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認めたくないきもち
《34》
しおりを挟む月曜日に生徒会室での一件、皇輝に見つかってしまってから残りの数日、その週はやけに静かに過ぎていった。週末になると緋縁はぐちゃぐちゃの心をどうにかしたくて、またゲームセンターのジムに来ていた。あれから連絡先を聞く間もなく別れてしまった唯一ともう一度会いたかった。
「待ってたよヨリ、来ると思った」
「イチ……俺、俺……」
「うんうん、今日はさ、ゆっくり話そうよ。いい所紹介して貰ったんだ、行こう?」
「ありがとう……」
唯一に連れらてれ一軒のバーに来た。普段なら絶対に入らないような所だ。
「イチ…大丈夫な所なの?」
「うん、実はガードとか、ハクってチームがよく居る場所なんだって。ここだと安全だからって」
「イチ、ガードの総長と付き合ってるの?」
「!?いや、付き合っては……ない、うん」
「俺びっくりした、この間」
「それはお互い様だよ、とりあえず入ろ」
カランカランと年季の入ったドアを開けると鐘の音がする。中はカウンターとソファ席が2つ、テーブルとイスが4セットある、そこそこ広いバーだった。どうやら、大人なカッコいい人達の集まる場所では無く、ヤンチャな青年たちのたまり場になっているようだ。
「ゆいちゃん!こっちだよ~」
彗が手を振ってくる。
「イチ、いるじゃん総長さん。やっぱり…」
「だって、絡まれたりするといけないからって……うるさいんだよ、あの人!」
2人揃って彼のいるソファー席に座る。店内は少し暑いのでいつもの通りフードを被った2人はそれを取る。
「今日はゆっくり話したいんでしょ?俺は遠慮するからじっくり話したらいいよ。俺はカウンターにいるから」
さっと行ってしまう。今日はあっさりしている。
周りがヒソヒソと緋縁と唯一を見て話をしているが、2人は気が付かない。
「行っちゃった…いいの?イチは」
「いいの、そーゆー約束なの。それより、ヨリの話だよ。バレちゃったんでしょ?月曜日に」
「え!?なんで知ってんの?イチってエスパー?もしくはうちの学校にスパイでもいるの?」
「ヨリが逃げたあと、黒龍の総長さんがひよりって言ってたよ。バッチリ知ってるじゃん」
「あ、あぁ…うん。そう、そうなんだよね…先週のあれも何か…嵌められたっぽいんだよね…」
「うわっ…そうとう粘着質だね…」
2人が座っているソファー席に近づく人がいる。そしてそのまま横並びで座っている2人の前に座った。びっくりした2人はその人の顔を見る。さらに驚いたのは緋縁だった。
「え?え?え……森先輩!」
「やぁ多咲くん、ここで会えるなんてね」
「え?ヨリ、里葉さん知ってるの?」
「え!イチも?森先輩はうちの学校の人だよ」
「ええー!世間って狭い、教えて下さいよ~」
「君たち2人で双黒かぁ…なるほどねぇふ~ん」
「森先輩は何でここに居るんですか?」
「僕はね、人に会いに来たの…ねぇその森先輩ってここだとちょっとやなんだけど」
「じゃ、じゃあ…里葉さん?」
「それでいいや、僕も緋縁くんって呼ぶから」
緋縁は何故か照れてしまう。今日の里葉は色っぽかった。
「それで?待ってる間、僕も会話に参加していい?僕も緋縁くんに話さないと行けないことあるから」
「俺は、大丈夫です」「僕もです!」
揃って答える。
「じゃあ、ヨリの悩みを聞こうか!」
「改まって言われると…」
「悩みって?キスマークの人のこと?」
「見られちゃったの?ヨリ。でも確かに…がぶって感じだったもんね…」
「辞めて……掘り起こさないで…」
「そんで?気になってたんだけど、どうやって接触したの?」
「あーいきなり声かけられて…」
「そんで家に着いてったの?随分不用心だね…」
