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第1
16話
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ナノニスが目覚めた部屋には最初に入ってきた女性を筆頭に男性が数名いた。皆エプロンをつけていて、中には料理人のような格好の者もいた。
「あぁ!ビックリしてるじゃないか!こんな顔が怖いおじさんばかり集まって…って私が言ったのか…すまないね…ここに居るもんであんたを看病してたもんだから…」
「あ、い、いえ……」
「喋れるのかい!?あぁ…良かった…あ!私はシュガーレ・フドーだよ。怪しいもんじゃないからね。ここはフドー食堂の二階だよ、このおじさん達は私の旦那と従業員、ね?怖くないだろ?怖いのは顔だけだよ」
ニコニコと嬉しそうに捲し立てるシュガーレはナノニスに飛びつかんばかりの勢いだ。
「おい、相手は怪我人だぞ…。落ち着け」
シュガーレの旦那のストムが落ち着かせる。毎日毎日心配していた彼女の気持ちも分かるのでやんわりと言った。
「悪かったね…やっと目覚めたんだ、ゆっくり治していこうじゃないか。あ!医者を呼んだ方が良いね!誰か頼むよ」
「女将さん、その前にここ…水浸しですよ……掃除が先かと」
「あれあれ!私ったら…どうにも気が動転してたみたいだよ。じゃあ私が掃除しておくから、医者に行っとくれ」
部屋に集まっていた皆が、わらわらっと動き出した。一様に安心した顔をしていた。フドー食堂の旦那、ストムはゆっくりナノニスに近付き神妙に聞いた。
「お前……目が覚めて、誰かに連絡したいとか…ないか?家族が…心配してないか?」
「あ……や、……やし…………いいえ……無い、です。ごめんなさい」
ナノニスは屋敷に連絡をと言いかけて辞めてしまった。咄嗟に兄二人の顔が思い浮かんでしまったからだ。
「あの……僕は……どのくらい…目覚めなかったのですか?」
ナノニスは包帯でぐるぐる巻きにされた顔で見上げた。瞼のすぐ上が傷付いていたので片目が隠れていた。
「3日前の夜にお前が道に倒れているのを家のシュガーレが見つけて、ここに運ばれた。だからまる2日、お前は寝ていた」
(2日も!?そんなに…それだったら…あの古城の事件が何かあっただろう…僕の事とか…探してるとか、発表とか…エイリカの事とか……)
ナノニスはどうしても気になって我慢できなくなった。
「あ、あの…何か……あの……あの……事件とか」
なんと聞いたら良いかモゴモゴとしてしまう。
「古城の事件か?あの近くでお前は拾われたからな」
「っ……そう、です……」
「……今朝、王家から御触れが出た…古城に潜伏していた者共が、魔物出現と誘拐事件の犯人で…騎士団が壊滅させた、と。そして……」
伺うようにナノニスを見てゆっくりストムは口を開いた。
「第5王子様が尽力の後、死去されたと」
「え…………」
「その功績を称え、明日から一週間王都は喪にふくす。葬儀は今日執り行われる」
「今日……葬儀……」
ナノニスは言葉が頭に入ったが、上手く飲み込めず理解が出来なかった。
(葬儀?僕の??え……だって、僕はまだ死んでない。捜索……は……されてない?)
「あの…………王子の……葬儀って…………あの……王子は……その……見つかって?」
「さぁ……でも大規模な爆発だったと…お前のその腕……いや……」
(誰か別の人と勘違いしてるのかな…あそこには他にも人がいた)
「あ、あの……それ以外の王子は?何か……」
「王子様……噂じゃ……ティーヌ王子とビニモンド王子が手柄を立てたとかなんとか…」
「手柄?」
(エイリカの事は……何も?……そうだ、彼の身に何かあれば騒ぎにならないはずが無い…だとしたら…エイリカは無事?)
