない。
僕は信号を渡る事をやめ、彼女の進行方向に一緒に歩いた。
「高校卒業以来ね」
ついさっき、死に顔を見たばかり。
元気そうに華やかに笑う彼女に、胸がいっぱいで、上手く言葉が出てこない。
僕は、今にも泣きそうな顔をしているだろう。
「泉君? どうしたの?」
「あ、いや。まさか会えると思ってなかったから、感無量で」
「うふふっ、変な泉君」
「ちょっと話せない?」
「ごめんなさい。今、急いでるの。大学の卒業パーティで」
彼女はそう言って、目の前のホテルを指さした。
「そっか。農大に行ったんだったね。2年で卒業か」
「そう、大学って言っても、専門学校みたいな物よ」
「何時に終わる?」
「パーティ事態は3時頃には終わると思うけど、夜は夜で二次会があるのよ」
「大事な話があるんだ」
咄嗟にそんな嘘が口を突いた。
「大事な話?」
彼女はそう言って大きなバッグから手帳を取り出した。
サラサラと何やら書き込んでこちらに差し出す。
「私の携帯番号。泉君も仕事中でしょ? よかったら夜にでも電話して」
「いいの?」
「大事な話があるんでしょ?」
「ああ、そうだ! 大事な話があるんだ。夜電話するよ」
僕がメモを受け取ると保坂さんは「それじゃあ」と、小さく手を振って、小走りで去って行った。
彼女と伊藤は同じ農業大学に行った。
と言う事は、この卒業パーティには伊藤も来ているというわけだ。
「だいぶ止まったな」
防水の絆創膏を貼ったところで、時計を確認するとおよそ1時間が経過している。
コンコンとノックの後、すぐにドアが開かれて、店内のBGMがひと際大きくなった。
「泉、お前お客さん入れないだろ? 買い出し頼めるか?」
山内先輩が入って来るなりそう言った。
「ああ、いいですよ」
「いつものにぎわい弁当だ」
過去にはなかったシーンだ。
僕が正社員になってから、弁当の買い出しに行った事は一度もない。
山内先輩がメモを差し出す。
『カレー1
鶏のから揚げ弁当2
生姜焼き弁当2
チキン南蛮弁当1
大盛焼きそば3
のり弁4』
きっちりスタッフの人数分の弁当注文のメモと、事前に預かったお金が入った百均のポーチが渡された。
「それから、これ」
山内先輩はメモ紙を差し出す。
「梨々花ちゃんがお前に渡してくれって。今年から高校生になるから、携帯を買ってもらったらしい」
メモには、電話番号とメールアドレスが、梨々花の手書きで書かれていた。
「あー、ありがとうございます」
これも、僕の歴史とは少し違っている。
あの日、帰り際に梨々花は『高校生になるから携帯買ってもらったの。電話番号とメアド交換しよう!』
と新品のガラケーを自慢げに見せて来た。
それから、毎日彼女から他愛もないメッセージが届くようになり、次第に親密になって行ったのだ。
担当スタイリストとして、これに連絡しないわけにはいかない。
筋道は変わっても、あった出来事は簡単には変えられないってわけか。
「さっさと行って来いよ。第一班が昼飯に入るまであと30分だ」
「わかりました。行ってきます」
山内先輩はこの店の副店長であり、確か僕はこの人の元で技術指導を受けるのだ。
厳しいが、いい先輩だったな。
そんな事を思いながら、買い出しに出かけた。
「えっと、にぎわい弁当は……、確か、この信号を渡って、あのコンビニの角から10メートルほど先か……」
信号待ちをしている間、街を見回す。
スクランブル交差点の大型LEDビジョンには、4月から消費税が5%から8%に引き上げになるというニュースが流れている。
改めて10年前に戻っているのだと思い知らせる。
信号が青に変わり、群衆が一斉に同じ方向に動き出す。
皆、同じような顔で、同じような足取りで――。
向こう側からも、人が押し寄せる。
その群衆に、ひと際目を引く人物が混ざり込んでいる。
長い黒髪をゆるく後ろでまとめ、耳には小さなピアスが揺れている。
白のスキニーパンツに、透け感のあるロングブラウス。
そういえば、こういう着こなしが流行っていた。
上品な胸元のネックレスが、彼女の透明感を更に引き立てていた。
僕は思わず足を止め、その人物に釘付けになった。
心臓がバクバクと激しく収縮し、血圧を上げる。
僕の真横を通り過ぎた彼女に、意を決して声をかけた。
「保坂さん!」
僕の声に気付き、立ち止まった保坂芙美。
ゆっくり振り返って、陽だまりのような笑顔を見せた。
「泉君! 久しぶり!」
こんなチャンスは二度とない。
僕は信号を渡る事をやめ、彼女の進行方向に一緒に歩いた。
「高校卒業以来ね」
ついさっき、死に顔を見たばかり。
元気そうに華やかに笑う彼女に、胸がいっぱいで、上手く言葉が出てこない。
僕は、今にも泣きそうな顔をしているだろう。
「泉君? どうしたの?」
「あ、いや。まさか会えると思ってなかったから、感無量で」
「うふふっ、変な泉君」
「ちょっと話せない?」
「ごめんなさい。今、急いでるの。大学の卒業パーティで」
彼女はそう言って、目の前のホテルを指さした。
「そっか。農大に行ったんだったね。2年で卒業か」
「そう、大学って言っても、専門学校みたいな物よ」
「何時に終わる?」
「パーティ事態は3時頃には終わると思うけど、夜は夜で二次会があるのよ」
「大事な話があるんだ」
咄嗟にそんな嘘が口を突いた。
「大事な話?」
彼女はそう言って大きなバッグから手帳を取り出した。
サラサラと何やら書き込んでこちらに差し出す。
「私の携帯番号。泉君も仕事中でしょ? よかったら夜にでも電話して」
「いいの?」
「大事な話があるんでしょ?」
「ああ、そうだ! 大事な話があるんだ。夜電話するよ」
僕がメモを受け取ると保坂さんは「それじゃあ」と、小さく手を振って、小走りで去って行った。
彼女と伊藤は同じ農業大学に行った。
と言う事は、この卒業パーティには伊藤も来ているというわけだ。
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