この気持ちに気づくまで

猫谷 一禾

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心の平和はおとずれるのか

《24》

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 緋縁が逃げていくのを黙って見ている皇輝。

「あらら、逃げちゃったけど良いの?コウ」
「いいんだよ」

何故か余裕の表情の皇輝に怪しむ残された2人。

「ちゃんと、印付けたし」

はっと唯一の大きな目がもっと大きく開かれる。

(まさか、ヨリ…既に見付かってるんじゃ)

「月曜日が楽しみだよ。 緋縁に会えるのが…」
「ひより?」
「じゃあな、ガード。お前も苦戦してるな」

(ヨリ~~やっぱダメじゃぁん!)

歪んだ笑顔を見せた皇輝は夜の街に消えていった。残された2人

「さーて、ゆいちゃんはどうするの?帰るなら送って行きますけど~?」
「僕、1人で帰れます」
「たまにはさ、俺の言うこと聞いてみない?余り冷たいと、俺もどっかの狼みたいになっちゃうかもよ?どうする?」

唯一は一瞬緊張したような顔をしたが、直ぐに取り繕い、チラリと彗を見て足を進めた。

「ゆいちゃん、ガオー!」
「そうやって、すぐふざけて、バカにしてます?先輩こそ、ちょっとは僕の言うこと聞いてください」
「ゆいちゃんの頼み事なら何でもきいちゃうよ」
「やっぱり分かってないです」
「分かって無いのは、ゆいちでしょ。こんなに可愛い子、1人で帰らせる訳に行かないでしょ」

こうやって、たまに男の顔ってやつを覗かせてくるガードの総長、七海彗。実は皇輝よりタチの悪い男だったりした。

「僕、先輩に怒ってるんですよ。助けて貰ったことはちゃんとお礼言ったし、僕は別に悪いことしてないのに…勝手に色々して……先輩、謝ってくれないし、悪びれてもない。僕に酷いことしたとか思ってないんですか?本当に」

今のままでは埒が明かないと判断した唯一は足を止めないまま、顔だけ彗の方を向いて話し出した。彗も彗で唯一にしっかりとくっついて来ている。

「ん~酷い事ねぇ…ちょっとだけワザとスマホ壊しちゃって、後はあれかな?キスしちゃったこと?」
「七海先輩!!」
「ゆいちとサキちゃん、2人ともなんだけどさぁ」
「何ですか…」
「もぅいい加減自分がどう見られてるか自覚持とうよ…双黒って噂される程人目を引く存在なんだよ?それに、俺もコウも純粋に好きになっちゃっただけじゃんか。そこまで拒否しなくても良くない?」
「え?何言ってるんですか?話始めと最後、論点変わってますよね?先輩達が好きなら当然OKしろと?そういう事ですか?」
「えーだって…なんで断るの?意味わかんない」

絶句、これに尽きる唯一。

「アプローチの仕方間違ってるし、そもそも人類皆自分の事を好きなのが当たり前だと!?」
「違うの?」

思わず立ち止まって口を開ける。薄々そんな事かと思っていたが、ハッキリと言われるとは驚愕するなという方が無理な話である。

「厄介な相手に好かれちゃった~って思ってる?」
「厄介どころじゃないですよ…僕は断ってるんだから、聞き入れて下さいよ!」
「いやいや、押して押して押しまくるよね。頷いてくれるまで付きまとうよ~。もう観念して俺のものになっちゃいなよ」
「そんなこと言って、飽きたらすぐにポイするんでしょ…結局バカを見るのは僕なんだ…」
「あれあれ?それってもぅ俺のこと気になっちゃってるってことでしょ!?」

どこまで行っても平行線な会話だ。

「なんで、僕なんですか…僕なんて目立たない方なのに…しかもアニオタで推しキャラ取るためにゲーセン来てたんですよ?住む世界違うでしょ!」
「その自己評価がおかしいんだよなぁ」
「自慢じゃありませんが、僕はヨリと違ってモテたことなんてありませんから、暇つぶしの遊びなら本当に辞めてください」
「サキちゃんも綺麗な子だけどさ俺はゆいちの可愛いさの方が好き」

少しの間を置いてゆっくりと歩き出し、唯一がそろりと聞く。

「前から聞きたかったんですけど、先輩って同性が好きなんですか?」
「ん~俺さ前にテレビかなんかで見たんだけど、人間ってお母さんのお腹に居る最初の最初は皆女の子なんだって」
「え"?何の話ですか…」
「いいから聞いて聞いて、それでね、お母さんのお腹の中で大きくなってくでしょ?その途中に男の子のシンボルが出来てきたり、女の子になったりするんだって。DNAで最初から違うのかも知れないけどさ進化の過程を通って人間らしい形になってくんだって。凄くない!?」
「いや、だからなんの話しを急に…」
「だからさっ性別ってそんなちっさい事気にしなくて良いかなぁって。要はさ、心臓が動いてて血液が流れてて臓器が動いてて、人間なんでしょ?人が人を好きで、それこそ何が悪いの?」
「皆がその考えだと人類いなくなっちゃいますよ」
「大丈夫大丈夫、女好きはいっぱいいるから。俺はおっぱい無くても大丈夫だから」
「良さげな話だったのに、なんか最低ですね」

少し沈黙が続く。

「あの、どこまで付いてくるつもりですか?」
「もちろん!家の前までだよ」

唯一は困り顔でチラリと彗の顔を見る。

(この人、傷つかないのかな…僕ってこの人の好きな人な訳だよね…こんなに断られ続けてるってのにメンタルどうなってるんだろ)

「あのー…もうすぐ家着くので、本当に大丈夫です。ここまでで…ありがとうございます」

立ち止まって、曲がりなりにも送ってもらってしまったのでお辞儀をしておく。

「だから家の目の前までだって言ったでしょ」
「いや、なんか逆に怖いので…ここで」
「ゆいちゃん、俺って生徒会長もこなしちゃってるでしょ?生徒の住所一覧とか先生に見せて貰えるんだよね~」

にこりと笑う狼。

「個人情報の漏えいだ!」
「って訳だからレッツゴー!」

結局、唯一でも総長様には勝てないのであった。


 一方、本人的には無事逃げれたと思っている緋縁は寮の部屋に帰りついていた。今は洗面所の鏡の前にいる。噛まれた首を確認したかったのだ。しかし、前から見ただけでは絶妙に見えない場所だ。うなじに近く、耳の下辺りにあった。丁度今の緋縁の髪の長さだと隠れる位置だった。

(ちっくしょ~こんなに付けやがってぇ)

会うと絆されそうになる。やはり日高皇輝という男は危険だ。緋縁は男の恋人を望んでいなかった。

(ほんと、予想外!イキナリ噛み付く?無いわー)

しかし、ホッともしていた。唯一に会えたし皇輝からまたしても逃げられた。

(あれ?でも何であそこにいたんだろう…今日の黒龍の集まりは1番街の筈なのに……)

緋縁は首を押さえながら疑問に思った。

(イチ……大丈夫だったかなぁ…)
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