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【和風ファンタジー】8話 (2)【あらすじ動画あり】
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【あらすじ動画】
◆忙しい方のためのショート版(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94
◆完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
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「俺は……」
言いかけた時、清一郎が我慢出来なくなったように笑い出した。
「冗談だよ。浅草を離れるなんて、銀次にはできっこない。……君は、ここが大好きだからね」
ひとしきり笑ったあと、清一郎の表情が引き締まる。
「そこでだ、銀次。——僕と商談しないかい?」
清一郎の懐から取り出されたのは、ひとつの透明な小瓶だった。
ガラスの中で、淡く光る球体がふわふわと浮いている。
「これは、辰政君の“眼”だ。正確には、彼の“視力”そのものだけどね」
「⁈ どうして兄ぃがそれをっ……⁈」
「記念だよ。これは、僕が初めての商談で手に入れたものだから。——銀次、僕の最初の商談相手は、辰政君だったんだよ」
銀次は、言葉を失った。
「辰政が……? でも、あいつはそんなこと一言も……」
「仕方ないよ。彼はそのことを覚えていない。僕が買ったのは、辰政君の“眼”と、彼の中にある“僕の記憶”だったから。彼はそれらと引き換えに、君の命を手に入れたんだ」
「え……?」
何を言われたのかわからず、銀次は聞き返した。
「俺が……何だって……?」
重く、静かな間が流れる。
やがて、清一郎がゆっくりと口を開いた。
「銀次。……よく聞いて。実は君は、一度死んでいるんだ。火災から逃げている途中、倒れてきた木材の下敷きになって——」
銀次は驚愕に目を見開く。
「それを見た辰政君は、絶望した。君を助けられなかったこと、自分だけが生き残ってしまったこと。彼は強く願った。『銀次を取り戻せるなら、何でもする』と。その願いが、ちょうど商人になったばかりの僕を呼び寄せた」
清一郎は、懐かしむように目を細める。
「彼は驚いていたよ。死んだはずの僕が目の前に現れたから。でも、それで確信もしたんだ。——僕の商談に応じれば、君が助かると。彼は迷いなく、自分の眼と、僕の記憶を差し出した。……だから君は、生き返ることができたんだ」
「まさか……そんな……」
信じられなかった。
自分が一度、死んでいたなんて。
しかも辰政が、自分を生き返らせてくれた?
呆然と立ち尽くしていると、清一郎がパチンと手を叩いた。
「さて、ここからが本題だよ。見ての通り、僕は君の欲しいものを持っている。これを君に譲ろう。ただし、代わりに君の記憶が欲しい。君の中にある、“僕の記憶”をね」
「兄ぃの、記憶……?」
「そう。渡りの商人というのは、どの世界にも属してはいけない存在。けれど、誰にだって生まれ故郷はある。それがある限り、商人は真に自由にはなれない。まるで繋がれた風船みたいにね」
景色を見つめる清一郎の瞳からは、何の感情も読み取れなかった。
「だから多くの商人は、自分の痕跡を消す。故郷の人々から自分の存在を消し、初めからいなかった人間にしてしまうんだ。僕も、これまで何人かの記憶を消してきた。最初は辰政君。そして最後が、君なんだ、銀次。君の中にある“僕の記憶”を消せば、僕は完全に自由になる」
「ちょっと待って……完全に自由って……つまり、もっと遠くへ行くってこと?」
「そうだよ。これまで以上に、ずっとずっと遠い場所へ旅に出る。——行ったら最後、戻って来られる保証はない」
軽く言い切る清一郎の横顔に、銀次は凍りつく。
「……そんなの嫌だっ! 兄ぃ、行かないでよっ! 俺には、もう兄ぃしかいない! これ以上、一人ぼっちにしないでっ!」
まるで子供のように駄々をこねる。目の縁が湿ってきて、破裂しそうな思いとともにこぼれ落ちそうになる。
「じゃぁ、辰政君の眼は諦める?」
清一郎の静かな声が響く。
その一言に、銀次は言葉を失い、ただ唇を噛みしめた。