「……なんて言ったらいいか……ん~」
「それってどんな人か聞いていい?」
「あー…黒龍の……総長やってる…」
「え!あー……うちの生徒会長か……だからあんなに、なるほど…うん」
「黒龍の総長さんが生徒会長やってるの知ってるんですか?」
唯一が聞く。そこそこ知られているようだ。
「あー僕はね、ここにたまーに来てるから」
「そうなんですね。で、なんて言われて着いてっちゃったの?甘い言葉に誘われちゃったの?」
「違うんだよ……えと~気づいたら家にいたって」
「は?どゆこと?分かんない。ちゃんと話して」
「うー…声かけられて、ワタワタしてるうちに……首締められて…そんで意識がないうちに?」
「え?…………はぁ?……なにそれ…え?」
「拉致されたの?緋縁くん」
「そう…何ですかね?」
「えーー!何それ!ヨリ、それもっと怒るとこでしょ!!何それ……信じらんない。ムカつく!」
「はー……それは……うん。凄いね……流石と言うべきか…やりそうだと言うべきか…」
「俺だって、腹立ったけど…でも…そんときはまだ中3だったし…総長なんて怖かったし…勢いに押されて…付き合うことに…これ、無効だよね!?」
「う~~ん…ヨリの言い分も分かる、腹立つし、怖いよね…怖い目にあったの?」
「う"っ……怖い目に~~……あ"ー…う…」
だんだんと緋縁の顔が赤くなって困惑の表情になる。しどろもどろさと、あっちこっちを彷徨う視線が全てを物語っていた。
「うん、ヨリの顔見てたら分かった…暴力とかじゃ無いんだね…でもそれ…なかなか最低だよね…」
「そう、最低なんだよ。許せない」
「緋縁くんの根本にあるのは許せない気持ちなんだね…で、日高皇輝のことは?好きなの?嫌いなの?そこら辺はどうなの?」
「嫌い……です」
「日高皇輝が嫌いなの?許せないから嫌い?それとも、やり方が嫌い?そんなことする人だから嫌いなのかな?」
「あ……それは…考えたこと無かった…」
「確かに、褒められたやり方じゃないよね。だけどさ、あんなキスマーク付けられるほど隙を見せちゃってるんだよね…それってさ…大嫌いな人前だと無いことじゃない?」
「里葉さん……隙があったら嫌いじゃないってこと?隙を見せる方が悪いの?」
唯一がどこか必死な雰囲気で聞く。
「ん~僕の経験上、大嫌いな人の前って身構えちゃって警戒するなって」
「大嫌いな……人…元々、カッコイイなって思ってた所があって……俺」
ポツリと呟く緋縁。
「許せなくって全部嫌で拒否してるなら、それは緋縁くんの自由だし良いと思うよ。だけどね、もし少しでも気になってて、その気持ちに気づかないフリしてるだけで後悔するなら、自分の気持ちに素直になった方がいいんじゃないのかなって」
「里葉さん……俺…実はちゃんと人を好きになった事がなくて…分かんないんです」
「ヨリ……」
「そっかぁ。うん、急に押せ押せで来たら戸惑うよね……そうだなぁ…じゃあ、他の人に取られちゃっても良いか想像したら?例えば、会長が唯一くんに好き好き言ってたら?どう?」
「え……」
緋縁は唯一の顔をじっと見てしまう。
(あ、ちょっと嫌かも……)
「緋縁くんがされた事、他の子に同じようにしてるって思ったらどうだろう?」
難しい顔で悩み出す2人。唯一はいつの間にか自分に置き換えて考えていた。
「あの会長だからね、ゆっくり悩むのも良いけど、引く手数多だからね。後悔しない内につなぎ止めとくなり、本音をぶつけるなりしたらどうかな?」
「本音……ですか」
「そう、何が許せないのかって。どうしても一緒にいるのが嫌なのかどうか。シンプルに考えるんだよ。」
不思議と里葉の言葉は緋縁と唯一の心に素直に響いた。
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