この気持ちに気づくまで

猫谷 一禾

文字の大きさ
60 / 62
番外編

修次の困惑

しおりを挟む


 鈴木修次、生徒会唯一の1年生。役職は庶務だが要は雑用係である。中等部の頃も生徒会に入っていて、その流れで声が掛かった。曲者揃いの生徒会に入り、対等とは言えないがその中で渡っていけている辺り彼もまた常人ではなかった。

「はぁ今日の会長の機嫌はどうだろぅなぁ…」

最近の生徒会長の機嫌は1人の生徒に掛かっていた。隣のクラスの多咲緋縁、本人は知らないがS組ではアイドルとして知られている。とにかく可愛いのだ、しかもこの学園に染まっていない感じが良いらしい。

「多咲……会長の機嫌取ってくれてるかなぁ」

生徒会室の雰囲気は会長の機嫌に掛かっている。一番の下っ端である修次がまともに被害を被る。

スー

生徒会室のドアを開ける、大体修次が一番である。
昼休みに使うことの多い生徒会室は放課後鍵が空いている。なので気が付かなかった、そこに人がいるとは…

「ぅおっ!!……びびった……誰?」
「……俺は居ないと思ってくれ…」
「多咲?何やってんの……」
「隠れてるんだよ、見てわかるだろ…」
「マジかよ……勘弁してよ……え、まさかと思うけどさ…誰から隠れてるわけ?」
「決まってんじゃん…会長様だよ……」
「おーいー……辞めてくれ……マジで辞めて」
「何だよ……迷惑かけないよ……」

(いや、既に迷惑だわ……)

緋縁はドアの隅にへばりついて座り込んでいた。息を殺してじっとしていた様だ。

「つかさ、ここに来るじゃん会長。馬鹿なの?」
「灯台もと暗しだよ」
「ごめん……それでもお前の行動は理解出来ない」
「今頃、会長様は俺を探しているはずなんだ…まさかここに居るとは思わないって、もう少ししたら違
うとこ行くからさ…ちょっと目をつぶってよ」
「いやいやいや…頼むから会長の所に行ってよ……機嫌悪くしないでよ……何があったんだよぉ……」
「……コウはさ…ちょっと……」

言い淀んで下を向く緋縁、その顔はほんのり赤くなり唇が少し尖っていた。拗ねてます、そんな顔だった。

(辞めて、マジ辞めて。可愛い顔しないで)

「嫉妬深いって言うのかな……ギュウギュウに締め付けられてる気がしてくるんだよな……重い」
「いや、こんな所見られでもしたらさ、俺は殺されるからさ…会長の所に行って痴話喧嘩してよ」
「違うって!痴話喧嘩じゃない!俺の言い分、全然聞いてくんないからストライキ!!」
「いや、何のだよ……」
「従順な……こ、こ、恋人の?」

赤くなった顔で肩を竦めて拗ねた表情、探るような上目遣いで言った緋縁。2人の間の時が止まった気がした。そして地を這うような声が聞こえる。

「ほ~ぅ……ストライキ……」
「ひっっ!!」
「か、か、か、か、かか会……長…」

2人の後ろでいつもの様に胸の前で腕を組んだお決まりのポーズを取っている会長様、日高皇輝。

「緋縁は今までも従順な恋人だったと?しかもそれをストライキィ?」
「な、何だよっ!俺だって文句くらい言うよ!嫌なものは嫌なんだよ!」
「多咲~~~!なんて事をっ」
「だって、こいつ!俺に部屋帰るなって、移動して来いって言うんだよ。そんなの横暴だっ!!」
「多咲バっ…部屋くらい移動しろよっ!」
「何でだよ!!俺から自由を奪うなっ」
「緋縁、とりあえず寮に行って話そうか…」
「それだとなし崩しにする気だろっ。分かってるんだからなっ!」
「多咲、多咲、寮に行けっ」

緋縁はしゃがんだまま修次を盾にして後ろに隠れた、緋縁の手が修次の足にしがみついている。

「うわっ…た、多咲、ふざけんなっ!辞めろっ」
「やだ」
「緋縁……そんなことしても無駄だ」

(ほーらーほらほらほらぁ!超怒ってんじゃん!)

