この気持ちに気づくまで

猫谷 一禾

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心の平和はおとずれるのか

《22》

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 「多分ヨリは色々と端折って説明してるから全貌がイマイチ掴めないけど、逃げたって…よく逃げられたね」
「うん、タイミングが良かったのかな?いい加減家に帰りたかったし」
「え……そんなに居たの?」
「うん、一週間くらい?」
「はぁぁあ!?いっしゅうかん??それ監禁…」
「あ、わっ…いや……えぇ~と…」
「よくぞ無事で………………ヨリ……そんなに家に居て……無事じゃなかったんじゃないの?」

ピシリ……

緋縁は固まるしかなかった。

「ヨリ……まさか……」
「イチは!?イチ……ガードの人に助けて貰ったって……そう!学校、学校一緒だったって!」
「話を逸らしたね…て事はっ……」
「イチ、イチ、それ以上は……」

緋縁の鼓動がドキドキと大きくなっていく、じっとお互いに見つめ合ったまま時が止まったかのように微動だに出来ない。緋縁の瞳は情けなく、言わないでと訴えかけている。

「やられちゃったの?」
「わぁぁぁあああ~~!!!」

聞こえないと両手を耳に付けて顔を膝の間に入れる。しゃがみこんでまんまるいポーズになった。大きな声をだしたが、幸い膝の間にすっぽりと顔を入れ込んでいて声がくぐもってしか聞こえなかった。

「ヨリ……本当に……」
「ちがうちがうちがう!そうじゃないんだよ」
「何が違うの?」
「うぐっ……」
「ヨリ…無理矢理?」
「え、いや……無理矢理……うぅ…いや…うぅ~」
「何となく分かった。あ!そうか……ヨリも好きになっちゃったんだ……ん?でも逃げ出したのか…でもヨリなら逃げるかも…」
「ちょちょちょっと、イチ、勝手に納得して勝手に話を進めないでよ」

もう緋縁は半泣きで顔が真っ赤である。コウのあの部屋で言われた<ゆっくりご飯を食べてるなんておかしい>と言われた事がずっと引っ掛かっていたのだ。だからすぐに無理矢理だったと言えない自分がいた。しかも緋縁自身男の端くれ、無理矢理やられてしまったとは、おいそれとは言えなかったのだ。しかしながら相手は大きなチームの総長、体格差も迫力も規格外な男なので、緋縁程の小柄な少年なら負けてしまってもおかしくはなかった。唯一はそこの事情も透けて見えている様な顔をしていた。
そしてもう一つ、緋縁の心に気がかりなことがあった。コウの部屋から逃げると決めてから緋縁は油断させるつもりでその気があるような態度を取ったはずだったが、コウの顔がまともに見れなかったことだ。あの嬉しそうな顔がチラつくと罪悪感に苛まれてしまう。

「俺…自分の事がよく分かんないんだよ…」
「そっかぁ…なんだか、単純な話じゃ無いんだね…でも黒龍の総長さんは単純な思考回路してそうだよね。激情的な熱い男って感じ?」
「知らないよ~俺に聞かないでよ…逃げれたと思ったのにさぁ居るんだもん新しい学校に…」
「ヨリはなかった事にしたかったのか。そうかそうか…それで納得したよ。でもまだモンモンと悩んでるみたいに見えるけど?僕には」
「そりゃそうでしょ!だから、新しい学校に居たんだってば!見つかったら半殺しにされるかも…」
「いや、それは無いでしょ…」

冷めた目と声がする

「囲われちゃうんじゃない?」
「は!?」
「え、ヨリまだ分かってないの?」
「な、何が……」
「消えた恋人探してる総長さんの気持ち」
「いや、だって半年も前の事だよ…あんな人が俺にそこまで?あの時は、めちゃくちゃ告られたけど」
「なんか……総長さんも不憫だな……」
「えぇ!?イチ!?なんで俺の味方じゃないの?」
「僕はいつでもヨリの味方だよ」

しゃがみ込んだまま会話が尽きない2人の後ろから人影が近づく。

「双黒のおふたりさん、そんな所に座り込んでちゃ駄目でしょ」

びっくりして振り返る唯一とピンと来ていない緋縁

「七海…」

唯一が声をかけてきた人に呟いている。

「イチ、知り合い?」
「え、ヨリも会った事あるでしょ」
「え?……あ!ガードの!」

声を掛けてきた人物はサッと手を挙げて

「はーい、俺はガードの総長やってまーす。サキちゃん久しぶりだね~元気だった?…なんてね~色々と大変だったみたいだねぇ」
「先輩、何でここにいるんですか?」
「ノンノン、俺のことは彗って呼んでって言ってるでしょ?そんな他人行儀な呼び方しないで欲しいなぁ…すーちゃんでも良いけどねっ」

パチンっと音がするかと思う程の勢いでウインクをしながら首をこてんと横に倒している彼、ガードと言う夜を練り歩くチームの総長、七海彗(ななみ すい)唯一の通う高校の生徒会長もこなしているようだ。

「先輩、ヨリがびっくりしてます。辞めて下さい」
「つれないなぁゆいちゃんは、俺拗ねちゃうよ」
「イチ、どういうこと?」

ガードの総長とイチのやり取りを聞いてヒソヒソと関係性を聞く緋縁。普通、総長とか生徒会長とかとそんなに仲良く話などしないだろう。
2人はゆっくり立ち上がり、唯一が緋縁の腕を取ってその場を離れようとする。緋縁は焦った

「ちょっと、失礼なんじゃない?」
「いいよあの人には」

唯一の冷めた態度に緋縁は面食らう。こんな風な態度の唯一を見たことがなった。いつもニコニコしているイメージだ。

「イチ?」

半年、短いような微妙に長い時間、緋縁の知らない間に確かにこの2人にも何かあったのだ。自分と皇輝にもあったように…

「ゆーいーちゃん、怒ってる?折角会えたんだし、もっとお話しようよ、それにサキちゃんにもお話あるしね?ね?」
「俺に話ですか?」

唯一に引っ張られていた体をぐっと止めて振り返る

「そうそう、決闘かと思う気迫で俺のところに来た黒龍のコウのお話だよ」

(決闘!?え、決闘!!?)

「あはー信じられないって顔してるね」
「だって……そんな……」
「うん、マジでビビったわ~。でもね、サキちゃんがコウに目を付けられたきっかけ作っちゃったの、うちの奴らのせいかもしれないんだわ」
「え、それはどういう……」
「前にうちのチームに入ってって誘ったでしょ?その時にサキちゃんはチャーント断ったのにさ、うちのバカ達が変な噂流したみたいで、ごめんね?」

びっくりだ、総長とは皇輝の様な人ばかりかと思っていた。確かに、前に話した時も人当たりが良くて話しやすいと思ったけど、総長の貫禄みたいなカリスマ性を感じていた。こんな風に素直に謝って貰えるとは思っていなかった。
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