記憶のない冒険者が最後の希望になるようです

パクリ田盗作

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第六章:扶桑騒乱

第26話 別れと出会いとランクアップ

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「は? バグベアードが率いるオルグの集団?」


 セブンブリッジへと帰ってきたチャンス達は冒険者ギルドで依頼完了の報告をしていた。

 報告を受けたベスティアは語尾を忘れてチャンス達の報告を聞き返していた。


 これが口頭だけならベスティアも冒険者が自身の活躍を大げさに盛っていると鼻で笑ったかもしれない。

 モヒとカン、そしてマトイというアイアンランクという一定の実力と信用のある冒険者の証言、そして証拠であるバグベアードの首を持ち込まれては信じるしかなかった。


「おつかれー! ヒャッハー!!」

「依頼を終えた後の一杯はたまんねぇぜ! ヒャッハー!!」


 依頼完了手続きを終えたチャンス達はギルドに併設されている酒場で打ち上げを開く。

 モヒが乾杯の音頭を取って乾杯すると、モヒカン兄弟は一気飲みの勢いでエールを飲み干す。

 チャンスとマトイは自分のペースで飲み、エリザベートは教義的な理由から果実水で乾杯している。


「いやーしかし、チャンスとマトイがあの道楽者と知り合いだったとわな」

「道楽者?」


 最初の一杯目をさっさと飲み干したカンは、ウェイトレスにお代わりを注文するとチャンス達に話題を振る。

 カンの言った道楽者という人物に心当たりがなかったのか、チャンスはきょとんとした顔をカンに見せる。


「ダーヴィスのことだよ。ダーヴィスはセブンブリッジでは道楽者という異名つけられてる」

「そんな異名を付けられるぐらいですから、趣味人なんでしょうね」


 マトイが道楽者という人物がダーヴィスであることを告げ、一緒に話を聞いていたエリザベートが感想を述べる。


 この話題が出た理由は、オルグ達がいた遺跡で財宝を見つけたチャンス達は財宝の売りさばき先を探していた。

 下手なところに売れば買い取り切れず、いくつもの店を回らないといけない手間がある。

 買取店の梯子ぐらいならまだましだ。あれこれ難癖をつけて買いたたいたり、場合によってはご先祖様の財宝だとでっち上げて所有権を主張したりする。

 最悪なのは買い取った後に大金を得た冒険者の情報を裏社会などに流したりして財産を奪おうとする悪徳商人に当たってしまうことだ。


 売却先を探そうとした時にマトイがダーヴィスを紹介し、適正価格で買い取る約束を結ばせたのだ。


「おうよ。元は商会の会長で引退した後は趣味で行商に出たり、眉唾物の宝の地図を手に入れちゃギルドで探索依頼出してる」

「あの探索依頼ウマイんだよなぁ。外れても最低限の報酬出るし、当たればお宝は全員で山分け」


 宝探しの依頼は有名なのか、酒場にいたほかの客も話が聞こえたのか、同意するようにうなずいたり、参加したときのエピソードを自慢しあっている。


「その宝探し、結構有名なんですね」

「おうよ、俺様が知ってる限りでは、過去20回ほど依頼が出て、確か~………13回財宝が見つかってる」

「ぶっ!? めちゃくちゃ当たってますね!?」


 ダーヴィスが時折出してる宝探しの依頼で盛り上がる酒場を見てチャンスはその依頼がかなり有名なものかとモヒに聞く。

 モヒが思い出しながら過去に行われた宝探しの回数と実際に財宝を見つけた回数を聞いて、チャンスは思わず飲みかけていたエールを吹いてしまう。


「それよりもよ、エリザベートの姉ちゃんこれからどうするんだい?」

「これからとは?」


 カンが不意にエリザベートに話を振る。エリザベートはカンの言葉の意味が分からないのか首をかしげて聞き返す。


「なに、元々はエリザベートの姉ちゃんがソロで行くのを止めて、強引に臨時のチーム組んだけどよ。一回限りでお別れなんて寂しいだろ? バランスも悪くねえと思うしよ、このまま正規のチーム組んでみたらどうだよ」


 カンがエリザベートにチャンス達と正式にチームを組むようにお節介を焼く。


「チャンスもどうだ? 神聖魔法の使い手がいるとチームの生存率は段違いだぜ?」

「僕としてはマトイが反対じゃなければぜひ!」

「ん、僕も賛成だよ」


 話を振られたチャンスはマトイが賛成すればといい、マトイはエールを呑みながらエリザベートの加入に賛成する。


「………」


 肝心のエリザベートは何処かためらうような表情でチャンス達を見渡し、口を開こうとしては躊躇している。


「えっと……迷惑だった?」

「いえっ! 迷惑ではないです!! 申し出はうれしいのですが、その……私……言えませんが目的があって……チームに入るのはご迷惑をおかけするかと……」


 チャンスが申し訳なさそうに聞けば、エリザベートは両手と首を振って迷惑ではないと伝え、今はチャンス達に言えない目的があってチームに加わることを躊躇するエリザベート。


「じゃあ、それを手伝うよ」

「えっ……」

「まーた始まった……」


 間髪入れずチャンスがエリザベートを手伝うと伝え、エリザベートは驚き、マトイはチャンスの悪い癖が始まったとため息をつく。


「言えないですし、迷惑かけるかもしれないんですよ」

「チームに入ること自体は嫌じゃないんでしょ? だったら同じ仲間なんだから、迷惑かけたっていいよ、だから手伝わせて!」

「マ……マトイさ~ん」

「無理、こうなったチャンスは変わらないよ。犯罪とかじゃないなら頼ってあげたら?」


 ぐいぐいと入り込んでくるチャンスに戸惑い、マトイに助けを求めるエリザベート。だがマトイはお手上げというジェスチャーをして匙を投げる。


「~~~……じゃあ、不束者ですが……よろしくお願いします」

「なんだか……お見合いか、嫁入りみてぇだな」


 深々と頭を下げてチャンス達のチームに加入するエリザベート。一部始終を見ていたカンが感想を述べる。


「チーム結成おめでとう! これで俺様達も安心して抜けられらぁ。ヒャッハー!」

「えっ!?」


 兄のモヒがチームから抜ける発言をして、チャンスは驚いたような顔を向ける。


「おいおい、俺様達兄弟はよぉ、元々手伝いでチーム組んでただけだぜぇ? それに今回の儲けを元手にやることがあってな、しばらく冒険家業は休止だ」

「あ……そうですか、残念です。でも、色々教えてくれたり、手伝ってくれてありがとうございました!!」


 モヒが抜ける理由を述べるとチャンスは一瞬名残惜しそうな顔をするが、エールを飲み干して気持ちを入れ替えるとモヒカン兄弟に深々と頭を下げてお礼を述べる。


「いいってことよぉ。俺様達はシロウさんへの恩返しもかねて手伝ってるだけさぁ。前も言ったけどよぉ、感謝してるならよ、そこのエリザベートの姉ちゃんみたいに困ってる冒険者に手を差し伸べてやりな」

「はい!!」


 依頼達成の打ち上げから、モヒカン兄弟の送別とエリザベートの歓迎を兼ねた二次会パーティーが始まる。

 最終的には騒ぎを聞きつけた別の冒険者も混じってどんちゃん騒ぎとなった。


 翌日、チャンス達はチーム手続きをするために冒険者ギルドに訪れていた。


「チーム申請ですねワンニャン。リーダーは誰にしますかワンニャン?」


 すっかりチャンス達の担当のポジションになってしまったベスティアがチャンス達のチーム申請の手続きをする。


「チームリーダーは、ええっと……」

「チャンスで」

「チャンスさんですよね」


 チャンスがチームリーダーを誰にしようか相談しようとするが、マトイとエリザベートは間髪入れずにチャンスを推薦する。


「えっと……僕、まだカッパーだし、登録して間もないよ?」

「チャンスさんが私をチームに誘ってくれましたよね?」

「僕そういうのめんどい」


 苦笑しながらチャンスは再考を求めるがエリザベートは笑顔で誘ってきたのは誰だったか伝え、マトイは視線を合わせず欠伸しながらチャンスに押し付ける。


「諦めろ、こういう時男は勝てないワンニャン」

「じゃあ、僕でお願いします……」


 受付のベスティアも諦めろと伝えて、チャンスをチームリーダーに添えて手続きをすすめる。


「チームを結成したことで、チャンスはブロンズクラスにランクアップだワンニャン」

「え? なんで?」


 チーム申請を終えるといきなり受付のベスティアからランクアップの知らせを伝えられるチャンス。


「これは口外禁止だけど、仲間を集めるだけの実力があるということで、チームリーダーだけブロンズ扱いになるルールがあるんだワンニャン」


 そういってベスティアはブロンズのプレートをチャンスに差し出した。
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