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18話(3)【室町和風ファンタジー / あらすじ動画あり】
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■お忙しい方のためのあらすじ動画はこちら↓
https://youtu.be/JhmJvv-Z5jI
■他、作品のあらすじ動画
『【和風ファンタジー小説 あらすじ】帝都浅草探しモノ屋~浅草あきんど、妖怪でもなんでも探します~』
-ショート(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94
-完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
ーーーーーーーーーーー
「うむ。やはり俺の見立て通りだな」
納屋から出てきた藤若を見て、義満は満足そうに頷いた。
純白の水干に紅の袴、立烏帽子。髪はほどいて、毛先の方で一つにくくってある。
「なるほど、白拍子ですか」
観阿弥が、ほうと感心したように顎に手を当てた。
白拍子は平安時代に生まれた女舞手のことだ。女性が男装をして太刀を佩き、今様(流行歌)を舞い歌う姿は、奇妙な色香があり、今でも多くの人々からもて囃されている。
「でも、さすがにこの格好で外に出るのは……」
遠回しに苦言を呈すと、
「なに、俺と歩けばバサラ大名とそのお抱えの白拍子ということで、怪しまれるまい」
と、義満はこともなげに言った。顎に手を当て、じろじろと眺めてくる。
「それにしても、お前は女の扮装が異様に似合うな。『自然居士(じねんこじ)』の少女や『卒塔婆小町(そとばこまち)』の小町の時も思ったが」
「そうでしょう、そうでしょう」
観阿弥が自慢げに頷いた。
「幽玄の本質は、稚児体と女体にこそあります。稚児の方は自然に学べるとしても、女体は一朝一夕に表現できるものではありません。そこで藤若には、小さな頃から女性の仕草や所作をたたき込んでいますから」
「父上、語弊がある言い方は……」
これでは自分が女装を趣味にしているみたいではないか。
だが父には伝わらなかったようで、
「ごへい? 真実を言っただけだが?」
と、首を傾げた。これ以上何を言っても無駄だ。藤若は、泣く泣く頷いた。
「わかりました、わかりましたよ! これで行けばいいんでしょうっ!」
「ちょっと待て、藤若」
ドカドカと出ていこうとする息子の腕を観阿弥が引く。そのまま壺屋にほど近い、物陰まで連れていかれる。
「いいか。何があっても、大樹様をお守りするんだぞ」
低く、真剣な声で観阿弥は言った。
「大樹様は俺や観世座、そしてお前にとってなくてはならない存在だ。将軍様だからじゃない。芸人は理解してくれる者がいてこそ輝けるもの。俺が会ってきた中でも、大樹様は最高の審美眼をお持ちだ。そんな方を、我らは絶対に失ってはいけない」
思わず、くすりと笑いがこみあげてきた。
もし忍びを続けていたら敵方の大将になるはずだった義満を、申楽のために守れだなんて。
(やっぱり、父上は申楽のことしか考えていないんだな)
ホッと安心する。
「おい、聞いているか?」
くすくすと笑う息子を前に、観阿弥はむっとした顔を顰めた。
「俺は真剣に話しているんだぞ。今後、申楽の能が大きくなるか、ここで終るかのかも、大樹様次第。言ってしまえば、大樹様は我々にとっての運命みたいなものなんだ」
「運命、ですか……?」
「そうだ。そのことを良く肝に銘じておけ」
最後にそう言って、観阿弥はもう一度肩を叩いてきた。
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