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すべてのはじまり
《13》
しおりを挟む5日目も昼過ぎに起きた、軽く朝昼一緒のランチを食べる。まだ何となくダルい、走れるか不安だ。しかし、寝てばかりなのもそろそろ飽きてきた。
「俺のスマホどこ?ゲームしたい」
「…いいけど…」
昨日、本当に緋縁が家にいるかどうか半分賭けだったコウだが、緋縁を信じたい気持ちになってしまったのだ。そして、緋縁は約束通りに居た。どれだけほっとしたか、ここまで心の奥深く入り込んでいるとは自分に苦笑してしまう。逃げようと思えばきっと出来た、しかしそれをしなかった。その事実は大きく信頼を得たようだ。
「はい、電源切ってた」
コウは若干の逡巡はあったが、スマホを返してくれた。
「ガードの連中に連絡とんの?」
「…取らないよ、暇だからゲームすんの、後でテレビも見ていい?」
「何か見るか?映画でも」
「え?いいの?見たいっ」
お家デートのように2人並んでまったりとテレビ画面を見る。コウは緋縁と居れれば良いみたいでたまには、こういうのも悪くないと満足していた。
夜、緋縁の身体を思ってか、コウは手を出してこなかった。
6日目、平和な時間が流れていた、緋縁は居心地が良いと思いそうになっている自分に焦っていた、流されているシッカリせねばと気持ちを奮い立たせる。ピンポーン初めての呼出音を聞いた。
(人が来ることがあるのか?あ、前に言ってた食事を届けてくれてるとかかな?)
「…ちっ誰だよ…サキ、念の為に寝室行ってて、出てくんなよ」
「はぇ?あ、分かった」
(何がまずいんだろう…ちょっとやな感じ)
パタン、寝室の扉を開けたのと玄関を開けたのが同時くらいで声が聞こえた。
「なんだよ、ここまで来んなよ…はぁ、取り敢えず分かったから、上がれよ…睨んでんじゃねえ」
「お前が昨日、中途半端に帰るから悪い」
(なんだろ…チームで問題とかあったのかな)
コウが尋ねてきた人を上げてから大分時間が経った、ずっと話し合いをしているみたいだ。ボソボソと話し声は聞こえるが、内容までは分からない。
(ヤバい…部屋出るなって言ってたよな…うぅトイレに行きたい。急に来て長居すんなよ~リビング通らないとトイレ行けないじゃん…早く帰らないかな…)
しかし、一向に帰る気配がない。緋縁は我慢が出来なくなってきた。
(非常事態だ!)
トントントン!トントントン!寝室の部屋の扉をノックする。トントントン!
「お前はちょっと待ってろ…何?どうした」
「…トイレ、トイレに行きたいっ出ても良い?」
「…ぷっ…あはっ…は、悪い…考えてなかった」
ガチャ、扉が開いた。
「何?我慢してたの?…かーわいい」
「トイレに可愛いとかないから!笑ってないで退いてよっ」
コウが一度緋縁を隠すように抱き込めて後ろを振り返る。
「お前はあんまり見んなあっち 〖ガチャッ〗「コーウ入るよぉ~イッチーいるでしょ~?」
聞き覚えのない唐突な声に思わずコウからひょこんと顔を出して覗いてしまう緋縁。
「あっれ~?誰ぇ?その子!」
「早く行け」
「わっわっうん」
パタパタとトイレに逃げ込む。リビングにいた人はデッカくて怖い雰囲気だった、今来た人は髪の毛オレンジだった。
(黒龍の仲間だ!怖いっ同じ空間にいるとか無理)
ザー無事トイレを済ます、ガチャリとトイレの外に出ると目の前にオレンジ頭の人が立っていた。
「あ、可愛いーもしかしてぇ噂のサキちゃん?」
「あ、てめぇいつの間に!サキに触んなよっ」
バッチリ顔を見られた、夜のチームの人達とはお近付きになりたいとは思っていない、身元がバレるのを避けるためにも余り会いたくない。
(ひぃっやだ…これからゲーセン行きずらくなっちゃうじゃうかぁ)
思わず逃走する緋縁はコウの背中に逃げてしまった。背中に顔を着けてコウの洋服をぎゅっと握り見られないようにする。その行動がどの様に見られるかと考えている余裕は無かった。
「サキ…」
「えー!何それ!?しかもコウの服着てんのぉ?え、もうお手つき??」
「ショウ!その辺にしとけ」
「なんだよイッチー、イッチーだって気になってるでしょぉ?だから昨日コウはソワソワしてたんだ!やっらしぃ~」
(うがぁっ!!もう辞めてくれぇ!!)
緋縁はこれ以上ない程狼狽えて頭から湯気が出そうなほど顔が真っ赤に沸いていた。
「う…うぅ~…もぅどうにかしてよ…」
蚊の鳴くような小さな声でコウに訴える。
「ショウ…一度死んでみるか?」
「やっやっだなぁ!冗談だよー!怖い怖い」
「部屋に行ってろ、ここに居たらなんか減るぞ」
「分かったっ」
パタパタ寝室に逃げていく緋縁、小動物がチョコチョコしてるみたいで大変可愛らしい、ニヤリと満足気なコウ、自分の後ろに隠れるなんて可愛い以外にない。ぱたん、ふぅと息を吐く。寝室に逃げた緋縁は何でもいから早く帰って欲しかった。
それからまた、長い時間が過ぎた。途中でペットボトルのお茶とおにぎりをオレンジ頭の人が差し入れしてくれた。どうやらコウに買いに走らされたらしい。
「俺が直接サキちゃんに渡すんなら買いに行ってもいいよ~って言ったの」
「…ありがとうございます」
ぬっとオレンジ頭の人の後ろからコウが顔を出し
「トイレとか自由に行っていいから」
「もう俺たちに見られちゃったもんね~。コウはさっ、サキちゃんの事見せたくないんだってぇ。あーやだねぇ独占欲っつーやつだよぉ」
パシン…
オレンジ頭の人が頭を叩かれていた。そのまま無言で扉を閉められる。ときどき押し問答をするような声が聞こえたりした。日付が変わる頃になりやっと、帰るような雰囲気がした。そしてコウが扉を開けて
「悪い、どーしても今日も行かないとダメみたいだ、今日もお留守番で悪いな、早めに帰るから」
「あ、うん、分かった」
「じゃあな」
バタン
ボソボソ…ガチャン…ガチャガチャまた鍵を掛けて出かけて行った。
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