目の前で、清一郎が両手を差し出してくる。
「銀次、選んでくれ。“僕の記憶”をとるか、それとも“辰政君の眼”をとるか? 君にとって、本当に大事なのはどっち?」
【あらすじ動画】
◆忙しい方のためのショート版(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94
◆完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
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「俺は……」
言いかけた時、清一郎が我慢出来なくなったように笑い出した。
「冗談だよ。浅草を離れるなんて、銀次にはできっこない。……君は、ここが大好きだからね」
ひとしきり笑ったあと、清一郎の表情が引き締まる。
「そこでだ、銀次。——僕と商談しないかい?」
清一郎の懐から取り出されたのは、ひとつの透明な小瓶だった。
ガラスの中で、淡く光る球体がふわふわと浮いている。
「これは、辰政君の“眼”だ。正確には、彼の“視力”そのものだけどね」
「⁈ どうして兄ぃがそれをっ……⁈」
「記念だよ。これは、僕が初めての商談で手に入れたものだから。——銀次、僕の最初の商談相手は、辰政君だったんだよ」
銀次は、言葉を失った。
「辰政が……? でも、あいつはそんなこと一言も……」
「仕方ないよ。彼はそのことを覚えていない。僕が買ったのは、辰政君の“眼”と、彼の中にある“僕の記憶”だったから。彼はそれらと引き換えに、君の命を手に入れたんだ」
「え……?」
何を言われたのかわからず、銀次は聞き返した。
「俺が……何だって……?」
重く、静かな間が流れる。
やがて、清一郎がゆっくりと口を開いた。
「銀次。……よく聞いて。実は君は、一度死んでいるんだ。火災から逃げている途中、倒れてきた木材の下敷きになって——」
銀次は驚愕に目を見開く。
「それを見た辰政君は、絶望した。君を助けられなかったこと、自分だけが生き残ってしまったこと。彼は強く願った。『銀次を取り戻せるなら、何でもする』と。その願いが、ちょうど商人になったばかりの僕を呼び寄せた」
清一郎は、懐かしむように目を細める。
「彼は驚いていたよ。死んだはずの僕が目の前に現れたから。でも、それで確信もしたんだ。——僕の商談に応じれば、君が助かると。彼は迷いなく、自分の眼と、僕の記憶を差し出した。……だから君は、生き返ることができたんだ」
「まさか……そんな……」
信じられなかった。
自分が一度、死んでいたなんて。
しかも辰政が、自分を生き返らせてくれた?
呆然と立ち尽くしていると、清一郎がパチンと手を叩いた。
「さて、ここからが本題だよ。見ての通り、僕は君の欲しいものを持っている。これを君に譲ろう。ただし、代わりに君の記憶が欲しい。君の中にある、“僕の記憶”をね」
「兄ぃの、記憶……?」
「そう。渡りの商人というのは、どの世界にも属してはいけない存在。けれど、誰にだって生まれ故郷はある。それがある限り、商人は真に自由にはなれない。まるで繋がれた風船みたいにね」
景色を見つめる清一郎の瞳からは、何の感情も読み取れなかった。
「だから多くの商人は、自分の痕跡を消す。故郷の人々から自分の存在を消し、初めからいなかった人間にしてしまうんだ。僕も、これまで何人かの記憶を消してきた。最初は辰政君。そして最後が、君なんだ、銀次。君の中にある“僕の記憶”を消せば、僕は完全に自由になる」
「ちょっと待って……完全に自由って……つまり、もっと遠くへ行くってこと?」
「そうだよ。これまで以上に、ずっとずっと遠い場所へ旅に出る。——行ったら最後、戻って来られる保証はない」
軽く言い切る清一郎の横顔に、銀次は凍りつく。
「……そんなの嫌だっ! 兄ぃ、行かないでよっ! 俺には、もう兄ぃしかいない! これ以上、一人ぼっちにしないでっ!」
まるで子供のように駄々をこねる。目の縁が湿ってきて、破裂しそうな思いとともにこぼれ落ちそうになる。
「じゃぁ、辰政君の眼は諦める?」
清一郎の静かな声が響く。
その一言に、銀次は言葉を失い、ただ唇を噛みしめた。
目の前で、清一郎が両手を差し出してくる。
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