聖女様は貧乏性

ぶらっくたいがー

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プロローグ 1年前

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「ただいま~」
「おねえちゃん、おかえりなさいー」

 部活動が終わり、自宅に帰ってきた私-茜坂 光姫あかねざかみつき-を
妹の輝夜かぐやが明るく笑顔で迎えてくれる。
今年の春に小学校に上がったばかりの輝夜はとてもかわいい、
まさしく天使だと思う。

「あいかわらず、輝夜はかわいいなー、さすが私の妹」

思わず抱きついてしまった。ついでとばかりに頭もなでる。
癒されるなー。

「えへへ、かぐやね、大きくなったら
 おねえちゃんみたいなきれいなおんなの人になるの」

きれいって言われた、うれしいな、でも大きくなんてならなくていいんだからね。
彼氏なんてできちゃったらどうするの?殺してでも奪い取る。
もちろん輝夜を奪い取るほうだ。

「光姫、お帰りなさい」

お母さんも出迎えてくれた、でも体が弱いんだから座って待ってくれていたらいいのに
と、思いながらも結構うれしい私だったりする。

「お母さん、ただいま。お父さんは今日も残業かな?悠里ゆうりは帰ってる?」

悠里は私の弟だ。とても真面目で、頭がいい。

「ちょうど帰ってきたところよ」

弟曰く、うちの収入だと学費が馬鹿にならない、自分の学費であまり負担をかけたくない
だから勉強していい成績を取り、奨学生になるんだそうだ。
その話を聞いたとき、お父さんが泣いて謝っていた。
そんな弟は、参考書もあまり買わない。
近くに図書館があるので閉館付近までは図書館で勉強をしているのだ。
友達づきあいとか大丈夫かとたまに心配になる。

「悠里、夕飯買いに行くから手伝ってー」

そう声をかけると、2階から足音が聞こえてくる。
ちなみにこの時間から買出しにでかけるのは、
近くのスーパーでは夕方から割引シールが張られるようになっており
この時間に買いに行くほうがお得だからだ。
昼に買っても、夜に買っても食べる時間は同じ、だったら安いほうがいいよね。

「姉ちゃんお帰り、
 今日は16時からの特売で卵を買っておいたから、卵は買わなくていいよ」

すばらしい、さすが私の弟だ、完璧な行動だ。

「あのね、あのね、かぐやはひさしぶりにハンバーグがたべたいな」

めずらしく輝夜がおねだりしてくる。
くっ、可愛すぎる、これはもう今日の夕飯は決まったようなものだ。

「そうだね、じゃあ今日はハンバー…」
「悪いけど、挽肉が安くなかったらハンバーグにはできないよ?」

悠里が私の言葉をさえぎる…確かに現実的な出費を考えるとその通りだ。

「だいじょうぶ、かぐやわかってる、そのときはあきらめる!」

やっぱり輝夜は素直で可愛い。
お母さんはその隣でなんともいえない表情をしている。

「じゃあ挽肉が安かったらハンバーグにしようか?」

その日の夕飯は結局ハンバーグになった。
挽肉は普段より安いというわけではなかったが、悠里が

「これは俺の小遣いから買うから」

だ、そうだ。相変わらず輝夜には甘い。私もだけど。
その日もお父さんは夕飯までには帰ってこれず4人での食事となった。
お父さんには悪いけど、お父さんの分のハンバーグはみんなで食べた。




ただの残業だと思っていた。

今日も帰りが遅いだけだと思っていた。

私達家族のために、いつも夜遅くまで働いてくれているお父さん。
尊敬できるお父さん、優しい大好きなお父さん。

そんなお父さんは、その日は帰ってくることは無かった。
次の日も、その次の日も、お父さんが帰ってくることは無かった。

お父さんが失踪して1ヶ月がたった。
私は高校をやめた。
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