21 / 62
心の平和はおとずれるのか
《21》
しおりを挟む学園前からバスに乗って街まで出る。土・日は外出者も多くいるため学園から街までのシャトルバスが本数多く出ていた。緋縁は大きめのバックを背負って学園から離れない限り警戒を怠らないように前髪を下ろし、メガネをして、フードを被ってうつむき加減でバスに揺られていた。
街に出てまずは軽く買い物をするべくふらつく、そして夕方になる頃に商業施設のトイレで服を変える。万が一、唯一に会った時にすぐに分かるように黒いパーカーにキャップを被って前髪が落ちてこないようにする。その上から更にフードを被る。今日はアイツに会わないだろうが周りを警戒しながら唯一とよく遊んでいたゲームセンター、ジムに向かう。
(新しいゲームが増えてる)
入口から入るとすぐに独特の雰囲気に包まれた店内にあの頃を思い出す。
(あーこれイチが好きなキャラだ)
その時
「ヨリ?」
「!?」
後ろから声をかけられた。自分のことを<ヨリ>と呼ぶのは1人しかいない。振り向くとそこには
「イチ!」
「ヨリ~~」
唯一が半泣きで抱きついてきた。
「本物?本物のヨリ??」
「俺だってば」
「よかった~~生きてた~」
顔を覗き込み体をぺたぺた触って確認してくる唯一に緋縁は苦笑いが込み上げてくる。
「イチだって全然連絡取れなくなっちゃってさ、俺だって心配してたんだよ?」
「あぁそっかーごめんねぇ僕データが全部飛んじゃって…なんか初期化されちゃってさ…ヨリにはここで会えるから良いかって軽く考えてたらぜっんぜん会えないんだもん~」
「ごめんごめん。ちょっとね…受験勉強に本腰入れたりさ…後、体調崩してたりね…」
「え!?大丈夫なの?」
ぎょっとした顔をして改めて頭のてっぺんから足元までジロジロと見てくる唯一。
「もぅ大丈夫だよ。相変わらず心配性だねイチは」
「何言ってんの!当たり前でしょ!!」
思っていたより強めに叱られた緋縁はびっくりしてしまった。
「イチ…」
「ヨリ!僕がここまで心配してるの、なんか心当たりあるでしょ!!」
「え"」
「ヨリを見かけなくなってから、僕の所に誰が来たと思ってるの?分かるでしょ!!」
緋縁は言葉に詰まってしまった。心当たりはありすぎる程ある。
「黒龍の総長」
ギックゥ!!
「直々に、僕の前に現れたんだけど…」
ジトーっと冷たい目で見られてしまう。
「サキを知ってるだろ、今すぐ出せってすごい剣幕で言われたんだけど僕…生きた心地しなかったよ」
「え!そんなに!?…アイツゥ~~」
大切な友達になんて事をしてくれるんだとギリギリと歯を食いしばり顔を歪ませる緋縁。
「アイツ?アイツって呼べるほどの知り合いなの?どういうこと!?」
「へ?……え?……そんなこと言った?俺……」
真剣な眼差しに射貫かれ怖々誤魔化してしまう。
「ヨリ、僕にだって噂は回ってくるし、この界隈でどれだけサキが探されてたと思ってるの?」
(ひぇぇ~~マジかよ…半端なくない?)
「で、イチは大丈夫だったの?コウに会って」
「コウ?呼び捨て!?」
「あ、いやいや……いや…えとー」
「はぁ…ガードってチームいるでしょ?そこの人達が助けてくれたの。だから大丈夫だった」
「あ、そっかぁ良かった…」
「全然良くない、大丈夫じゃないよ…ガードの総長僕の高校の生徒会長だったんだから…」
「え、えぇ!?イチのところも!?」
「は?僕のところもって…なに?……え?ヨリの行ってる学校にも誰かいるの?」
「あ"……」
「ヨリ、そろそろ観念して全部話そうか」
唯一がにっこりと冷たい微笑みで迫ってくる。この半年で緋縁も少しは身長が伸びたが、それは唯一も同じだった。目線が若干近くなり迫力がましたようだ。唯一は静かに怒るので怖い。
「イチ、取り敢えず落ち着こうか…」
「僕は落ち着いてるよ。僕にはヨリに何があったか聞く権利があると思う。あの黒龍の総長様、コウさんに脅されたんだからねっ」
「ぅわー……は、はいぃ~」
唯一も緋縁と同様に幼く見えるが、しっかりとしたところがあった。緋縁は唯一に勝てたためしが無いのだった。
「えとー…まず…俺が行ってる高校って武通学園っていって、あー…そこの生徒会長ってのが…あの、黒龍の総長だったりして…」
「はぁ?え、なに?黒龍の総長とそんなに親しいの?いつの間に!?」
「あ、いやいや違う、違うのか?いや違う。親しくは無い。これはそう、本当に!だってまだ見つかってないし!」
唯一の顔がドンドン怪しげに目をすぼめて見詰めてくる。先を話せと視線で訴えてくる。
「ん~と…半年前に、ちょっと接触があってね。黒龍の総長と…んで……なんて言ったら良いか…」
「惚れられたんでしょ」
ズバッと確信を付いてきた。
「何でわかるの!?」
「わかるに決まってるじゃん…て言うかさぁ…」
「え、なに?俺まだあんまり話してないけど…」
「じれったい!コウさんはヨリが恋人だって言ってたけど!!本当なの?」
「ぎゃあ!!うわっうわっいや~~……」
緋縁は遂に出てきた単語に我慢が出来ずに両手で頭を抱えてしゃがみこんでしまった。
「情報知ってて黙ってた僕も悪いけど、いきなり黒龍の総長に俺の恋人のサキを出せって迫られた僕の身にもなってよね」
「そんなこと言ってたの?アイツ…」
緋縁の隣にしゃがみこんで諭すように話す唯一。弱々しい小さな声が緋縁からポツポツと聞こえてきた。更に緋縁の顔を見ようと覗き込んだ唯一は目を見開いた。緋縁の顔は真っ赤だった。
「ヨリ…本当に恋人になったんだ…」
「違うっ!違うんだよ~違くないけど違うのぉ」
「さっぱり分からないんだけど…ちゃんと説明して、聞いてあげるから」
「イチ~~俺イチの助言ちゃんと聞けばよかった」
「うん、だから言ってたでしょ?それで?」
「うぅ……コウに家に連れてかれて…付き合えって言われてさ…それで…なんやかんやと…付き合ってる事になった?みたいな……」
「家に行ったの!?うわーそれダメじゃん…付き合うのOKしたんでしょ?何でそんなこんがらがった話になってんの?」
「ちゃんと断ったんだよ俺は、でもさ…なんて言うか…無理やりというか…脅された?みたいな…とにかく断れない状況になって、どうしようって…コウは付き合ってるつもりだし、本当にどうしようって…だからアイツの家から逃げたって話で」
「ふーん…なんか…黒龍の総長っぽい話だね。身の回りで本当にそんな事起きるんだね…」
「イチ……」
唯一の冷静な言葉に何と説明すべきか悩んでいた緋縁は肩透かしをくらった気分だった。
いくら仲の良い唯一にも体の関係があったとは言えないし言いたくなかった。
21
あなたにおすすめの小説
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
大嫌いなこの世界で
十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。
豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。
昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、
母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。
そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる