54 / 62
番外編
唯一と彗の物語 3
しおりを挟む季節は冬に変わり受験シーズン。唯一は私立高校の推薦を受けるために森目高等学校(もりもく)に来ていた。マフラーに顔を埋めて冷たい空気から少しでも肌を出さないようにして歩いていた。
受付を済ませ、指定された教室で筆記試験を受ける。その後面接をして終了という流れだった。唯一は筆記試験まで終わらせるとトイレに行って、教室に戻る前に廊下の窓から外を眺めて気を紛らわせていた。
「あ、もしかして…ユイちゃん?」
聞いたことのある声が聞こえた。振り向いてみるとそこには知っている顔がいた。
「え……ナ、ナミさん?なんで……」
「やっぱり!ユイちゃん!!もしかして、ここ受験すんの?」
「え、はい……ナナミさん……この学校なんですか?」
「そーそー、ほら制服~。今日は手伝いでいるんだけど…マジ、ラッキー」
それは、実にスマホを落とされてから初の再会であった。
「ユイちゃんがこの学校来てくれたら、俺高校来るの楽しくなるよ」
(なんで再会が今!?これから面接なのに……ここで緊張解してたのに…)
「実は俺、来年度から生徒会長やることになってね。何か頑張れちゃいそう」
「ナナミさん、3年生になるんですか?」
「ううん、今1年だから来年度は2年だよ」
「え!1歳だけしか年上じゃないんですか?!」
「俺のことどう思ってたの……何?貫禄でも出てた?」
「いや……大人っぽいから……」
「褒め言葉と取ってくよ」
「あの……僕これから面接なんです。だから…もういいですか?」
「ごめんね、落ち着きたいよね……ふっ俺といると心がザワついちゃうってことね…ふっ」
(いや、怒りが蘇ってくるからさ…イラつくんだよね…心穏やかに面接したいんだけどな)
「まぁどうせ…面接の誘導係だから、後で会うよ」
「げっ……」
(マジかぁ…)
「え?げって、言った?げって、言ったの?」
「言ってません。それでは」
唯一は教室へと入っていく。
「え~……俺……また拒否られたのぉ……」
どちらかと言うと好意的に接してきたつもりだったナナミは、こんなに邪険に扱われたことが少なからずショックだった。
(ユイちゃん相手だと全然、上手くいかないわ~)
しかし、来年の4月からは同じ学校に通える。チャンスはいくらでもある、と考えを切り替えた。不屈のメンタルを持つ男、それがナナミであった。
「次、河村唯一さん。着いてきて下さい」
「はい」
教室を出て廊下を歩いていく。ナナミの背中を追いかけて目的の教室まで階段を登っていく。ひた、と止まり振り向いて
「ユイちゃん、ゆいちって言うんだね。何かピッタリで可愛いね。俺は七海彗だよ、覚えてね」
「苗字、だったんですね……」
(何それ、僕的に刺さるんですけど……名前っぽい苗字とか、ギャップヒーローとか……いやヒーローではないけどさ…)
「面接、頑張ってね」
背中をポンポンと叩かれ、最後は撫でられた。そして仕事に戻って行った七海。
(えぇ……あの人、総長が会長って本当に実在するんだ…どんだけトップが好きなんだろ…)
はぁ。ため息をつく
(これ、推薦だから…学校今さら変えられないよ)
唯一は高校入学までの残りの日数を複雑な思いで、翌年の4月までのカレンダーを見て過ごした。
11
あなたにおすすめの小説
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
大嫌いなこの世界で
十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。
豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。
昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、
母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。
そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる