この気持ちに気づくまで

猫谷 一禾

文字の大きさ
13 / 62
すべてのはじまり

《13》

しおりを挟む


5日目も昼過ぎに起きた、軽く朝昼一緒のランチを食べる。まだ何となくダルい、走れるか不安だ。しかし、寝てばかりなのもそろそろ飽きてきた。

「俺のスマホどこ?ゲームしたい」
「…いいけど…」

昨日、本当に緋縁が家にいるかどうか半分賭けだったコウだが、緋縁を信じたい気持ちになってしまったのだ。そして、緋縁は約束通りに居た。どれだけほっとしたか、ここまで心の奥深く入り込んでいるとは自分に苦笑してしまう。逃げようと思えばきっと出来た、しかしそれをしなかった。その事実は大きく信頼を得たようだ。

「はい、電源切ってた」

コウは若干の逡巡はあったが、スマホを返してくれた。

「ガードの連中に連絡とんの?」
「…取らないよ、暇だからゲームすんの、後でテレビも見ていい?」
「何か見るか?映画でも」
「え?いいの?見たいっ」

お家デートのように2人並んでまったりとテレビ画面を見る。コウは緋縁と居れれば良いみたいでたまには、こういうのも悪くないと満足していた。
  夜、緋縁の身体を思ってか、コウは手を出してこなかった。

  6日目、平和な時間が流れていた、緋縁は居心地が良いと思いそうになっている自分に焦っていた、流されているシッカリせねばと気持ちを奮い立たせる。ピンポーン初めての呼出音を聞いた。

(人が来ることがあるのか?あ、前に言ってた食事を届けてくれてるとかかな?)

「…ちっ誰だよ…サキ、念の為に寝室行ってて、出てくんなよ」
「はぇ?あ、分かった」

(何がまずいんだろう…ちょっとやな感じ)

パタン、寝室の扉を開けたのと玄関を開けたのが同時くらいで声が聞こえた。

「なんだよ、ここまで来んなよ…はぁ、取り敢えず分かったから、上がれよ…睨んでんじゃねえ」
「お前が昨日、中途半端に帰るから悪い」

(なんだろ…チームで問題とかあったのかな)

  コウが尋ねてきた人を上げてから大分時間が経った、ずっと話し合いをしているみたいだ。ボソボソと話し声は聞こえるが、内容までは分からない。

(ヤバい…部屋出るなって言ってたよな…うぅトイレに行きたい。急に来て長居すんなよ~リビング通らないとトイレ行けないじゃん…早く帰らないかな…)

しかし、一向に帰る気配がない。緋縁は我慢が出来なくなってきた。

(非常事態だ!)

トントントン!トントントン!寝室の部屋の扉をノックする。トントントン!

「お前はちょっと待ってろ…何?どうした」
「…トイレ、トイレに行きたいっ出ても良い?」
「…ぷっ…あはっ…は、悪い…考えてなかった」

ガチャ、扉が開いた。

「何?我慢してたの?…かーわいい」
「トイレに可愛いとかないから!笑ってないで退いてよっ」

コウが一度緋縁を隠すように抱き込めて後ろを振り返る。

「お前はあんまり見んなあっち 〖ガチャッ〗「コーウ入るよぉ~イッチーいるでしょ~?」

聞き覚えのない唐突な声に思わずコウからひょこんと顔を出して覗いてしまう緋縁。

「あっれ~?誰ぇ?その子!」
「早く行け」
「わっわっうん」

パタパタとトイレに逃げ込む。リビングにいた人はデッカくて怖い雰囲気だった、今来た人は髪の毛オレンジだった。

(黒龍の仲間だ!怖いっ同じ空間にいるとか無理)

ザー無事トイレを済ます、ガチャリとトイレの外に出ると目の前にオレンジ頭の人が立っていた。

「あ、可愛いーもしかしてぇ噂のサキちゃん?」
「あ、てめぇいつの間に!サキに触んなよっ」

バッチリ顔を見られた、夜のチームの人達とはお近付きになりたいとは思っていない、身元がバレるのを避けるためにも余り会いたくない。

(ひぃっやだ…これからゲーセン行きずらくなっちゃうじゃうかぁ)

思わず逃走する緋縁はコウの背中に逃げてしまった。背中に顔を着けてコウの洋服をぎゅっと握り見られないようにする。その行動がどの様に見られるかと考えている余裕は無かった。

「サキ…」
「えー!何それ!?しかもコウの服着てんのぉ?え、もうお手つき??」
「ショウ!その辺にしとけ」
「なんだよイッチー、イッチーだって気になってるでしょぉ?だから昨日コウはソワソワしてたんだ!やっらしぃ~」

(うがぁっ!!もう辞めてくれぇ!!)

緋縁はこれ以上ない程狼狽えて頭から湯気が出そうなほど顔が真っ赤に沸いていた。

「う…うぅ~…もぅどうにかしてよ…」

蚊の鳴くような小さな声でコウに訴える。

「ショウ…一度死んでみるか?」
「やっやっだなぁ!冗談だよー!怖い怖い」
「部屋に行ってろ、ここに居たらなんか減るぞ」
「分かったっ」

パタパタ寝室に逃げていく緋縁、小動物がチョコチョコしてるみたいで大変可愛らしい、ニヤリと満足気なコウ、自分の後ろに隠れるなんて可愛い以外にない。ぱたん、ふぅと息を吐く。寝室に逃げた緋縁は何でもいから早く帰って欲しかった。

 それからまた、長い時間が過ぎた。途中でペットボトルのお茶とおにぎりをオレンジ頭の人が差し入れしてくれた。どうやらコウに買いに走らされたらしい。

「俺が直接サキちゃんに渡すんなら買いに行ってもいいよ~って言ったの」
「…ありがとうございます」

ぬっとオレンジ頭の人の後ろからコウが顔を出し

「トイレとか自由に行っていいから」
「もう俺たちに見られちゃったもんね~。コウはさっ、サキちゃんの事見せたくないんだってぇ。あーやだねぇ独占欲っつーやつだよぉ」

パシン…

オレンジ頭の人が頭を叩かれていた。そのまま無言で扉を閉められる。ときどき押し問答をするような声が聞こえたりした。日付が変わる頃になりやっと、帰るような雰囲気がした。そしてコウが扉を開けて

「悪い、どーしても今日も行かないとダメみたいだ、今日もお留守番で悪いな、早めに帰るから」
「あ、うん、分かった」
「じゃあな」

バタン

ボソボソ…ガチャン…ガチャガチャまた鍵を掛けて出かけて行った。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。

処理中です...