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新たな出会いと再会
《27》
しおりを挟む4時間目が終わり、鈴井に言われた通りに職員室に向かう。井上と佐藤には先に食堂に行ってもらった。長く掛からないだろうが付き合ってもらうのは気が引ける。
「失礼します。鈴井先生は…」
「お、来た来た。こっちこっち」
「はい、あのー…それで…」
「あぁ悪い悪い、これを届けて欲しいんだ。外部生に持ち回りで頼んでるんだけどな、校舎に慣れてもらうって事で、はい」
「はぁ…これをどこに…」
「あー今回は、生徒会室だ」
「え"!!」
「いやいや、今は生徒会室誰も居ないから机の上に置いておいてくれれば大丈夫だから。じゃ頼んだ」
「え、えぇ~せ、先生…」
「はい、行った行った、俺はこれから昼だから」
「ちょっ…先生…」
鈴井は任務終了とばかりにサッサっと職員室を後にしてしまった。
(う、うそだろ~…)
手に持ったプリント数枚を恨めしく見つめる。
(ぱっと行って、ぱっと帰る……大丈夫、俺は出来るやつだ…そうだ、今は誰も居ないって先生が……早く行かないと誰か来るかも…)
サーっと頭が冷えていく、急いで職員室を出て生徒会室に向かう。
(大丈夫だよな…これって先生からの頼み事だし、親衛隊の人達にも大丈夫だよな…)
自然と早歩きになってしまう。緋縁たち1年は2階、職員室は1階、そして生徒会室は最上階の5階にある。生徒会室の前に着く頃には息が軽く上がっていた。ここまでは順調に来れた、生徒会室の前までいい感じだ。キョロキョロと周りを見回す。誰も居ないと言った鈴井の言葉は本当みたいだった。
(ふぅ~~よし、さっと置いてすぐに食堂に行こう。昼が俺を呼んでいる…よし)
コンコンコン
念の為ノックをする、返事がない。ドキドキと早くなる心臓。緊張して震える手をグーパーと握ったり開いたりする。覚悟を決めてドアに手をかける。
スー
横扉を開けて生徒会室の中を覗く、まだ開けただけで、廊下から見える開けたドアの範囲だけ中の様子が分かる。誰もいない、思い切って生徒会室の敷地に足を踏み入れる。手に持っているプリントを目の前の机に置けばミッションコンプリートだ。5歩ほど中に入らないと行けないのが嫌な感じだ。
「し、失礼しまーす」
囁くように小声で言う、お化け屋敷に入る心境に近かった。
パサッ
プリントを置けた、
グイッッ!
突然強い力で後ろから誰かに引き寄せられた。背中に感じる他人の体温、あっと思った時には両腕と胸の前に回っている誰かの腕。ぎゅうっと抱き込められて、最近ではやっとつけ慣れてきたメガネが顔から奪われ床にカシャンと音を立てて落ちた。メガネを視線で追いかけた瞬間おでこに熱い掌の感触。そのまま前髪の生え際からぐしゃっと髪を引っ張られ上を向かせられる。いつかと同じだと感じたとき
「見~つけた……」
心底楽しそうな顔の生徒会長と目が合った。
一瞬の出来事だったのか、スローモーションの中で起きたのか、緋縁は皇輝の腕の中にいた。
「多咲緋縁、サキ……」
目を見開き呼吸を忘れた緋縁は皇輝の瞳を見つめ続け、逸らすことが出来なかった。
何か言葉を発しようと唇が動くがそれだけだった。
「上手く隠れてたな、サキ。髪が伸びて…
ほら、ここ……夜に会った時の、これ」
里葉の助言通りバンソーコーで隠していた、皇輝の所有印、髪を掴んでいた手を離す、ハラハラっと髪が顔に落ちてくる。その手でビリッと簡単に剥がされてしまう。
「まだ、ちゃんと残ってる。俺のものって印」
「はっ……」
苦しくて息を吐き出す、と同時に身体が暑くなる。
俺のモノ
この言葉は胸がザワつく、噛み付かれた痕を指でなぞられる。ゾワゾワっと背中に何かが走る。
抱き込められたままもう一度前髪を上げられる。
「サキ……緋縁……ひより……可愛い名前」
身体が固まり動けない緋縁は皇輝に、簡単にキスを許してしまう。皇輝はうっとりとした表情で軽く唇同士をつける。一度離れてじっくりと顔を見られて後頭部に手が回ったと思ったら深いキスをされていた。
「んっ……んぅ……」
ぎゅっと目を閉じる緋縁。角度を変えて更にキスをしてくる皇輝。
チュク……
唇を離し、また見つめてくる。皇輝の両手が緋縁の髪をすくい上げながら頭を包み込んで来る。視線から逃れられない。
「緋縁…ちゅっ…緋縁…ぺろっ…」
名前を呼びながらキスや唇を舐めてくる。
「もう逃げられないな、鬼ごっこはお終いだ」
「あ……」
「可愛い…よく見せろ、見ない間にまた綺麗になってるな」
「そ、そんな…」
(苦しい……胸が……)
緋縁の目に涙が溜まる。皇輝は目元にキスを落とし
「逃がさねぇって絶対に」
「コ、コウ……」
皇輝は緋縁の耳に唇を近づけて囁くように言う。
「学校では、会長」
「ひゃっ!」
ビクンっと肩をすぼめてしまう。
「可愛い……」
ガシッと肩を持たれ、グイグイと押される。何事かと思っていると、後ろによろよろと押されるまま歩くことになる。足にソファーが当たる。更に体重を掛けられるとボスンとソファーに尻もちを着くみたいに座っていた。そして更にのしかかられるとソファーに押し倒されていた。
「あ、コウ…あ、か、かい会長……」
皇輝に面と向かって会長と呼ぶのが何故か恥ずかしい。皇輝が緋縁の顔に掛かっていた髪を顔が見えるように横に流してはらう。緋縁の顔の横に皇輝は肘をつきぐっと顔同士を近づける。緋縁はここまで上手く対応出来ず、押されてしまっている。
「可愛いことばっかり言って、だから襲われるんだよ。分かってるか?緋縁」
皇輝の口から緋縁と呼ばれる。むず痒い感じがしてたまらない。ソファーで横になっていると涙が目尻から流れる。胸がいっぱいで、何でいっぱいか分からないけど、苦しくて、どうしていいか分からなくて、言葉が何も出てこない。皇輝の顔を見ると、泣きたくなる。
「緋縁、心も俺のものにするって言ったよな?」
(言われた……
そんなこと言っていた……覚えてる)
「逃げても捕まえる、逃がさない、離さない、全部、全部俺のもんなんだよ」
「コ……ウ…」
「落ちろよ、俺に、全部、何もかも俺んとこに落ちて来いよ……この半年……俺がどんな想いで……」
皇輝の顔が苦しげに歪む、緋縁の眉は情けなく下がり、蒸気した顔で泣いている。皇輝の言葉が、想いが重くのしかかって来る。半年前より、緋縁の想像よりずっとずっと強い想いで伝えてくる。
緋縁は制服のズボンをぎゅっと握りしめていた。
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