聖女様は貧乏性

ぶらっくたいがー

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第5話 邪神様はこたつ好き

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「それではお仕事の説明をはじめるのです!」
「うさ!」

あれから適当に進んでいると、邪神様から召喚された。
よく周りを見てみると不思議な空間だ。
例えば、今私たちがいる部屋だが、ほとんどのものがお菓子でできている。
まあ、いわゆるお菓子の家というやつだろうか
だが、違和感があるのはその中央にあるものだ。
こたつ、みかん、それにテレビとゲーム機に冷蔵庫、足元は畳だ。
ぜんぜんお菓子の家に関係ないよね!?
邪神様もどてらに着替えてるし、うさたんもどてらを着てる。
ずずず、とお茶を飲みながら邪神様が話を切り出した。

「やっぱり、こたつにはお茶とみかんなのです」
「うさ!」
「仕事の説明を始めるんじゃなかったの!?」

相変わらず邪神様はマイペースだ。

「みつきおねえちゃんも怒ってないでみかんを食べるといいのです」
「うさうさ」

邪神様は私にみかんを差し出してくるし、
うさたんは器用にみかんの皮を剥いて食べている。
とりあえず、私もみかんを食べることにした。
みかんは甘くてすごくおいしい。とても高級っぽいみかんだ。
色からして緑茶かな、お茶も飲むことにした。って甘!?

「なに、このお茶甘いんだけど!?」
「緑茶は苦いので砂糖を入れて甘くしているのです」

ああ、うん、お子様な味覚なのね。

「それでお仕事なのですが」
「うん、私が聖女になって世界を救ってくればいいのよね?」

そういう話だったと思う。

「…みつきおねえちゃん、私が聖女になって世界を救うとか、
 頭おかしい人がいう台詞なのですよ」
「うさうさ」

まって。いや、確かに客観的に見るとそうだけれども。

「聖女の方は…みつきおねえちゃんが、
 その、自分のことを聖女だっていうのなら、好きにすればいいと思うのです」
「私が自分で自分のことを聖女って言ってるわけじゃないからね!」
「でも、町で出会ったら知らない人の振りをさせてもらうのです」
「だから、ちーがーうーのー」
「冗談なのです」

邪神様…結構黒い?

「それで仕事の話なのですが、あっちの世界にある召喚陣を潰してきて欲しいのです。」
「召喚陣?」
「みつきおねえちゃんをあっちの世界に呼ぶのに必要だったものなのです。」

そんなものがあるんだ。

「それがなくなれば、
 こっちの世界からあっちの世界に呼び出される人がいなくなるのです。」
「そうなんだ。」
「事態は深刻なのです、制限なしに呼び出されたら
 妨害してるボクの力もいつかなくなるのです、なによりめんどくさいのです」

後半が本音だよね。というか邪神様は召喚の妨害をしてるんだ。

「あっちの世界には召喚陣が3つあるのです、それを全部潰してきて欲しいのです。」
「うん、わかりました。でも、どうすればいいのかな?」

潰すとか言っても、そんな力ないよね、私普通の女の子だし。

「確かにみつきおねえちゃんの能力は貧弱なのです、
 光の系統にしか適正がないのです。」
「あ、うん、やっぱり貧弱なんだ」
「でも、問題ないのです。ボクの加護で全系統に適正、能力強化をあげるのです。」

全系統に適正って結構強めな気がする。

「それから、相手の見た目で恐怖しないように、
 相手が自分に危害を加えられないほどに弱い場合、
 見た目では恐怖を感じないようにしておくのです。」
「えーと、見た目が怖いってどういうこと?」
「ドラゴンとかがいるのですよ」

ああ、うん、ドラゴン…ってそんなのと戦うの?

「その他、アイテムボックスに鑑定能力の基本スキルに加えて、
 現地に行くと不便だと思うので、
 アパート召喚能力と、コンビニ購入能力をあげるのです。」
「アパート召喚はなんとなくわかるけど、コンビニってなに?」

コンビニ丸ごと召喚できたりするのかな?

「コンビニで売っているものをコンビニ価格で買えるのです。
 買ったら手元に出てくるのです。
 それから、毎月5万円分の専用ポイントを振り込んであげるのです。」

コンビニかあ

「あのー、そのコンビニ用の5万円って使わなかった分は
 最後に普通のお金で貰えたりする?」
「別にそれはかまわないのです。」

やった、節約しよう。

「それからアパートのほうも、必要なものは大体一式そろっているのです。
 特に異世界だとトイレとかが大変なのです。」
「あ…うん、それは助かるかも」

海外に行くと、トイレに紙がないとかよく聞くしね。

「まだ心配なので、護衛もつけておくのですよ」
「護衛?」
「とってもつよい護衛なのです」

えっへんと胸を張る邪神様。
紙の上にクレヨンでお絵かきをはじめ、立ち上がると。

『邪神である我が命ず、我が呼び声に答えよ、冥府の主、暴虐の獣、神殺しの牙』

あれ?邪神様が難しい言葉を流暢に話してる!?

『闇の力を纏いて顕現せよ、冥界の番犬にして守護するものケルベロスよ』

ぽふっ

「わふぅ」
「ケルベロスのけるちゃんなのです」

 出てきたのは、ポメラニアンの子犬だった。
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