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中等部のころ
《8》
聞いた話によると、なんと道雄も生徒会に入っているそうだ。
(まぁ……当然か…理事長の息子だもんな…理事長の関係者……ん?あ!)
バタバタと家の中を走る里葉。今日は武通学園の入学式の日だ。進も里葉も無事合格し、入学式が終わった後は入寮の流れになる。中等部の生徒は保護者付き添いの入寮を認められていた。
「あの、おはようございます」
武藤夫婦がリビングに居たので声をかける。
「おはよう里葉くん」
「おはようさーちゃん」
妻の香は里葉の事をさーちゃんと呼び始めていた。
「今日は私がキチンと二人に付き添いますからね、お部屋をチェックしなきゃいけませんから」
「あの……その事なんですが…」
「いやぁ里葉くんがその制服を着ると可愛いね」
二人ともニコニコするばかりで聞く気配がない。
武通学園は中等部は白い詰襟の学ラン、高等部はブレザーで上着は灰色でズボンは深い緑のチェック柄の制服だった。
「あの……僕と…おじさんの関係って…その…」
「あぁ、これからキチンと職員に話すから心配は要らないよ」
「いえ、あの……言わないで欲しいんです」
『え!?』
夫婦の声が揃った、その後ろからため息が聞こえた。
「こいつ、小学校の時うちにいるって嫌味言われてたんだよ。関係ないってしたいんだろ」
「なんですって!?さーちゃんに意地悪する子がいたっていうの?進ちゃん!」
「母さん……その呼び方、学校では辞めろよ…」
「もぅ…”こいつ”なんて言わないのよ進ちゃん」
「大したことありませんでした…でも、その…今回の学校では…その…ただの森里葉として…その…」
「分かったよ」
「貴方っさーちゃんを守れるの!?私から奪っておいて!」
「すげぇ言い方だな…母さん…」
「だって、うちの子たち男臭くなるんですもの!さーちゃんの様に可愛い子なんてそうそう居ないわっ私は娘を持つのが夢だったのに…」
「香……」「母さん……」
微妙な顔の里葉。
「あらやだ……私ったらホホホ…」
「大丈夫だよ香。でももし何かあったら遠慮なく言うんだよ?分かったね」
「はい」
「それに進と同室だし」
「あらーそれなら安心ね」
「ちっしかたねぇな……」
「あ、ありがとうございます」
こうして入学式と入寮を済ませて、新しい生活が始まった。里葉は一般の生徒として過ごせることになった。
「森くん、お昼一緒に行かない?」
前の席に座っている前田が話しかけてきた。入学以来この前田は里葉にちょこちょこ話しかけてくる。
「うん、いいよ」
里葉は中学生になってから、自分の身は自分で守ると言ってしまった手前笑顔を絶やさないようにしていた。道雄の忠告を忠実に守ることにしたのだ。
(今日も声かけられた…道雄さんの言ってた意味全部は分からなかったけど、これで良いんだ。クラスで変に浮いてない)
受験の前に、一に試験結果の通りのクラスにしてくれと頼んでいた。なので里葉はA組になっていた、進は勿論S組だった。中等部では特別枠のS組を筆頭に成績順にA~C組まであった。
(前田くんって…白井学園出身って言ってたよね)
お昼の為に食堂に向かう二人、前田は少年ぽさを残しているがすらっと伸びた身長に落ち着いた雰囲気、容姿もなかなか整っていた。
(なんで僕に話しかけてくれるんだろう…)
「森くんって何が好き?お昼」
「ん~サッパリしてるやつ」
「具体的な物じゃないじゃん、俺は今日なにしよっかなあ~?」
そんな平和な会話が友達と繰り広げられるとは感動を覚えた里葉だった。
食堂でたわいも無い話をしながら食事をしていると周りがざわつき始めた。
「あー…日高たちだ。まだ1年なのにもう騒がれてる……白井学園の時から変わってない…」
「そうなの?」
「うん、俺はちょっと苦手でさ…あの周りでキャーキャー言ってるの、親衛隊っていうんだよ」
「あ、あれが……」
「あ、森くん知ってるの?」
「へ?あ…ここに入る前に知り合いに教えてもらってね……親衛隊ってファンの人たちのこと言うんでしょ?」
「まぁね……あんまり近づかない方が良いよ」
「うん……あの……苦手なの?」
「あーうん……なんて言うか…クネクネしてるし、ぶりっ子だし…実はさ、生徒会の奴ら…あそこにいる騒がれてる奴らの事なんだけどね。アイツらも苦手なんだって、本当は。煩いからヤダって言ってるの聞いたことある」
「そうなの?」
「うん、白井学園の時聞いたよ」
「ふーん……前田くんって親切だね。僕に色々教えてくれて…お昼も誘ってくれるし…」
「えーそう?あー……怒らないでね?俺さ、弟がいてさ…森くん、小柄だし…ちょっと弟思い出しちゃって…あはは」
「チビだってこと……」
「ごめんごめん、俺たちはこれからまだ背が伸びるしね!」
「うーん…あれ?でもあそこの人達、1年なのに生徒会なの?」
「あーごめん口癖。白井学園…小学校の時にね、生徒会やってたから…」
「ふーんそっか…。でも僕には関係ないかなぁ」
「森くん……クールだよね…」
「え!?そ、そう?まだよく分からなくて…」
今までの調子ではいけないと、里葉は気合いを入れ直すのだった。
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