この気持ちに気づくまで

猫谷 一禾

文字の大きさ
27 / 62
新たな出会いと再会

《27》

しおりを挟む


 4時間目が終わり、鈴井に言われた通りに職員室に向かう。井上と佐藤には先に食堂に行ってもらった。長く掛からないだろうが付き合ってもらうのは気が引ける。

「失礼します。鈴井先生は…」
「お、来た来た。こっちこっち」
「はい、あのー…それで…」
「あぁ悪い悪い、これを届けて欲しいんだ。外部生に持ち回りで頼んでるんだけどな、校舎に慣れてもらうって事で、はい」
「はぁ…これをどこに…」
「あー今回は、生徒会室だ」
「え"!!」
「いやいや、今は生徒会室誰も居ないから机の上に置いておいてくれれば大丈夫だから。じゃ頼んだ」
「え、えぇ~せ、先生…」
「はい、行った行った、俺はこれから昼だから」
「ちょっ…先生…」

鈴井は任務終了とばかりにサッサっと職員室を後にしてしまった。

(う、うそだろ~…)

手に持ったプリント数枚を恨めしく見つめる。

(ぱっと行って、ぱっと帰る……大丈夫、俺は出来るやつだ…そうだ、今は誰も居ないって先生が……早く行かないと誰か来るかも…)

サーっと頭が冷えていく、急いで職員室を出て生徒会室に向かう。

(大丈夫だよな…これって先生からの頼み事だし、親衛隊の人達にも大丈夫だよな…)

自然と早歩きになってしまう。緋縁たち1年は2階、職員室は1階、そして生徒会室は最上階の5階にある。生徒会室の前に着く頃には息が軽く上がっていた。ここまでは順調に来れた、生徒会室の前までいい感じだ。キョロキョロと周りを見回す。誰も居ないと言った鈴井の言葉は本当みたいだった。

(ふぅ~~よし、さっと置いてすぐに食堂に行こう。昼が俺を呼んでいる…よし)


コンコンコン


念の為ノックをする、返事がない。ドキドキと早くなる心臓。緊張して震える手をグーパーと握ったり開いたりする。覚悟を決めてドアに手をかける。


スー


横扉を開けて生徒会室の中を覗く、まだ開けただけで、廊下から見える開けたドアの範囲だけ中の様子が分かる。誰もいない、思い切って生徒会室の敷地に足を踏み入れる。手に持っているプリントを目の前の机に置けばミッションコンプリートだ。5歩ほど中に入らないと行けないのが嫌な感じだ。

「し、失礼しまーす」

囁くように小声で言う、お化け屋敷に入る心境に近かった。

パサッ

プリントを置けた、


グイッッ!


突然強い力で後ろから誰かに引き寄せられた。背中に感じる他人の体温、あっと思った時には両腕と胸の前に回っている誰かの腕。ぎゅうっと抱き込められて、最近ではやっとつけ慣れてきたメガネが顔から奪われ床にカシャンと音を立てて落ちた。メガネを視線で追いかけた瞬間おでこに熱い掌の感触。そのまま前髪の生え際からぐしゃっと髪を引っ張られ上を向かせられる。いつかと同じだと感じたとき


「見~つけた……」


心底楽しそうな顔の生徒会長と目が合った。

一瞬の出来事だったのか、スローモーションの中で起きたのか、緋縁は皇輝の腕の中にいた。

「多咲緋縁、サキ……」

目を見開き呼吸を忘れた緋縁は皇輝の瞳を見つめ続け、逸らすことが出来なかった。
何か言葉を発しようと唇が動くがそれだけだった。

「上手く隠れてたな、サキ。髪が伸びて…
ほら、ここ……夜に会った時の、これ」

里葉の助言通りバンソーコーで隠していた、皇輝の所有印、髪を掴んでいた手を離す、ハラハラっと髪が顔に落ちてくる。その手でビリッと簡単に剥がされてしまう。

「まだ、ちゃんと残ってる。俺のものって印」
「はっ……」

苦しくて息を吐き出す、と同時に身体が暑くなる。

俺のモノ

この言葉は胸がザワつく、噛み付かれた痕を指でなぞられる。ゾワゾワっと背中に何かが走る。
抱き込められたままもう一度前髪を上げられる。

「サキ……緋縁……ひより……可愛い名前」

身体が固まり動けない緋縁は皇輝に、簡単にキスを許してしまう。皇輝はうっとりとした表情で軽く唇同士をつける。一度離れてじっくりと顔を見られて後頭部に手が回ったと思ったら深いキスをされていた。

「んっ……んぅ……」

ぎゅっと目を閉じる緋縁。角度を変えて更にキスをしてくる皇輝。

チュク……

唇を離し、また見つめてくる。皇輝の両手が緋縁の髪をすくい上げながら頭を包み込んで来る。視線から逃れられない。

「緋縁…ちゅっ…緋縁…ぺろっ…」

名前を呼びながらキスや唇を舐めてくる。

「もう逃げられないな、鬼ごっこはお終いだ」
「あ……」
「可愛い…よく見せろ、見ない間にまた綺麗になってるな」
「そ、そんな…」

(苦しい……胸が……)

緋縁の目に涙が溜まる。皇輝は目元にキスを落とし

「逃がさねぇって絶対に」
「コ、コウ……」

皇輝は緋縁の耳に唇を近づけて囁くように言う。

「学校では、会長」
「ひゃっ!」

ビクンっと肩をすぼめてしまう。

「可愛い……」

ガシッと肩を持たれ、グイグイと押される。何事かと思っていると、後ろによろよろと押されるまま歩くことになる。足にソファーが当たる。更に体重を掛けられるとボスンとソファーに尻もちを着くみたいに座っていた。そして更にのしかかられるとソファーに押し倒されていた。

「あ、コウ…あ、か、かい会長……」

皇輝に面と向かって会長と呼ぶのが何故か恥ずかしい。皇輝が緋縁の顔に掛かっていた髪を顔が見えるように横に流してはらう。緋縁の顔の横に皇輝は肘をつきぐっと顔同士を近づける。緋縁はここまで上手く対応出来ず、押されてしまっている。

「可愛いことばっかり言って、だから襲われるんだよ。分かってるか?緋縁」

皇輝の口から緋縁と呼ばれる。むず痒い感じがしてたまらない。ソファーで横になっていると涙が目尻から流れる。胸がいっぱいで、何でいっぱいか分からないけど、苦しくて、どうしていいか分からなくて、言葉が何も出てこない。皇輝の顔を見ると、泣きたくなる。

「緋縁、心も俺のものにするって言ったよな?」

(言われた……
そんなこと言っていた……覚えてる)

「逃げても捕まえる、逃がさない、離さない、全部、全部俺のもんなんだよ」
「コ……ウ…」
「落ちろよ、俺に、全部、何もかも俺んとこに落ちて来いよ……この半年……俺がどんな想いで……」

皇輝の顔が苦しげに歪む、緋縁の眉は情けなく下がり、蒸気した顔で泣いている。皇輝の言葉が、想いが重くのしかかって来る。半年前より、緋縁の想像よりずっとずっと強い想いで伝えてくる。

緋縁は制服のズボンをぎゅっと握りしめていた。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。

処理中です...