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番外編
修次の困惑
しおりを挟む鈴木修次、生徒会唯一の1年生。役職は庶務だが要は雑用係である。中等部の頃も生徒会に入っていて、その流れで声が掛かった。曲者揃いの生徒会に入り、対等とは言えないがその中で渡っていけている辺り彼もまた常人ではなかった。
「はぁ今日の会長の機嫌はどうだろぅなぁ…」
最近の生徒会長の機嫌は1人の生徒に掛かっていた。隣のクラスの多咲緋縁、本人は知らないがS組ではアイドルとして知られている。とにかく可愛いのだ、しかもこの学園に染まっていない感じが良いらしい。
「多咲……会長の機嫌取ってくれてるかなぁ」
生徒会室の雰囲気は会長の機嫌に掛かっている。一番の下っ端である修次がまともに被害を被る。
スー
生徒会室のドアを開ける、大体修次が一番である。
昼休みに使うことの多い生徒会室は放課後鍵が空いている。なので気が付かなかった、そこに人がいるとは…
「ぅおっ!!……びびった……誰?」
「……俺は居ないと思ってくれ…」
「多咲?何やってんの……」
「隠れてるんだよ、見てわかるだろ…」
「マジかよ……勘弁してよ……え、まさかと思うけどさ…誰から隠れてるわけ?」
「決まってんじゃん…会長様だよ……」
「おーいー……辞めてくれ……マジで辞めて」
「何だよ……迷惑かけないよ……」
(いや、既に迷惑だわ……)
緋縁はドアの隅にへばりついて座り込んでいた。息を殺してじっとしていた様だ。
「つかさ、ここに来るじゃん会長。馬鹿なの?」
「灯台もと暗しだよ」
「ごめん……それでもお前の行動は理解出来ない」
「今頃、会長様は俺を探しているはずなんだ…まさかここに居るとは思わないって、もう少ししたら違
うとこ行くからさ…ちょっと目をつぶってよ」
「いやいやいや…頼むから会長の所に行ってよ……機嫌悪くしないでよ……何があったんだよぉ……」
「……コウはさ…ちょっと……」
言い淀んで下を向く緋縁、その顔はほんのり赤くなり唇が少し尖っていた。拗ねてます、そんな顔だった。
(辞めて、マジ辞めて。可愛い顔しないで)
「嫉妬深いって言うのかな……ギュウギュウに締め付けられてる気がしてくるんだよな……重い」
「いや、こんな所見られでもしたらさ、俺は殺されるからさ…会長の所に行って痴話喧嘩してよ」
「違うって!痴話喧嘩じゃない!俺の言い分、全然聞いてくんないからストライキ!!」
「いや、何のだよ……」
「従順な……こ、こ、恋人の?」
赤くなった顔で肩を竦めて拗ねた表情、探るような上目遣いで言った緋縁。2人の間の時が止まった気がした。そして地を這うような声が聞こえる。
「ほ~ぅ……ストライキ……」
「ひっっ!!」
「か、か、か、か、かか会……長…」
2人の後ろでいつもの様に胸の前で腕を組んだお決まりのポーズを取っている会長様、日高皇輝。
「緋縁は今までも従順な恋人だったと?しかもそれをストライキィ?」
「な、何だよっ!俺だって文句くらい言うよ!嫌なものは嫌なんだよ!」
「多咲~~~!なんて事をっ」
「だって、こいつ!俺に部屋帰るなって、移動して来いって言うんだよ。そんなの横暴だっ!!」
「多咲バっ…部屋くらい移動しろよっ!」
「何でだよ!!俺から自由を奪うなっ」
「緋縁、とりあえず寮に行って話そうか…」
「それだとなし崩しにする気だろっ。分かってるんだからなっ!」
「多咲、多咲、寮に行けっ」
緋縁はしゃがんだまま修次を盾にして後ろに隠れた、緋縁の手が修次の足にしがみついている。
「うわっ…た、多咲、ふざけんなっ!辞めろっ」
「やだ」
「緋縁……そんなことしても無駄だ」
(ほーらーほらほらほらぁ!超怒ってんじゃん!)