修次は保身に走った。しがみつかれている足はそのままに、体を横にずらす。

「あ、隠せよっ」

皇輝がしゃがみこみ、目線を緋縁に合わせる。そして修次の足にしがみついている手首を持って引き剥がし一緒に立たせる。勢いのまま手首を背中に回し肩をドアに押し付ける。

「いった……痛い…手首、か、肩……いた……」
「緋縁……何だって?」

修次は固唾を呑んで目の前の状況を見つめ続ける。会長が総長になっている、恋人の手首を背中に回し上げ体をドアに押し付けている。静かに怒っている時が一番怖いのだ。皇輝がドアに手を付き緋縁の耳に顔を近づけて囁いている。

「逃げ癖……治らねぇな……緋縁?」
「ひっぃ……」
「そこまで嫌なんだ……俺と同じ部屋」
「…………だって……コウと一緒だと……」
「ん?なに……言ってみろ」
「だって!……」

痛みに眉間にシワが寄っていた緋縁が急に眉を下げ視線がさまよい出す。唇をぎゅうとむすび少し開けて、と繰り返す。

「言え」

皇輝の低い一声。

「だってさ……コウ……一緒にいるとさ……すぐに……手……出して……来るし…………俺、の……さ……心臓…………が…もたない…し……」

目線を下に下げてボソボソと喋り出す。

「…………それに……ずっと一緒って……はず、恥ずかしいし……う~~悪いかっ!!てか、この体制なくない!?酷い!!」

我慢できなくて最後は喧嘩腰になってしまった。
キッと緋縁的には睨みつけたはずだったが、皇輝からすると”今すぐ食べて”と言われているようだった。

「分かった」

そう一言告げると緋縁の体をくるりと自分の方に向けて唐突にキスをした。

「!!!んっっ!?んぅ~~」

必死で抵抗する緋縁、先程までの雰囲気から一変して熱烈なキスを仕掛けて来た。

「やめ………んっ……はっ……ヤダって…んっ」

(いい加減頭くるっ)

修次は頭が真白になった。一蓮のやり取りは何なのだ…自分はいったい何を見せられているのか。

(見られてる、見られてるじゃん!!)

「んんんっ~~~」
「んっ……相変わらず煩いやつだ」
「なに………すんだよぅ……」

ズルズルと再びしゃがみ込んでしまう緋縁、キスで腰砕けになってしまったのだ。

「緋縁の問題は問題ではない。気にする必要はない、いや………むしろ可愛いだけだ」
『っ!!??』

当然のように言い放つ皇輝に驚愕の余り目を見開いた後、呆然とする修次と緋縁。

「あれ?緋縁くん久しぶりだね。来てたの?」
「はっ弥菜さん……俺、今意識飛んでた」
「修次、今日もあの犬来ると思うから追っ払っといてね。よろしく」
「弥菜さん……ちょっとは相手してやっても…」
「あ?なんか言った?この口、今なんか言った?」
「何も言ってません!追っ払います!」

いつの間にか緋縁は皇輝に腰を支えられ抱き込まれるようにして立っていた。

「俺、今日はパス。連絡すんなよ」
「あーはいはい」
「え"!うそ…了承しないで下さい!」
「はい、頑張ってね緋縁くん」

生易しい笑顔で手を振る弥菜は全てお見通しだと言わんばかりだ。

「頑張れって……弥菜さん……」

修次は少しだけ緋縁が不憫に思えたが、生徒会室の平穏のために文字通り人肌脱いでもらおう緋縁と目線を合わせて頷いておく。

今日も一悶着あったが、無事に生徒会室の平和は守られた。1人の犠牲者によって…

「薄情者~~~!!」

犠牲者の叫び声だけが
だんだんと小さくなっていった
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。

処理中です...