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光の先の世界
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「でも!リマちゃんに酷い態度だった事は……確かですよ!!リマちゃん……あの邪魔者弟って言ってたの…影から聞きましたもん…僕……」
「いや、お前影からって…つけてのかよ!?」
「ちがっ……せ、先輩……に僕の気持ちなんて…」
目の前のやり取りにイラつき出したアウロンはテーブルをドンと叩き会話を中断させる。
「では何か?好きな相手が文句を言っているのを影から聞いて望に嫌がらせをしたと?そんなくだらない理由だったのか!?」
「ひっ」
余りの剣幕に飛び上がったゲンコラ・ヤイミュ。
「望がどれだけ心細かった事か……この話、使い様に伝わると…想像出来なかったのか?」
「………………………」
「アウロンさん、この様子……考えてませんよ」
呆れながら見習いの頭を小突くヒタム。
「何、部外者の顔をしているんだ?ヒタム・ユー俺は先程から再三、魔術使い全体の問題だと言っているんだが?」
突然、わぁっとテーブルに伏せながら見習い魔術使いゲンコラ・ヤイミュが涙ながらに訴えてきた。
「アウロン様は望、望、望……使い様の弟の話しかしないなんて…あんまりですよー!僕が酷い態度をとるって言っても取り合ってくれないし、何よりリマちゃんが可哀想だって言っても聞いてくれないしーー!これじゃリマちゃんが報われないんだぁ」
「えー……泣く?」
「見習い、お前もさきほどからリマリマ煩い」
「アウロン様!リマちゃんは……リマちゃんは……アウロンさんのことが好きなんですよ!!」
「わぉ!……勝手にばらすねぇ君」
「………正直、俺は多くの人から好意を持たれてきた…だから今それを言われたところで…何とも思わん。すまんな」
「リマちゃーーーん」
どうやら、事の発端はアウロンへの恋心が原因だったようだった。アウロンの事が好きなメイドのリマが、望に嫉妬をした事が始まりだ。人に対して甘やかすような優しい態度をとって来なかった麗しの騎士アウロン・カリーが抱き上げたまま王城に連れてきた人物がいる。
それが望だった。
彼は使い様の弟だがなんの能力もないようなハズレ者だった。
使い様は物腰柔らかく、見目麗しい人格者。一方弟は喚き散らす我儘ぶり。こう王城に仕えている人々に広まった。
例え相手にされなくても好きな人が、初めて他人に甘く優しい態度をとっているなどと聞いて面白いはずがない。しかも実際近くで見てみれば大した事のない子供。いつも機嫌が悪く、周りに優しくもない。
気に入らない。
そんな気持ちになってしまった。そんな気持ちを拾ってしまったのが魔術使い見習いのゲンコラ・ヤイミュだった。メイドのリマをストーキングしている所で聞いた彼女の愚痴。自分が一肌脱いで報復してやるとループをかけなかったのだ。
「え?元々はアウロンさんが原因って事ですか?」
一通りの説明をアウロンから受けた望はそう呟いた。
「ん?俺が原因?……それはどうかな?」
(いや、この人だろ。無駄にキラキラ振り撒いてるからこうなったんだろ?それぞれが意中の相手に振り向いてもらえないフラストレーションを俺で、八つ当たりしたんだろ?)
「何ですかそれ…俺は鬱憤ばらしだったんですね」
理由を知ってしまえば何だと思えたが、やはり良い気分ではない。
「メイドのリマと魔術使い見習いのゲンコラ・ヤイミュにはしっかり謝罪をさせます。これはケジメでもありますから…どうか断らないで下さい。どちらに非があったかハッキリさせるためにも必要な事なんです」
「よく分からないけど…分かりました……」
「受け入れてくれてありがとうございます望」
アウロンは望の前ではにこやかに、さも問題は解決したかのような振る舞いをした。しかし、現状はよろしくない。
(望への対応が……気になる……あの二人には口止めをしておいたが……)
アウロンは魔術使い二人の聞き取りのさい口外するなと言ってある。ヒタムに聞いたところ、望に対してあまり気に留めなくて良いと言われていたと発言した。王城の雰囲気が見る見るうちに望に対して良くない噂であったり、邪魔者だと思うようになっていったという。
(何故だ?異界の地に来て塞ぎ込み、パニックになっているだけであろう?それが何故……)
アウロンは恋だ愛だの個人の問題などではなく、もっと大きな根本的な問題があるのではないのかと感じていた。
(数百年ぶりに使い様をしょうかんして祝福するべき時に負の感情を高めるなど……何故だ?)
