39 / 52
純愛
幸せの涙
しおりを挟む
Side-芙美
「うん。そっか、あはは、マジで……うんうん。それで?」
夢うつつ……
まどろみの中で、大牙の声が耳に流れ込んで来る。
「そんな事ないよ。普通だよ」
うっすらと視界に映り込むのは、大牙の部屋。
どうして私?
どうしてここにいるんだっけ?
フローリングに敷かれた布団の上に、私は横になっている。
シューシューとお湯を沸かす音が聞こえる。
そして、大牙の声。
「うんうん。え? うん、もちろん。好きだよ。梨々花……」
夢?
悪い夢を見ているの?
私、今何歳で、何がどうしてここにいるんだっけ?
ここ数ヶ月の記憶が脳内で蘇り、現状を把握するのに暫くかかった。
私はあの雑木林で死んだ。それから、タイムリープして、伊藤との結婚式でDVを暴露して、競馬で大当たりして、それから――。
「あ、ちょっと充電切れるわ。また明日ね。あ? いや、充電器壊れてて、うん。ごめんね、おやすみ」
大牙の声のトーンが変わった。
「芙美? 大丈夫?」
そして、全ての記憶が鮮明になって、悪い夢のさなかにいる事を把握した。
「大牙……」
「よかった、気が付いて。うちの前で気を失ってたんだ」
額には冷えピタ。
「すごい熱だったから、どうなるかと思ったよ」
「あ、ごめん。迷惑かけちゃって」
上体を起こして、改めて自分の置かれている位置に驚いた。
大牙の部屋で大牙の布団に寝ていた。
「はっ! ごめんなさい。私……」
「いいよ。疲れが出たんだろう。このところ随分冷え込んで来ていたし、風邪引いたかな」
大牙はそう言いながら、薬箱から風邪薬を取り出した。
「軽く、うどんかお粥でも作るよ。それ食べて薬飲んでゆっくり休むといい」
――好きだよ。梨々花。
という大牙の声が脳内でリフレインする。
「ううん。私帰る」
「どうやって? もう夜中の2時だよ」
「タクシー拾うわ」
そう言って、布団から抜け出した。
髪を整えながら
「ごめんね。迷惑かけちゃった」
「全然。迷惑なんてかけてないよ。何か用事があったんじゃないの?」
「ううん。たまたま通りかかっただけ。なんだか今日は体調が優れなくて」
「そっか。ゆっくりして行けばいいのに」
「ありがとう。じゃあ」
そう言って立ち上がった瞬間、ふらっと眩暈がして視界が歪んだ。
次の瞬間、大牙の腕の中にいた。
大牙は少し怒った顔をして、再び私を布団の上に座らせた。
同じ目線に屈んで、私の両肩をぎゅっと握って
「こんな時でも君は僕に甘えないの?」
「え?」
「僕はいつでも君の力になりたいのに、君はいつも僕を必要としない」
乾いていた涙腺が潤みはじめる。
そうだった。
つい数時間前、そんな事に気付いたんだった。
私は、大牙の胸の中に飛び込むつもりでここへ来たんだった。
自然と嗚咽が込み上げる。
私はどうしてこうも自分に自信がないのだろう?
ずっとずっと、愛されるという意味をはき違えて来たせいかな。
愛されるという事がどういう事なのかわからなくなっていた。
暴力と偽りの優しさの中で、いつしか愛される事が怖くなっていた。
私にとっての愛。それは痛みと苦しみと憎しみをなかった事にする甘美な時間。それすらも与えられなくなって、体がバラバラになるほどの苦痛だけが残った。
「芙美? なんで泣くの?」
しゃくりあげながら涙を流す私を、大牙は不器用に抱きしめた。
「僕は、必ず君を助けるから。絶対に幸せな未来にして見せるから。だから、もう泣かないで」
「大牙……」
硬い胸板に顔をうずめて、嗚咽した。
伝わらない……
どうやって伝えればいいのかわからない……。
大牙の胸から顔へ、視線を移すと間近で重なり合う視線。
すぐそこで混ざり合う吐息。
唇と唇までの距離はわずか10センチ。
その差が徐々に縮まって
重なり合う寸前。
「ごめん」
私は顔を反らしてしまった。
イルミネーションの下で、彼があの子とキスをした。
あのシーンが鮮明に脳内に映し出されて――。
「ごめん……」
「あ、いや。ごめん。そんなつもりじゃないから」
彼に掴まれていた私の両肩は開放されたようで、ふっと軽くなった。
そしてその瞬間、ピーーーーーとヤカンが笛を吹いた。
急いでキッチンに向かう彼の背中を見届けた時だった。
私の意識はまた、フェイドアウトした。
目が覚めたのはそれからどれぐらい経った頃だろうか。
しっかり布団に包まれていて、目線の先にはローテーブルに座って書きものをしている大牙の背中。
時計は3時半をさしている。
「大牙?」
声をかけると、弾かれたように振り返った。
「芙美! よかった。タイムリープしてなかったね」
「え?」
「急に意識を失くしたから、もしかしたらタイムリープしたのかと思って日記を書いてたんだ」
「日記?」
「そう。僕が寝てたり、いない間にこの時間軸の芙美になったらパニック起こすだろうと思って」
そう言って、キャンパスノートを見せてくれた。
「これを読めば、自分の身に何が起きてるのかわかるようになってる」
そこには、結婚式からここに至るまでの事や、私の現在の住まい、復讐の計画について事細かに書き記されていた。
その事務的な作業に込められた優しさは尊くて、幸せが胸を膨らませた。
「今日は、ここに泊まって。僕はどこでだって寝れるから。仕事中立ったままでも寝れるやつだから」
そう言って、お道化て笑う。
こちらまで自然と笑顔になる。
「大牙。私ね」
「うん」
「なんだかモヤモヤしちゃって」
「モヤモヤ?」
「うん。梨々花さんと大牙が……その、キスするところ見ちゃって」
「え? それって……え?」
「お芝居だってわかってるのに、苦しくて、不安で……」
言った瞬間、大牙の両手が私を包み込んだ。
洗いざらした洗濯物の匂いが鼻先を擦る。
「ごめん……僕、自分の気持ちばっかりで、芙美の気持ちを全然考えてなかった」
今? 今よね?
私の幸せ、掴まなきゃ。
そっと、大牙の背中に腕を回した。
固い鎧のようにのしかかっていた負の呪いが、温かな幸福感に溶かされていく。
「ごめん。気付けなくて」
大牙の胸板に額を押し付けて首を横に振った。
「大牙に気持ちを伝えたくてここへ来たの」
大牙の両腕は更に深く、私を包み込んだ。
涙が静かに頬を伝う。
体内の毒を洗い流すかのように、すたすたと彼の肩に零れ落ちる。
「好きだよ、芙美」
誠実そうな声が鼓膜をいやして、幸福に包まれる。
私どうして泣いてるんだろう?
それは初めて知った幸せの涙だった。
「私も……好きよ。大牙……」
彼の少しかさついた唇が、そっと頬を拭った。
「うん。そっか、あはは、マジで……うんうん。それで?」
夢うつつ……
まどろみの中で、大牙の声が耳に流れ込んで来る。
「そんな事ないよ。普通だよ」
うっすらと視界に映り込むのは、大牙の部屋。
どうして私?
どうしてここにいるんだっけ?
フローリングに敷かれた布団の上に、私は横になっている。
シューシューとお湯を沸かす音が聞こえる。
そして、大牙の声。
「うんうん。え? うん、もちろん。好きだよ。梨々花……」
夢?
悪い夢を見ているの?
私、今何歳で、何がどうしてここにいるんだっけ?
ここ数ヶ月の記憶が脳内で蘇り、現状を把握するのに暫くかかった。
私はあの雑木林で死んだ。それから、タイムリープして、伊藤との結婚式でDVを暴露して、競馬で大当たりして、それから――。
「あ、ちょっと充電切れるわ。また明日ね。あ? いや、充電器壊れてて、うん。ごめんね、おやすみ」
大牙の声のトーンが変わった。
「芙美? 大丈夫?」
そして、全ての記憶が鮮明になって、悪い夢のさなかにいる事を把握した。
「大牙……」
「よかった、気が付いて。うちの前で気を失ってたんだ」
額には冷えピタ。
「すごい熱だったから、どうなるかと思ったよ」
「あ、ごめん。迷惑かけちゃって」
上体を起こして、改めて自分の置かれている位置に驚いた。
大牙の部屋で大牙の布団に寝ていた。
「はっ! ごめんなさい。私……」
「いいよ。疲れが出たんだろう。このところ随分冷え込んで来ていたし、風邪引いたかな」
大牙はそう言いながら、薬箱から風邪薬を取り出した。
「軽く、うどんかお粥でも作るよ。それ食べて薬飲んでゆっくり休むといい」
――好きだよ。梨々花。
という大牙の声が脳内でリフレインする。
「ううん。私帰る」
「どうやって? もう夜中の2時だよ」
「タクシー拾うわ」
そう言って、布団から抜け出した。
髪を整えながら
「ごめんね。迷惑かけちゃった」
「全然。迷惑なんてかけてないよ。何か用事があったんじゃないの?」
「ううん。たまたま通りかかっただけ。なんだか今日は体調が優れなくて」
「そっか。ゆっくりして行けばいいのに」
「ありがとう。じゃあ」
そう言って立ち上がった瞬間、ふらっと眩暈がして視界が歪んだ。
次の瞬間、大牙の腕の中にいた。
大牙は少し怒った顔をして、再び私を布団の上に座らせた。
同じ目線に屈んで、私の両肩をぎゅっと握って
「こんな時でも君は僕に甘えないの?」
「え?」
「僕はいつでも君の力になりたいのに、君はいつも僕を必要としない」
乾いていた涙腺が潤みはじめる。
そうだった。
つい数時間前、そんな事に気付いたんだった。
私は、大牙の胸の中に飛び込むつもりでここへ来たんだった。
自然と嗚咽が込み上げる。
私はどうしてこうも自分に自信がないのだろう?
ずっとずっと、愛されるという意味をはき違えて来たせいかな。
愛されるという事がどういう事なのかわからなくなっていた。
暴力と偽りの優しさの中で、いつしか愛される事が怖くなっていた。
私にとっての愛。それは痛みと苦しみと憎しみをなかった事にする甘美な時間。それすらも与えられなくなって、体がバラバラになるほどの苦痛だけが残った。
「芙美? なんで泣くの?」
しゃくりあげながら涙を流す私を、大牙は不器用に抱きしめた。
「僕は、必ず君を助けるから。絶対に幸せな未来にして見せるから。だから、もう泣かないで」
「大牙……」
硬い胸板に顔をうずめて、嗚咽した。
伝わらない……
どうやって伝えればいいのかわからない……。
大牙の胸から顔へ、視線を移すと間近で重なり合う視線。
すぐそこで混ざり合う吐息。
唇と唇までの距離はわずか10センチ。
その差が徐々に縮まって
重なり合う寸前。
「ごめん」
私は顔を反らしてしまった。
イルミネーションの下で、彼があの子とキスをした。
あのシーンが鮮明に脳内に映し出されて――。
「ごめん……」
「あ、いや。ごめん。そんなつもりじゃないから」
彼に掴まれていた私の両肩は開放されたようで、ふっと軽くなった。
そしてその瞬間、ピーーーーーとヤカンが笛を吹いた。
急いでキッチンに向かう彼の背中を見届けた時だった。
私の意識はまた、フェイドアウトした。
目が覚めたのはそれからどれぐらい経った頃だろうか。
しっかり布団に包まれていて、目線の先にはローテーブルに座って書きものをしている大牙の背中。
時計は3時半をさしている。
「大牙?」
声をかけると、弾かれたように振り返った。
「芙美! よかった。タイムリープしてなかったね」
「え?」
「急に意識を失くしたから、もしかしたらタイムリープしたのかと思って日記を書いてたんだ」
「日記?」
「そう。僕が寝てたり、いない間にこの時間軸の芙美になったらパニック起こすだろうと思って」
そう言って、キャンパスノートを見せてくれた。
「これを読めば、自分の身に何が起きてるのかわかるようになってる」
そこには、結婚式からここに至るまでの事や、私の現在の住まい、復讐の計画について事細かに書き記されていた。
その事務的な作業に込められた優しさは尊くて、幸せが胸を膨らませた。
「今日は、ここに泊まって。僕はどこでだって寝れるから。仕事中立ったままでも寝れるやつだから」
そう言って、お道化て笑う。
こちらまで自然と笑顔になる。
「大牙。私ね」
「うん」
「なんだかモヤモヤしちゃって」
「モヤモヤ?」
「うん。梨々花さんと大牙が……その、キスするところ見ちゃって」
「え? それって……え?」
「お芝居だってわかってるのに、苦しくて、不安で……」
言った瞬間、大牙の両手が私を包み込んだ。
洗いざらした洗濯物の匂いが鼻先を擦る。
「ごめん……僕、自分の気持ちばっかりで、芙美の気持ちを全然考えてなかった」
今? 今よね?
私の幸せ、掴まなきゃ。
そっと、大牙の背中に腕を回した。
固い鎧のようにのしかかっていた負の呪いが、温かな幸福感に溶かされていく。
「ごめん。気付けなくて」
大牙の胸板に額を押し付けて首を横に振った。
「大牙に気持ちを伝えたくてここへ来たの」
大牙の両腕は更に深く、私を包み込んだ。
涙が静かに頬を伝う。
体内の毒を洗い流すかのように、すたすたと彼の肩に零れ落ちる。
「好きだよ、芙美」
誠実そうな声が鼓膜をいやして、幸福に包まれる。
私どうして泣いてるんだろう?
それは初めて知った幸せの涙だった。
「私も……好きよ。大牙……」
彼の少しかさついた唇が、そっと頬を拭った。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる