この気持ちに気づくまで

猫谷 一禾

文字の大きさ
12 / 62
すべてのはじまり

《12》

しおりを挟む


  4日目、目が覚めたら既に日が傾いていた。
また例の倦怠感だ、明け方まで抱かれ、行為の数々が残像となって頭の中によぎるとゾクリと寒気がする。作りかえられた気分だ。未知の世界に無理矢理引きずり込まれ、愛を囁かれる。緋縁は自分の身体をぎゅっと抱きしめた。ベットには1人きりだった。すぐ側に暑いくらいの温もりがないことに物足りなさを感じて嫌気がさす。自分の考えにゾッとする。これでは本当に身も心もコウの物になってしまったかのようだ。

(怖い…コウは、アイツは危険だ…)

ムクリと起き上がる、見慣れてしまった自分の格好、大きめのコウの服。外に出るには恥ずかしいがそんな事言ってられない。でも何か策を考えねばアイツから、ここから逃げられない。

寝室を出るとリビングにコウがいた、一人暮らしだというのに部屋が幾つあるのか、そう言えばコウは誰なのか。総長以外に何も知らないことに気づく、それは緋縁も同じなのだか。

(あ、金持ちなのは想像つくな)

「…起きた、いつ帰れるの?」
「おはよう、ここに住んだら?」

(シャレになんねぇ~)

「は、ははは…ははっ…」
乾いた笑いしか出ない
「とりあえず、夏休みだろ?しばらく居ろ」

(来た、そろそろ個人情報聞いてくると思ってた、拉致られた時、身分が分かるものは何も持っていない、スマホもロック掛けてるし俺がサキ以外の事は分かってないはず、きっと俺の返事を最優先してたはずだから。ガードに入ってない事も知らないはず。とりあえず今日は大人しくし過ぎないで様子をみよう…)

「ん~…でも俺帰りたい、つかせめて服返して欲しい、スースーしてお腹痛くなりそう」
「…俺のズボンを履けばいい…ブカブカで可愛いだろうな…よし、待ってろ」

(よし、馬鹿でよかった…下さえ履けばサイズなんてどうでもいい、)

ブーブーブースマホのバイブが鳴っている

「何?…あー…俺必要?…あー…ちっ」

(これは、チャンス到来!?)

「はい、これ、裾何回折れば歩けるかな?ふっ」
「!…どうも…どっか行くの?」
「今、チャンスだと思った?行かないよ」

(は?いやいや、思っきり呼ばれてるでしょ)

ブーブーブー

「…ちっ…」
「呼ばれてるじゃん…行けば?俺もう1回寝る、ダルくて外行けないし」
「お前がそんなに素直なたまか?」
「どうぞ、ご自由に想像して下さい!ダルいしこんな服だし黒龍の総長様を怒らせるなんて馬鹿な真似しませんけどっ…それに…返事したし…俺ってコウ…さん…の…こ、こ、恋…」

(駄目だっ恥ずかしくて言えない!信じさせる作戦なのにぃ…)

「…なんだ?今すぐ抱いて欲しいのか?」
「な、なんでそうなる!で、出掛けても居るってだけじゃん!呼ばれてるんでしょ!さっさっと行ってください…帰るまで居ればいいんでしょ…」

(くっそー…こんなの慣れないに決まってる~)

「はぁ~行きたくねぇ…サキがどんどん可愛くなってくのに、おちおち出掛けてる場合じゃないだろ…」

(いや、行けよ…)

「速攻で帰って来る、待ってろ…ちゅっ」

両手で顔を包まれ上を向けられる、そして当たり前に落ちてくる唇。恥ずかしくて恥ずかしくて赤くなる緋縁、思わず俯いてしまう…

(…より信じさせる為に、今日は体もダルいし、本当に寝ようかな…)

「ちゃんと、待ってるから、いってらっしゃい」
「っ!?はっ!…くそっなんだそれ!」

(え、えぇ!?)

驚いて上を見るとコウの顔が仄かに赤くなっている、緋縁の言葉は効果絶大らしい。ツキン…緋縁の胸が知らない感情を訴えてきた。

「あ…いや…うん…」

見ていられなくて目を逸らす。

「ゆっくり寝てろ、流石に無理させすぎた自覚はあるから」

コクン、言葉につまり頷くだけになってしまう。

「じゃ、行ってくる」

後ろ髪引かれながらコウが部屋から出ていく、バタンと玄関の音が鳴り、ガチャンッ鍵も閉められた。ほぅっと力が抜けた緋縁はペタンと床に座り込んでしまう、手には受け取ったコウの大きいジャージのズボン。無意識に唇を指先で触っていた。

(っは!やばい俺!乙女行動じゃね?…そうだ、俺のスマホどこだ?……なんか…寝よ…)

そのまま、毒気を抜かれた緋縁はベットに戻って寝てしまった。

 ガチャガチャッ…キーバタン
気づいたら寝入っていたらしく玄関のドアの音がした。キー寝室の扉が開かれる

「サキ…いた…はっ…サキ…ふぅ」

スタスタとベットに近づく、そしていつもの様に髪を撫でる。

「寝てるのか?…サキ…」

髪に唇が押し当てられる、寝起きのぼぅっとした頭でされるがままの緋縁。何と言って良いか迷うが、ここはこれに間違いない。

「おかえり」
「…ただいま、サキ」

ぎゅぅっと抱きしめられる、暑いくらいの温もりだ。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。

処理中です...