3 / 5
第1章 旅立ち
第3話 空路がダメなら?
しおりを挟む
「本当に申し訳ございません!!」
ウィルノー魔導進学塾の新任講師、アリシア・ヒューストンは必死に頭を下げていた。
ここは飛空艇発着場のターミナル…その警備員室の一角、小さな会議室のようなスペース。
ミラはソファに座ってまだぐすぐすと泣いている。
アリシアが気づいた時、ミラは2人連れの旅行者と話していたようで……何かあったのかと大声を上げてしまったのだ。
結果、全員揃って警備員室でそれぞれ事情を聞かれることになった。
一通り事情を聞かれて誤解であることがわかり、アリシアは真っ青になって謝っていた。
なにしろ相手は見上げるような大男。
しかも…
ちらっと見上げると、見下ろしてくる目がまず怖かった。
鋼のような色の瞳には青い影がさし、顔立ちは彫りが深く、そして頬には大きな傷。
まるで"その筋の人"、だ。
誤解で警備員室に連れて行かれるなんて、ただでさえ立腹しているだろう。
どんな報復をされるか…
「気にしてない」
意外なことに、彼は興味なさそうに短く答えた。
目を丸くしているアリシアに、横から顔を出した連れの男性(にしては綺麗だけど…)はあっけらかんと言い放つ。
「ボクは面白かったからいーよ。ターミナルの普段見れないとこに入れたし!」
「…お前はもう少しいろいろ気にしやがれ」
ぼそっと大男がツッコんだ。
…なんとなく分かった。
この人は怒ってないというか…怒るのも面倒なくらい疲れている、ということが。
「ところで、キミたちも飛行艇に乗り遅れたって本当?」
人懐っこそうな銀髪の男性が興味津々といった感じでアリシアに尋ねる。
「あ、はい。実は…」
誤解した手前、事情の説明は必要だ。
しかし大柄の男の方は興味はないとばかりに黙って壁に寄りかかり、魔導通信端末をいじりはじめた。
正直その鋭い眼光にさらされないことにホッとしつつ、アリシアは先ほどミラから聞いた話を簡単に説明する。
「私たちはターミナルで待ち合わせしていたんですが、あの子…ミラが途中で事故に遭った猫を助けて動物病院に駆け込んでいたらしくて」
「へー優しい。ね、アロウ」
銀髪の彼は振り返って大柄な男性の方へ振り返る。
彼の名はアロウというらしい。
「自分で選んだことなら、泣くことないだろ」
すげない言葉が返ってきてアリシアは息を呑んだ。
後ろでミラがまた「ふえぇ…」と泣きだす。
アロウはそっぽを向いてしまった。
アリシアはムッとして、さっき感じたそこまで悪い人じゃないかも?という評価を心のなかで即座に訂正した。
と、眉をひそめるアリシアの横を銀髪の青年がすり抜ける。
彼はミラの前にしゃがみ込むと、目線を合わせて優しく問いかけた。
「どうしてそんなに泣いてるの?」
「だって……しけん…」
「うん、試験?学校のかな?」
首をかしげる男性に、アリシアが説明する。
「あ、私たちは進学塾の受験対策の合宿に行くところで、本番の試験が4日後なんです。」
「あーなるほど、来週の便じゃ間に合わないね」
ふむふむ、と頷いて彼はミラへ再び尋ねる。
「試験受けたい?」
問われてミラがびっくりしてまばたきしながら彼を見る。
「……試験、受けれる?」
「わからないけど…他の方法、探してみない?」
「他の?」
「そ。空がダメなら陸で行けるかもでしょ!」
にこっと彼は笑い、ミラに告げる。
「ボクはリル。ちょっとだけ手伝ったげる。キミは?」
そしてミラに手を差し伸べた。
「………ミラ。ミラ・ストレイフォード…」
おずおずと差し出された手をリルはそっと握ると優しく引き上げ立ち上がらせる。
「よしミラ。まずは鉄道時刻表を調べてみようか!」
ミラには他にどんな方法があるかなんてぜんぜんわからなかった。
でも、リルの不思議な緑の瞳に見つめられると、なぜだか大丈夫だ、という気がした。
ウィルノー魔導進学塾の新任講師、アリシア・ヒューストンは必死に頭を下げていた。
ここは飛空艇発着場のターミナル…その警備員室の一角、小さな会議室のようなスペース。
ミラはソファに座ってまだぐすぐすと泣いている。
アリシアが気づいた時、ミラは2人連れの旅行者と話していたようで……何かあったのかと大声を上げてしまったのだ。
結果、全員揃って警備員室でそれぞれ事情を聞かれることになった。
一通り事情を聞かれて誤解であることがわかり、アリシアは真っ青になって謝っていた。
なにしろ相手は見上げるような大男。
しかも…
ちらっと見上げると、見下ろしてくる目がまず怖かった。
鋼のような色の瞳には青い影がさし、顔立ちは彫りが深く、そして頬には大きな傷。
まるで"その筋の人"、だ。
誤解で警備員室に連れて行かれるなんて、ただでさえ立腹しているだろう。
どんな報復をされるか…
「気にしてない」
意外なことに、彼は興味なさそうに短く答えた。
目を丸くしているアリシアに、横から顔を出した連れの男性(にしては綺麗だけど…)はあっけらかんと言い放つ。
「ボクは面白かったからいーよ。ターミナルの普段見れないとこに入れたし!」
「…お前はもう少しいろいろ気にしやがれ」
ぼそっと大男がツッコんだ。
…なんとなく分かった。
この人は怒ってないというか…怒るのも面倒なくらい疲れている、ということが。
「ところで、キミたちも飛行艇に乗り遅れたって本当?」
人懐っこそうな銀髪の男性が興味津々といった感じでアリシアに尋ねる。
「あ、はい。実は…」
誤解した手前、事情の説明は必要だ。
しかし大柄の男の方は興味はないとばかりに黙って壁に寄りかかり、魔導通信端末をいじりはじめた。
正直その鋭い眼光にさらされないことにホッとしつつ、アリシアは先ほどミラから聞いた話を簡単に説明する。
「私たちはターミナルで待ち合わせしていたんですが、あの子…ミラが途中で事故に遭った猫を助けて動物病院に駆け込んでいたらしくて」
「へー優しい。ね、アロウ」
銀髪の彼は振り返って大柄な男性の方へ振り返る。
彼の名はアロウというらしい。
「自分で選んだことなら、泣くことないだろ」
すげない言葉が返ってきてアリシアは息を呑んだ。
後ろでミラがまた「ふえぇ…」と泣きだす。
アロウはそっぽを向いてしまった。
アリシアはムッとして、さっき感じたそこまで悪い人じゃないかも?という評価を心のなかで即座に訂正した。
と、眉をひそめるアリシアの横を銀髪の青年がすり抜ける。
彼はミラの前にしゃがみ込むと、目線を合わせて優しく問いかけた。
「どうしてそんなに泣いてるの?」
「だって……しけん…」
「うん、試験?学校のかな?」
首をかしげる男性に、アリシアが説明する。
「あ、私たちは進学塾の受験対策の合宿に行くところで、本番の試験が4日後なんです。」
「あーなるほど、来週の便じゃ間に合わないね」
ふむふむ、と頷いて彼はミラへ再び尋ねる。
「試験受けたい?」
問われてミラがびっくりしてまばたきしながら彼を見る。
「……試験、受けれる?」
「わからないけど…他の方法、探してみない?」
「他の?」
「そ。空がダメなら陸で行けるかもでしょ!」
にこっと彼は笑い、ミラに告げる。
「ボクはリル。ちょっとだけ手伝ったげる。キミは?」
そしてミラに手を差し伸べた。
「………ミラ。ミラ・ストレイフォード…」
おずおずと差し出された手をリルはそっと握ると優しく引き上げ立ち上がらせる。
「よしミラ。まずは鉄道時刻表を調べてみようか!」
ミラには他にどんな方法があるかなんてぜんぜんわからなかった。
でも、リルの不思議な緑の瞳に見つめられると、なぜだか大丈夫だ、という気がした。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる