36 / 44
サイカナ探偵団は勝負に出る(3)
しおりを挟む
「アリバイの点だけを見るなら俺だって怪しいんです。なのにどうして慎也さんが刑事にマークされるのか。その理由が判りますか? 慎也さん」
才は大胆にも当人を指した。慎也は苦々しく口を開いた。
「……俺によく似た男が、健也の家の最寄り駅で監視カメラに写っていた。それと、俺のスマホの電波が健也の家から出ていたからだ。ああ、おまけに俺が履いている靴と同じ靴跡が、健也の家に残っていたそうだな」
「改めて言葉にしてみると刑事が怪しむのも当然ですよね。スリーアウトだ」
「だがキミは、俺ではなく娘が犯人だと言う」
「はい。だって聖良さんなら、簡単にその状況を作り出せますので」
聖良が般若の形相で才を睨んだ。構わず才は続けた。
「ロッカーとしての慎也さんの服装は実に特徴的です。特徴的ということはつまり、真似をし易いってことなんです。例えば、赤い髪のカツラを被って皮ジャケットを着れば、俺だって後ろ姿だけなら慎也さんになれます」
あっ、才のこの発言は……。打ち合わせした例のアレね!
「そっか、至近距離で確認しなければ、本人か変装した誰かなのか見分けがつかないってことなのね」
あたかも初めて聞いたような感心した素振りで、私は才の意見を後押しした。
「じゃあ慎也さんが、坂上健也さんの家にいた件はどうなの?」
そして打ち合わせの台本通りに、私は才に説明を促した。
「結論から言います。慎也さんは坂上さんの家に行っていません」
「ええっ!?」
そのことは事前に才から聞かされていたけれど、私は驚いた振りをした。わざとらしくはなかったと思う。高校時代に演劇部で活動していた賜物である。
「でも、スマホの位置表示が記録に残っていたって……」
「ええ。電話会社が電波を追跡した結果ですから、スマホは間違い無く慎也さんの物です。7時台から9時台に、スマホは坂上さんの家に有ったのでしょう」
次は俊の番だ。
「慎也さんは行っていないのに、彼のスマホはそこに有ったと言うのかい?」
俊も私同様に才が書いた台本に従って喋っている。しかし演劇経験の無い俊は棒演技だ。だから彼への台詞配分は少ない。
「そうです。でもスマホが一人で歩いて行く訳がない。つまり、スマホを坂上さんの家に運び込んだ誰かが居るんです」
ゴクリと、誰かが唾を吞んだ音が聞こえた。
「普通に考えたら慎也さんなんです。でも本人は寝込んで家に居たと仰《おっしゃ》る。じゃあ誰がスマホを動かしたのか」
「……慎也さん意外とズボラだから、道端か何処かでうっかりスマホ落として、それを拾った第三者がたまたま殺人鬼だったとかは?」
海児が限りなく低い可能性の仮説を立てた。自分がよく知る聖良が犯人だと思いたくないのだ。
才は事務的に対応した。
「それは有り得ません。坂上さんの事件の後に海児さんのマンションにみんなで集まった時、慎也さんはちゃんとスマホを持っていました。彼のスマホは一度誰かに外へ持ち出され、そして再び彼の元へ戻されたんです。身内ではない第三者には不可能です」
才の狙い通りの流れになっている。でも怖い。緊張し過ぎて気持ちが悪くなってきたよ。
「言い方を変えます。慎也さん以外に、彼のスマホを移動できたのは誰でしょう?」
全員が思わず聖良に視線を向けてしまった。みんなは気まずさですぐに目線を泳がせたが、才だけは聖良を見据えていた。
「それができたのは、前日に慎也さんのアパートを訪れた聖良さんだけです。そして慎也さんに腹痛を起こさせることができたのも」
「え!」
「それも!?」
深沢親子が驚愕して声を漏らした。
「待てよ久留須くん。聖良ちゃんが慎也さんに毒でも盛ったと言いたいのか? 親子だぞ!?」
「はい。だって事件の日に腹痛なんて、偶然にしては都合が良過ぎませんか?」
才は淡々と述べた。みんなとの温度差が凄い。
「坂上健也さんを殺した人物は、慎也さんを犯人に仕立て上げたかったんです。だから慎也さんの携帯を坂上さんの家に運んだし、慎也さんに見える変装をして坂上さんの家まで行った。帰りは着替えてから電車に乗ったんでしょうが」
「着替えてから?」
「行きと違って帰りは上りになります。朝のラッシュ時だったから電車は相当混んでいたはずです。犯人が聖良さんだった場合ですが、至近距離で見られて身体の接触も有れば、男装していても女性だとバレるでしょう。乗客の記憶に残って警察に証言されますよ、事件が起きた時間帯、電車に派手な女が乗っていたって」
聖良の目がどんどん吊り上がっていく。
「スケープゴートになるはずの慎也さんが自由に歩き回って、何処かでアリバイを作ってしまっては全てが台無しです。だから犯人は、慎也さんに寝込んでもらう必要が有ったんです」
「それで、腹痛……?」
「市販の下剤を飲み物にでも混ぜたんでしょう。調べたら無味無臭の下剤も有るんですね。帰る前に水分補給してねと言って、今度は睡眠薬入りの飲み物も渡していたのかもしれない。慎也さんは事件当日、昼過ぎまで寝ていたんでしたね?」
慎也が落ち着き無く手先を動かし始めた。
「慎也さん、久留須くんが言ったことに心当たりが有るのか……?」
海児の問いかけに慎也は無言で下を向いた。それは肯定に他ならなかった。美波が口に手を当てて、海児が聖良に疑惑の目を向けた。聖良は憮然とした表情でそれを撥ね退けた。
「おそらく聖良さんは、坂上さんに電話をして約束を取り付けた時に、自分だけは早く行くと伝えていたのでしょう。後から来る三人の為に、一緒に料理を作ってもてなしの準備をしよう、坂上さんにそんな感じで提案していたんじゃないですか?」
聖良ではなく美波が反応した。
「あの食材は……」
美波の瞳が潤んだ。坂上健也が倒れていた側の調理台、そこには処理中の食材が放置されていた。きっと健也の最期を想像してしまったのだ。
才は大胆にも当人を指した。慎也は苦々しく口を開いた。
「……俺によく似た男が、健也の家の最寄り駅で監視カメラに写っていた。それと、俺のスマホの電波が健也の家から出ていたからだ。ああ、おまけに俺が履いている靴と同じ靴跡が、健也の家に残っていたそうだな」
「改めて言葉にしてみると刑事が怪しむのも当然ですよね。スリーアウトだ」
「だがキミは、俺ではなく娘が犯人だと言う」
「はい。だって聖良さんなら、簡単にその状況を作り出せますので」
聖良が般若の形相で才を睨んだ。構わず才は続けた。
「ロッカーとしての慎也さんの服装は実に特徴的です。特徴的ということはつまり、真似をし易いってことなんです。例えば、赤い髪のカツラを被って皮ジャケットを着れば、俺だって後ろ姿だけなら慎也さんになれます」
あっ、才のこの発言は……。打ち合わせした例のアレね!
「そっか、至近距離で確認しなければ、本人か変装した誰かなのか見分けがつかないってことなのね」
あたかも初めて聞いたような感心した素振りで、私は才の意見を後押しした。
「じゃあ慎也さんが、坂上健也さんの家にいた件はどうなの?」
そして打ち合わせの台本通りに、私は才に説明を促した。
「結論から言います。慎也さんは坂上さんの家に行っていません」
「ええっ!?」
そのことは事前に才から聞かされていたけれど、私は驚いた振りをした。わざとらしくはなかったと思う。高校時代に演劇部で活動していた賜物である。
「でも、スマホの位置表示が記録に残っていたって……」
「ええ。電話会社が電波を追跡した結果ですから、スマホは間違い無く慎也さんの物です。7時台から9時台に、スマホは坂上さんの家に有ったのでしょう」
次は俊の番だ。
「慎也さんは行っていないのに、彼のスマホはそこに有ったと言うのかい?」
俊も私同様に才が書いた台本に従って喋っている。しかし演劇経験の無い俊は棒演技だ。だから彼への台詞配分は少ない。
「そうです。でもスマホが一人で歩いて行く訳がない。つまり、スマホを坂上さんの家に運び込んだ誰かが居るんです」
ゴクリと、誰かが唾を吞んだ音が聞こえた。
「普通に考えたら慎也さんなんです。でも本人は寝込んで家に居たと仰《おっしゃ》る。じゃあ誰がスマホを動かしたのか」
「……慎也さん意外とズボラだから、道端か何処かでうっかりスマホ落として、それを拾った第三者がたまたま殺人鬼だったとかは?」
海児が限りなく低い可能性の仮説を立てた。自分がよく知る聖良が犯人だと思いたくないのだ。
才は事務的に対応した。
「それは有り得ません。坂上さんの事件の後に海児さんのマンションにみんなで集まった時、慎也さんはちゃんとスマホを持っていました。彼のスマホは一度誰かに外へ持ち出され、そして再び彼の元へ戻されたんです。身内ではない第三者には不可能です」
才の狙い通りの流れになっている。でも怖い。緊張し過ぎて気持ちが悪くなってきたよ。
「言い方を変えます。慎也さん以外に、彼のスマホを移動できたのは誰でしょう?」
全員が思わず聖良に視線を向けてしまった。みんなは気まずさですぐに目線を泳がせたが、才だけは聖良を見据えていた。
「それができたのは、前日に慎也さんのアパートを訪れた聖良さんだけです。そして慎也さんに腹痛を起こさせることができたのも」
「え!」
「それも!?」
深沢親子が驚愕して声を漏らした。
「待てよ久留須くん。聖良ちゃんが慎也さんに毒でも盛ったと言いたいのか? 親子だぞ!?」
「はい。だって事件の日に腹痛なんて、偶然にしては都合が良過ぎませんか?」
才は淡々と述べた。みんなとの温度差が凄い。
「坂上健也さんを殺した人物は、慎也さんを犯人に仕立て上げたかったんです。だから慎也さんの携帯を坂上さんの家に運んだし、慎也さんに見える変装をして坂上さんの家まで行った。帰りは着替えてから電車に乗ったんでしょうが」
「着替えてから?」
「行きと違って帰りは上りになります。朝のラッシュ時だったから電車は相当混んでいたはずです。犯人が聖良さんだった場合ですが、至近距離で見られて身体の接触も有れば、男装していても女性だとバレるでしょう。乗客の記憶に残って警察に証言されますよ、事件が起きた時間帯、電車に派手な女が乗っていたって」
聖良の目がどんどん吊り上がっていく。
「スケープゴートになるはずの慎也さんが自由に歩き回って、何処かでアリバイを作ってしまっては全てが台無しです。だから犯人は、慎也さんに寝込んでもらう必要が有ったんです」
「それで、腹痛……?」
「市販の下剤を飲み物にでも混ぜたんでしょう。調べたら無味無臭の下剤も有るんですね。帰る前に水分補給してねと言って、今度は睡眠薬入りの飲み物も渡していたのかもしれない。慎也さんは事件当日、昼過ぎまで寝ていたんでしたね?」
慎也が落ち着き無く手先を動かし始めた。
「慎也さん、久留須くんが言ったことに心当たりが有るのか……?」
海児の問いかけに慎也は無言で下を向いた。それは肯定に他ならなかった。美波が口に手を当てて、海児が聖良に疑惑の目を向けた。聖良は憮然とした表情でそれを撥ね退けた。
「おそらく聖良さんは、坂上さんに電話をして約束を取り付けた時に、自分だけは早く行くと伝えていたのでしょう。後から来る三人の為に、一緒に料理を作ってもてなしの準備をしよう、坂上さんにそんな感じで提案していたんじゃないですか?」
聖良ではなく美波が反応した。
「あの食材は……」
美波の瞳が潤んだ。坂上健也が倒れていた側の調理台、そこには処理中の食材が放置されていた。きっと健也の最期を想像してしまったのだ。
3
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる