この気持ちに気づくまで

猫谷 一禾

文字の大きさ
31 / 62
さらされた素顔

《31》

しおりを挟む


 そして、緋縁にとっては運命の次の日。変わったのは髪型とメガネを掛けていないことだけだ。大したことないと自分に言い聞かせるが、登校中、周りからの視線が気になる。確実にいつもより見られている気がする。自然とうつむき加減になる緋縁だった。

(そんなに見なくてよくない?なんか、恥ずいっ)

教室に着いて少しほっとする。今日もこの後外では毎朝恒例のあの行事が行われるのだろうか、と窓の外が気になった。

(森先輩、今日もキツくあたられちゃうのかな…)

「おはよう多咲くん、ちゃんと居た」
「おはよ、来るよ、俺真面目だもん」

(もんって…狙ってやってないんだよな、これで)

井上が声をかけた時、教室の空気が動いた気がした。クラスメイトがそれとなく緋縁のことを見ていたのだ。

「おはよー!聞いたぁ?なんか1年の階がザワついてる。すっげぇ可愛い子がいたんだってー」

と、佐藤がかなりの声量で言いながら教室に入って来た。

「ぅわっ!多咲のことかよ!髪切ったんだ~……
いや~一回しか見たことなかったけど、やっぱ可愛いな」

緋縁は肘を机につき、頭を抱えて項垂れる。

「だから、俺なんて大したことないってば。もぅ俺恥ずかしくて顔上げて歩けないよ~」
「おい井上、これ本気で言ってんのか?」
「多咲くん自己評価低いから…」
「誰かちゃんと教えた方が良いんじゃないのか?」
「頑ななんだよね~何故か…」

(あの生徒会長も引っかけてるってのに)

「あのさ、多咲って中学共学だろ?しかもその顔晒しまくってたんだろ…どうだったの?」
「どうって…普通だけど?」
「モテたのかって聞いてんの!」
「えぇ……そんな、驚くほどモテてないよ。普通だって、普通」
「いや、お前の考える普通と俺の考える普通は違うはず。何せ俺達は中学から男子校だからなっ」

なぜか威張って主張する佐藤。

「本当に…告白とか…2・3人だって…」
「男子からは?共学でもこんだけ可愛かったら男子だってほっとかないでしょ~」
「……同じ学校の人からは…男子は、1人だけ。後は女子からだよ……」

ボソボソと答えにくそうに言う緋縁に井上の目がキラリと光る。

「多咲くん、その言い方は怪しいよ」
「え"俺の話はもぅよくない?」
「多咲……もう全部吐いちまいなっ」
「なんだよそのノリ…言うよ、言えばいいんだろ!違う学校の奴と大学生と知らないおっさんだよ!これでいい!?」
「ほぇ~すげぇな…流石というか」
「うるさいなっ俺の理想とは違うんだからカウントに入らないんだよ!」

(なんで男に告られた事、こんなに追求されなきゃいけないんだよ)

「多咲くん、外でそれなら…ここの学校じゃ比じゃないと思う」
「俺も俺も~」
「真面目に気を付けな」

またしても、怖い忠告を受ける緋縁だった。


 昼休み、教室の入口に普段見かけない人がいた。

「多咲ーお客さん」

声のほうを見やると緋縁は驚いた。予想外の人が立っていたのだ。パタパタとその人の前まで急いでいく。

「森先輩、どうしたんですか?」
「……初めましてぇ、僕ぅ森里葉っていいますぅ。えっと~多咲緋縁くんに、お話があって来たんだけどぉ、良いかな?」
「あ、はい」

(そうだった、面識ない事にするんだ)

「こっち、来てくれるぅ?」

比較的人が少ない場所に移動して、里葉がおもむろに話し出す。先程までのニコニコ顔ではなくなっている。

「多咲くん、何目立ってんの?」
「え、なんでって…それは…」
「僕めんどくさいことヤダって言ったよね…」
「すいません…」

悪い事をしていないが条件反射のように謝ってしまう。

「今日僕が君のところに来たのは、親衛隊としてだよ。注意してこいって言われてさ…」
「えっ注意……」

(まさか、昨日の生徒会室のことバレた!?)

「いきなりイメチェンして、生徒会の皆様の気を引くつもりじゃないのかキーって」

淡々と話す里葉、喋り方と内容が合っていない。

「え、森先輩?」
「はぁ……僕は使いパシリ。伝言言って来いってあのヒステリーが……もぉ……ほんと、めんどくさい……あぁ嫌になってくる……」
「あ、あの先輩……」
「どーしても同類の匂いがして気が緩むんだよ多咲くんは……君、このままいけば確実に制裁対象だよ。隊長、お祭り騒ぎだよ」
「あの、先輩って親衛隊ですよね…なんで」
「あぁ…もういいか。僕のこれはね、カモフラージュだから…。だから、あの集団に入ってるの。僕なりの処世術だよ。僕非力だからさ…嫌な目にあいたくないの。知ってる?生徒会の人達が嫌いなタイプ」
「是非とも聞かせてください」
「えぇ~どぅしよっかなぁ~……ってタイプ」
「先輩、切り替えが凄い……プロですね」
「僕のこれは5年目に入るからね」

ほんの少し自慢げに言う里葉。

「でもさ、最近親衛隊の中でもちょっと居心地悪くなっちゃってさ…対策を考えてるところ…って僕のことはいいから、多咲くんだよ。何か対策取らないと嫌な目に合うよ。隊長、鼻息荒かったもん」
「ヤダな……俺、どうしよう」
「キスマークの人は?とりあえず付き合っちゃえばいいじゃん。生徒会に興味ありませーんって態度に出せばいいじゃん」

(出来たらそうしたい!)

「それが…どうしても出来ないんです」
「ふーん、代役たてれば?君くらいならホイホイ誰でも付いてくるでしょ」
「いや……そういうのはちょっと……」

(それしたら…コウが黙ってなさそうだし…)

「うーん…はっきりしないね。まぁいいんだけどさ、僕は注意したし。でもね多咲くん、そんなに甘っちょろい考えだと痛い目に合うよ、本当に。きゃっきゃっ言ってる子達を束ねてる人って想像以上に狡猾だから……僕が言えるのはここまでだよ。いい方法が見つかるといいね」
「あり…が…とう…ございます」
「だいぶ、サービスしたよ僕。それじゃあ」

1人残された緋縁は心細さを感じていた。自分を取り巻く環境がジワリジワリと変化している。何かが迫っている、そう予感させた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。

処理中です...