ヒタム曰く
「みんなが言ってるんですから、そういうもんなのかとおもってましたよー」
と、軽く返されて力が抜けた。自分が考えすぎなのではないかと思わされる。しかし、望の身になって考えてみろ、と言いたい。
ジワジワと愛おしい存在になりつつある望。
アウロンの心はまるで届いていないように見受けられるが、この男…実力があるが故に自信が有り諦めが悪かった。既にロックオンされた望にはアウロンに落とされる未来しか用意されていないのかもしれない……
┉ ┉ + ┉ ┉ + ┉ ┉ + ┉ ┉
「おい、例の魔術は効いているのか?」
「はっ……王城内を回りましたところ、問題なく魔術が成功しているかと」
「ふふふ………そうか、一安心だな」
「はっ……まさか……使い様の他に第二の存在が同時に召喚されるとは……」
「全くだ……祝われるべき使い様の召喚の年に我らが世代で生きていられる喜ばしいこの今に……」
「その通りでございます」
「この事実を知るものは他に存在しないな」
「はい、確かにでございます」
「よしよし……これからの事、くれぐれも慎重に」
「心得ております」
薄暗い中、二つの影がゆらりと揺れる。
「いや、お前影からって…つけてのかよ!?」
「ちがっ……せ、先輩……に僕の気持ちなんて…」
目の前のやり取りにイラつき出したアウロンはテーブルをドンと叩き会話を中断させる。
「では何か?好きな相手が文句を言っているのを影から聞いて望に嫌がらせをしたと?そんなくだらない理由だったのか!?」
「ひっ」
余りの剣幕に飛び上がったゲンコラ・ヤイミュ。
「望がどれだけ心細かった事か……この話、使い様に伝わると…想像出来なかったのか?」
「………………………」
「アウロンさん、この様子……考えてませんよ」
呆れながら見習いの頭を小突くヒタム。
「何、部外者の顔をしているんだ?ヒタム・ユー俺は先程から再三、魔術使い全体の問題だと言っているんだが?」
突然、わぁっとテーブルに伏せながら見習い魔術使いゲンコラ・ヤイミュが涙ながらに訴えてきた。
「アウロン様は望、望、望……使い様の弟の話しかしないなんて…あんまりですよー!僕が酷い態度をとるって言っても取り合ってくれないし、何よりリマちゃんが可哀想だって言っても聞いてくれないしーー!これじゃリマちゃんが報われないんだぁ」
「えー……泣く?」
「見習い、お前もさきほどからリマリマ煩い」
「アウロン様!リマちゃんは……リマちゃんは……アウロンさんのことが好きなんですよ!!」
「わぉ!……勝手にばらすねぇ君」
「………正直、俺は多くの人から好意を持たれてきた…だから今それを言われたところで…何とも思わん。すまんな」
「リマちゃーーーん」
どうやら、事の発端はアウロンへの恋心が原因だったようだった。アウロンの事が好きなメイドのリマが、望に嫉妬をした事が始まりだ。人に対して甘やかすような優しい態度をとって来なかった麗しの騎士アウロン・カリーが抱き上げたまま王城に連れてきた人物がいる。
それが望だった。
彼は使い様の弟だがなんの能力もないようなハズレ者だった。
使い様は物腰柔らかく、見目麗しい人格者。一方弟は喚き散らす我儘ぶり。こう王城に仕えている人々に広まった。
例え相手にされなくても好きな人が、初めて他人に甘く優しい態度をとっているなどと聞いて面白いはずがない。しかも実際近くで見てみれば大した事のない子供。いつも機嫌が悪く、周りに優しくもない。
気に入らない。
そんな気持ちになってしまった。そんな気持ちを拾ってしまったのが魔術使い見習いのゲンコラ・ヤイミュだった。メイドのリマをストーキングしている所で聞いた彼女の愚痴。自分が一肌脱いで報復してやるとループをかけなかったのだ。
「え?元々はアウロンさんが原因って事ですか?」
一通りの説明をアウロンから受けた望はそう呟いた。
「ん?俺が原因?……それはどうかな?」
(いや、この人だろ。無駄にキラキラ振り撒いてるからこうなったんだろ?それぞれが意中の相手に振り向いてもらえないフラストレーションを俺で、八つ当たりしたんだろ?)
「何ですかそれ…俺は鬱憤ばらしだったんですね」
理由を知ってしまえば何だと思えたが、やはり良い気分ではない。
「メイドのリマと魔術使い見習いのゲンコラ・ヤイミュにはしっかり謝罪をさせます。これはケジメでもありますから…どうか断らないで下さい。どちらに非があったかハッキリさせるためにも必要な事なんです」
「よく分からないけど…分かりました……」
「受け入れてくれてありがとうございます望」
アウロンは望の前ではにこやかに、さも問題は解決したかのような振る舞いをした。しかし、現状はよろしくない。
(望への対応が……気になる……あの二人には口止めをしておいたが……)
アウロンは魔術使い二人の聞き取りのさい口外するなと言ってある。ヒタムに聞いたところ、望に対してあまり気に留めなくて良いと言われていたと発言した。王城の雰囲気が見る見るうちに望に対して良くない噂であったり、邪魔者だと思うようになっていったという。
(何故だ?異界の地に来て塞ぎ込み、パニックになっているだけであろう?それが何故……)
アウロンは恋だ愛だの個人の問題などではなく、もっと大きな根本的な問題があるのではないのかと感じていた。
(数百年ぶりに使い様をしょうかんして祝福するべき時に負の感情を高めるなど……何故だ?)
ヒタム曰く
「みんなが言ってるんですから、そういうもんなのかとおもってましたよー」
と、軽く返されて力が抜けた。自分が考えすぎなのではないかと思わされる。しかし、望の身になって考えてみろ、と言いたい。
ジワジワと愛おしい存在になりつつある望。
アウロンの心はまるで届いていないように見受けられるが、この男…実力があるが故に自信が有り諦めが悪かった。既にロックオンされた望にはアウロンに落とされる未来しか用意されていないのかもしれない……
┉ ┉ + ┉ ┉ + ┉ ┉ + ┉ ┉
「おい、例の魔術は効いているのか?」
「はっ……王城内を回りましたところ、問題なく魔術が成功しているかと」
「ふふふ………そうか、一安心だな」
「はっ……まさか……使い様の他に第二の存在が同時に召喚されるとは……」
「全くだ……祝われるべき使い様の召喚の年に我らが世代で生きていられる喜ばしいこの今に……」
「その通りでございます」
「この事実を知るものは他に存在しないな」
「はい、確かにでございます」
「よしよし……これからの事、くれぐれも慎重に」
「心得ております」
薄暗い中、二つの影がゆらりと揺れる。
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