主人公は魔法が使えないのである。

ハルビィン・オリバー編

第５話 虎達の頭領 黒い虎

プラッセも飛び上がり、とっさに見つけた一匹に強く蹴りを入れると、凄まじい勢いで打ち落とされた。下では打ち落とされた青い虎の呻き声が聞こえる。
さらにもう一匹の頭の毛を鷲掴みにして、振り回すと他の青い虎も落ちていった。そして地面に着地すると同時に掴んでいた青い虎を地面に叩きつける。
マーシアもギールも唖然としていた。

グルゥガルルルルグルゥ

残るはプラッセを睨み付けてながら後退りする黒い虎一匹だ。
すると突然雄叫びを上げたかと思うとプラッセに向かって飛びかかり、炎弾フレイムショットを飛ばして来た。
プラッセは横に飛んでかわし、力を込めて殴りかかった。
が、そこにはすでに黒い虎の姿はなかった。

「プラッセ!!上だ!!」

マーシアが声を張り上げるとプラッセの上から黒い虎が鋭い牙を剥き出しにして、まっすぐに落ちてきた。
プラッセは後ろに飛んでかわし、そのまま黒い虎を蹴り上げた。
骨の砕ける鈍い音がした後、黒い虎はバッタリと倒れた。

「プラッセ、お前ほんとに強いな。数々の冒険家や魔術師がこの黒い虎に殺められて来たのにそれをまさか一人で倒しちまうとはな。」
「だが、黒い虎は他の青い虎に比べて運動神経がよかったな。まさか避けられるとは思わなかった。マーシアに上だと言われなかったら多分噛まれてた。」

そんな話をしていると、プラッセの頬を刃物のようなものがかすめた。
振り向いて見ると、後ろの大木に鋭い葉が突き刺さっていた。パックリと切れたプラッセの頬からだらっと血が流れた。

「プラッセ、奴が来たぞ。大釜山の仙人、ハルビィン・オリバーが。」