修次は保身に走った。しがみつかれている足はそのままに、体を横にずらす。
「あ、隠せよっ」
皇輝がしゃがみこみ、目線を緋縁に合わせる。そして修次の足にしがみついている手首を持って引き剥がし一緒に立たせる。勢いのまま手首を背中に回し肩をドアに押し付ける。
「いった……痛い…手首、か、肩……いた……」
「緋縁……何だって?」
修次は固唾を呑んで目の前の状況を見つめ続ける。会長が総長になっている、恋人の手首を背中に回し上げ体をドアに押し付けている。静かに怒っている時が一番怖いのだ。皇輝がドアに手を付き緋縁の耳に顔を近づけて囁いている。
「逃げ癖……治らねぇな……緋縁?」
「ひっぃ……」
「そこまで嫌なんだ……俺と同じ部屋」
「…………だって……コウと一緒だと……」
「ん?なに……言ってみろ」
「だって!……」
痛みに眉間にシワが寄っていた緋縁が急に眉を下げ視線がさまよい出す。唇をぎゅうとむすび少し開けて、と繰り返す。
「言え」
皇輝の低い一声。
「だってさ……コウ……一緒にいるとさ……すぐに……手……出して……来るし…………俺、の……さ……心臓…………が…もたない…し……」
目線を下に下げてボソボソと喋り出す。
「…………それに……ずっと一緒って……はず、恥ずかしいし……う~~悪いかっ!!てか、この体制なくない!?酷い!!」
我慢できなくて最後は喧嘩腰になってしまった。
キッと緋縁的には睨みつけたはずだったが、皇輝からすると”今すぐ食べて”と言われているようだった。
「分かった」
そう一言告げると緋縁の体をくるりと自分の方に向けて唐突にキスをした。
「!!!んっっ!?んぅ~~」
必死で抵抗する緋縁、先程までの雰囲気から一変して熱烈なキスを仕掛けて来た。
「やめ………んっ……はっ……ヤダって…んっ」
(いい加減頭くるっ)
修次は頭が真白になった。一蓮のやり取りは何なのだ…自分はいったい何を見せられているのか。
(見られてる、見られてるじゃん!!)
「んんんっ~~~」
「んっ……相変わらず煩いやつだ」
「なに………すんだよぅ……」
ズルズルと再びしゃがみ込んでしまう緋縁、キスで腰砕けになってしまったのだ。
「緋縁の問題は問題ではない。気にする必要はない、いや………むしろ可愛いだけだ」
『っ!!??』
当然のように言い放つ皇輝に驚愕の余り目を見開いた後、呆然とする修次と緋縁。
「あれ?緋縁くん久しぶりだね。来てたの?」
「はっ弥菜さん……俺、今意識飛んでた」
「修次、今日もあの犬来ると思うから追っ払っといてね。よろしく」
「弥菜さん……ちょっとは相手してやっても…」
「あ?なんか言った?この口、今なんか言った?」
「何も言ってません!追っ払います!」
いつの間にか緋縁は皇輝に腰を支えられ抱き込まれるようにして立っていた。
「俺、今日はパス。連絡すんなよ」
「あーはいはい」
「え"!うそ…了承しないで下さい!」
「はい、頑張ってね緋縁くん」
生易しい笑顔で手を振る弥菜は全てお見通しだと言わんばかりだ。
「頑張れって……弥菜さん……」
修次は少しだけ緋縁が不憫に思えたが、生徒会室の平穏のために文字通り人肌脱いでもらおう緋縁と目線を合わせて頷いておく。
今日も一悶着あったが、無事に生徒会室の平和は守られた。1人の犠牲者によって…
「薄情者~~~!!」
犠牲者の叫び声だけが
だんだんと小さくなっていった
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