「とにかく、ゆっくり休め。今、医者が来る」
ストムはそっと部屋を出ていく。ナノニスは呆然としたまま天井を見た。体は起き上がれない、ラシューが頬にピタリとくっ付いている。ストムとシュガーレはナノニスのそんな様子にきっと何かあると気付いたが、何も言わなかった。
(僕は生きていると言わなくちゃ…。屋敷の皆は心配してくれてるだろうし…兄様たちだって…兄様……。エイリカ、エイリカは……)
グルグルとティーヌとビニモンドの言葉が再生される。エイリカはナノニスの事を忘れていたと、そう言っていた。天井を睨みつけて、どんどん歪んで見えてくる。涙の膜が瞳を覆う。ナノニスは衝動に突き動かされて痛む体を無視して起き上がる。いや、今は体の痛みが寧ろ心地よくさえあった。心が痛いとどうにも出来ない。
フラフラとした足取りで裸足のまま外に出る。街並みを見てその様子を探ってしまう。フドー食堂の周りには人通りがそこそこあって、店が立ち並んでいた。そこを通る人の話し声が聞こえてくる。
”聞いたか?王子様が亡くなったって”
”あぁ聞いたぞ、あの爆発だろ?”
”事件に首を突っ込んじまったのか?”
”えーと第5?王子様って…知らねぇなぁ”
”ご遺体が見つかったって?”
”それが…私、知り合いに騎士団の人がいるんだけど、見つかってないらしいのよ”
”え!?でも事件から2日でしょ?もう葬儀なの?”
”あの爆発よ……無理なのが一目瞭然なんじゃない?”
力が抜けてその場にへたり込む。その姿に道行く人が訝しげに見る。フドー食堂から慌ててシュガーレが出てくる。
「駄目だよ。まだ寝てなきゃ…背中が痛かったかい?さぁさぁ中に入ろうね。もう医者も来る頃だよ」
諭されて中に入る。ナノニスは自分がどこにいるのかよく分からなくなってしまった。確かにここに居るけれど、居ないとされている。遺体も見つかっていない、そんな状況で2日しか経っていないのにもう葬儀だと言う。
(あぁ……そうか……僕は死んでなきゃ、いけないんだ……そうなんだ……)
「あぁ!ビックリしてるじゃないか!こんな顔が怖いおじさんばかり集まって…って私が言ったのか…すまないね…ここに居るもんであんたを看病してたもんだから…」
「あ、い、いえ……」
「喋れるのかい!?あぁ…良かった…あ!私はシュガーレ・フドーだよ。怪しいもんじゃないからね。ここはフドー食堂の二階だよ、このおじさん達は私の旦那と従業員、ね?怖くないだろ?怖いのは顔だけだよ」
ニコニコと嬉しそうに捲し立てるシュガーレはナノニスに飛びつかんばかりの勢いだ。
「おい、相手は怪我人だぞ…。落ち着け」
シュガーレの旦那のストムが落ち着かせる。毎日毎日心配していた彼女の気持ちも分かるのでやんわりと言った。
「悪かったね…やっと目覚めたんだ、ゆっくり治していこうじゃないか。あ!医者を呼んだ方が良いね!誰か頼むよ」
「女将さん、その前にここ…水浸しですよ……掃除が先かと」
「あれあれ!私ったら…どうにも気が動転してたみたいだよ。じゃあ私が掃除しておくから、医者に行っとくれ」
部屋に集まっていた皆が、わらわらっと動き出した。一様に安心した顔をしていた。フドー食堂の旦那、ストムはゆっくりナノニスに近付き神妙に聞いた。
「お前……目が覚めて、誰かに連絡したいとか…ないか?家族が…心配してないか?」
「あ……や、……やし…………いいえ……無い、です。ごめんなさい」
ナノニスは屋敷に連絡をと言いかけて辞めてしまった。咄嗟に兄二人の顔が思い浮かんでしまったからだ。
「あの……僕は……どのくらい…目覚めなかったのですか?」
ナノニスは包帯でぐるぐる巻きにされた顔で見上げた。瞼のすぐ上が傷付いていたので片目が隠れていた。
「3日前の夜にお前が道に倒れているのを家のシュガーレが見つけて、ここに運ばれた。だからまる2日、お前は寝ていた」
(2日も!?そんなに…それだったら…あの古城の事件が何かあっただろう…僕の事とか…探してるとか、発表とか…エイリカの事とか……)
ナノニスはどうしても気になって我慢できなくなった。
「あ、あの…何か……あの……あの……事件とか」
なんと聞いたら良いかモゴモゴとしてしまう。
「古城の事件か?あの近くでお前は拾われたからな」
「っ……そう、です……」
「……今朝、王家から御触れが出た…古城に潜伏していた者共が、魔物出現と誘拐事件の犯人で…騎士団が壊滅させた、と。そして……」
伺うようにナノニスを見てゆっくりストムは口を開いた。
「第5王子様が尽力の後、死去されたと」
「え…………」
「その功績を称え、明日から一週間王都は喪にふくす。葬儀は今日執り行われる」
「今日……葬儀……」
ナノニスは言葉が頭に入ったが、上手く飲み込めず理解が出来なかった。
(葬儀?僕の??え……だって、僕はまだ死んでない。捜索……は……されてない?)
「あの…………王子の……葬儀って…………あの……王子は……その……見つかって?」
「さぁ……でも大規模な爆発だったと…お前のその腕……いや……」
(誰か別の人と勘違いしてるのかな…あそこには他にも人がいた)
「あ、あの……それ以外の王子は?何か……」
「王子様……噂じゃ……ティーヌ王子とビニモンド王子が手柄を立てたとかなんとか…」
「手柄?」
(エイリカの事は……何も?……そうだ、彼の身に何かあれば騒ぎにならないはずが無い…だとしたら…エイリカは無事?)
「とにかく、ゆっくり休め。今、医者が来る」
ストムはそっと部屋を出ていく。ナノニスは呆然としたまま天井を見た。体は起き上がれない、ラシューが頬にピタリとくっ付いている。ストムとシュガーレはナノニスのそんな様子にきっと何かあると気付いたが、何も言わなかった。
(僕は生きていると言わなくちゃ…。屋敷の皆は心配してくれてるだろうし…兄様たちだって…兄様……。エイリカ、エイリカは……)
グルグルとティーヌとビニモンドの言葉が再生される。エイリカはナノニスの事を忘れていたと、そう言っていた。天井を睨みつけて、どんどん歪んで見えてくる。涙の膜が瞳を覆う。ナノニスは衝動に突き動かされて痛む体を無視して起き上がる。いや、今は体の痛みが寧ろ心地よくさえあった。心が痛いとどうにも出来ない。
フラフラとした足取りで裸足のまま外に出る。街並みを見てその様子を探ってしまう。フドー食堂の周りには人通りがそこそこあって、店が立ち並んでいた。そこを通る人の話し声が聞こえてくる。
”聞いたか?王子様が亡くなったって”
”あぁ聞いたぞ、あの爆発だろ?”
”事件に首を突っ込んじまったのか?”
”えーと第5?王子様って…知らねぇなぁ”
”ご遺体が見つかったって?”
”それが…私、知り合いに騎士団の人がいるんだけど、見つかってないらしいのよ”
”え!?でも事件から2日でしょ?もう葬儀なの?”
”あの爆発よ……無理なのが一目瞭然なんじゃない?”
力が抜けてその場にへたり込む。その姿に道行く人が訝しげに見る。フドー食堂から慌ててシュガーレが出てくる。
「駄目だよ。まだ寝てなきゃ…背中が痛かったかい?さぁさぁ中に入ろうね。もう医者も来る頃だよ」
諭されて中に入る。ナノニスは自分がどこにいるのかよく分からなくなってしまった。確かにここに居るけれど、居ないとされている。遺体も見つかっていない、そんな状況で2日しか経っていないのにもう葬儀だと言う。
(あぁ……そうか……僕は死んでなきゃ、いけないんだ……そうなんだ……)
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