Reborn(君のおかげ)

かずき

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12p.m.

辛くて悲しくて儚くてやりきれない世界の果てで

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--死のう--
英加は決意した。

 40分後、彼はS大学の屋上のフェンスに手をかけていた。
 金があれば入試で名前をひらがなで書いて答案を真っ白にして出しても合格できると巷で言われている三流私立大学。
 倍率は0.4倍で入学しても卒業までに大学の経営が続くかすらもわからないようなそんなバカ大学の14階の屋上は自殺名所として有名だった。
 何人もの希望をなくした男女が最後に目指す場所にしては少しチープだが、そんなことは彼等にはどうでもよかった。
 英加は40分間フェンスに手をかけたままブルブルと震えながら最後の物思いにふけっていた。
 何度もよし、死ぬぞと決意しても力が入らずフェンスにかけた手が震えて涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃになっている。
 助けて、怖い、死にたくない。
 いざって時にこんな弱音が漏れてくる。
 さっきまでは本気だったのに。悔しくてたまらない。
 何にもない自分。何一つ達成出来なかった自分。誰にも必要とされていない自分。
 今まで女を抱いたことすらなく童貞の自分も大嫌いだった。
 19年間生きてきていい思い出なんて何ひとつなかった。
 高校では2年のクラス替えを機に不良グループにいじめられ、両親も2年前に離婚した。
 周りの俺の状況を知ってる奴らは『まだ若いんだから諦めるな』だの『希望を持て』だのほざいていた。
 お前らに何が分かる?
 俺の境遇を分かった気で偉そうに言葉をかけてくる奴らが大嫌いになってそれ以来人と話すのもやめた。
 高校卒業して入った携帯会社の販売員も辞めた。
 半年間引きこもってどんどん病んでいった。
 最後の望みをかけて全力で臨んだ美男子コンテストも2時審査で落ちた。
 この時に感じた。もう生きれないと。
 母親も俺が引きこもってから元気がなくなり俺に『何一つ』期待しなくなり。俺は空気のように扱われた。
 毎日、朝と夜に簡単な『えさ』が部屋の前に置かれていて、それを食べてまた部屋の扉の前に置く。
 こんな自分に食欲という欲望がまだ残っていることすらむかついて3日何も食べないことがあったが、夜中に急に不安になりカップラーメンを時間をかけて食べたのを覚えている。そんな時ですら母親は俺に声をかけずに『えさ』の準備という最低限の仕事だけをこなした。
 ふと、寒さを感じて身震いする。俺は死ぬことすらできない弱虫なのか。どんどん自己嫌悪で嫌になり気持ちが盛り上がってきた。
 よし、死のう。決心した。
 この瞬間を固めるために数ヶ月自問自答してきた。
 フェンスを超えて、飛び降りる為に姿勢を整える。
 頭が真っ白だ。よしっ。飛び込んでしまえ。
 バァッととてつもない引力を感じてその何かに身体を任せる。



















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