この気持ちに気づくまで

猫谷 一禾

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番外編

弥菜の憂うつ

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 美丘弥菜、生徒会書記。中性的な綺麗な顔立ち、背は平均より少しだけ低い。華奢な体型だが身体能力が高く、身体をひねりくり出される拳はなかなか重い。綺麗なものが好き、竹を割ったような性格。少々辛辣な所もあるが優しい面もある。そんな彼が最近苦手とする後輩がいた。

「やぁ~なぁ~さあぁ~~ん!!」
「ぅわ…………来た……」
「こんにちは!委員長に、この書類を届けて来いって言われました!」
「他のやつはいないのかよ……」
「この仕事だけは、誰にも譲りません!」
「はい、受け取りました。ポチはハウス」
「酷いですよぉ!少しだけお話しませんか?」
「しない、修次パス」
「えぇ!せめて名前呼んでください~そしたら俺…帰りますよ……」
「……駄犬は散れっ」
「!?!?……」

そんないつもの様子に見かねた庶務の修次が後ろからそっと肩を叩く。

「相沢……諦めて風紀に帰れ…」
「えぇ……せっかく会えたのに…もぅ帰らなきゃダメなのぉ?」
「お前、これ以上弥菜さんの機嫌悪くさせるなよっ後が大変なんだからなっ。ちょっとは俺の身にもなれよっ」
「修次……」
「ほ、ほほらぁ!!」
「骨でも買って遠くに投げとけ」
「帰れー!」

そうして生徒会室を追い出された相沢仁だった。



 弥菜は学園のみならず、夜の街でもその容姿から注目されていた。黒龍の幹部なんてものもしていると好意だけではなかった。その日はたまたま1人で歩いていた。喧嘩を吹っかけられることは時々あった。しかし、今日に限って相手の人数が多い。弥菜は例え1人でも幹部がやられたと噂が立ってはいけないと知っている。多勢に無勢、状況が悪い。

「黒龍の幹部さーんこの人数ですよぉ?」
「これはやられちゃうじゃない?」

ケラケラとからかわれる。

「はぁ……図体がでかいヤツは本当に鬱陶しいのが多いんだよね」

内心ではギリギリヤバいと思っていたが、一切表情に出さず逆に挑発めいたことを言う。

「ボコった後やっちまうぞ!!」
「そのお綺麗な顔歪めてやるっ」

(なんとまぁ……見事なまでに……)

「俺、綺麗なものが好きって…知らない?」

軽い挑発に見事ブチ切れてくれた相手は弥菜に襲いかかろうと攻撃態勢に入る。その時、声が掛かった。

「弥菜さぁぁ~ん」
「っナイスポチ……」

相手の意識が他所に向いた瞬間、弥菜は走り出していた。

「え?え?嘘、弥菜さんっ」
「誰がご丁寧に相手してやるかよっ」
「あいつぅ~~~!!」
「追え!!」

後で怒号が聞こえた。そして、殴り合う音も聞こえてきた。弥菜は舌打ちして足を止める。

(だから駄犬はっ)

仕方なしに戻ってみると、大半の奴らが床にうずくまっていた。軽く眉を上げる弥菜。

「あ、弥菜さん!後ちょっとで終わります」
「ふぅ~ん……でかい図体の活用法があったか」

そのまま見学をして、ひょろひょろと目障りな奴らに時々拳を入れる。仁はナイトよろしく喧嘩相手を倒した。

「大丈夫でしたか?弥菜さん」
「頼んで無いけど、俺」
「だ、だってほっとけませんよ!す、すす好きな人がピンチの時は」
「こんだけ雑に扱われてるんだから気づけ」
「でも!諦められません!!」
「お前ねぇ……いい加減にしないと潰すぞ」

ゆらりと弥菜の雰囲気が変わった。喧嘩の腕に自信のある仁もゾクリと来た。

「でも、俺……本当に好きで……う"っ」

一瞬で拳が仁の腹に入った、想像より重い。

「俺、守られる側じゃないから……」
「は……い……カッコイイです……うぅ……」

かなり効いた仁は片膝を着いてしまう。

「分かったら殴られにノコノコ出しゃばるな」
「うっ…でも!俺は中学の頃から憧れてました!つ……そんで、高校に入って、生徒会は無理だったから風紀に入って、ハクにも入ったんです。貴方に近づきたくて!」
「それはさぁ……お前の都合でしょ?俺には関係ないし……好きって言われたら相手しなきゃダメ?」
「そうじゃ……ないんですけど……でも、せめて名前を呼んでもらいたいです」

俯いてしまう仁。

「…………分かった」
「本当ですか!?」

喜びをいっぱいにガバッと顔を上げる。その横に弥菜がしゃがみこんで、肩に手を置く。こんな風に弥菜に触れられたのは初めてだった。

「駄犬改め、番犬にしてやる」

ニッコリと言われた。

「そ、そんなぁ~人間にしてくださいよぉ~」
「ポチはポチはだろ?仁」
「!!!や、ややや……弥菜さ……ん」


 いつもの生徒会室、いつもの声が響く。

「やぁ~なぁ~さぁ~~ん!」
「うるさい、大声出さなくても聞こえる」
「はい!これいつもの書類でっす!」

ニコニコ、ニコニコ、ニコニコ

「なに?用事終わったでしょ?帰りな」
「呼んで……くださぁい……」
「お前がやっても可愛いくない。……やっぱり駄犬に戻さないとダメか…」
「ひっ!か、帰ります!帰りますよ!さようなら」

一目散に風紀へと帰っていった。

「よく調教されてるじゃないか」

会長が横目に感想を漏らす。

「ふっバカと何とかは使いようってね……ご褒美はそうホイホイやらない主義なんで…」

不敵に笑う弥菜に、絶対逆らうのはよそうと心に決めた修次だった。
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