Reborn(君のおかげ)

かずき

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12p.m.

もう無理…

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 誕生日…
 いつからだろう。この日が来るのが嫌になったのは。
 小さい時は大好きだった。誕生日プレゼントやケーキが楽しみで2月10日までの日数をカウントダウンした。
 23くらいからかな。
 今思えば22の時はいいことは何もなかった。
 やっと掴めると信じたドラマオーディションの最終予選で落ち、全ての努力が無駄になったと感じた。
 付き合っていた商社マンの彼氏にも二股をかけられていて本命じゃないからと捨てられた。
 そんな悲劇に打ちのめされ気付いたら自分の誕生日が過ぎていたことに気づいた。
 泣いた。目が腫れるほど泣いて叫んだ。
 しまいには隣の部屋の住人がうるさいとブチギレてドアを叩いてきた。
 ごめんなさいと謝ってもごちゃごちゃうるさく言ってきて、泣くんなら外で泣けと言ってきた。ブチギレて殴りかかりそうになったがぐっと我慢して下を向いた。思い出したくもない最悪な日だった。

 27にもなって毎日全力で生きてきた。でも世界は不公平だった。
 何度新しい彼氏ができても浮気され捨てられた。
 どんなに仕事を頑張っても要領が良くて可愛い子の影に隠れて損ばかりしてきた。
 くそったれが…世の中は結局は顔、金。
 もう限界だった。精神的にもう無理だった。
 ある日、職場にスマホを忘れて戻った時、同僚の女子たちが自分のことを話していた。
 『また、男に捨てられたみたいだよ』
 『え、ヤリ捨てされたん?笑』
 『セフレ乙だね。笑』
 『あんな風にならないようにあざとくやらないとね~』
 
 気付いたら倒れていて病院に運ばれていた。
 
 仕事を辞めて、人生やり直そうと思った。
 一度実家に戻り、自己啓発の本を読んだり車で旅をしてみたりしてみた。
 でも自分は弱かった。

 『ぴーー』クラクションを鳴らされ跳ね上がるくらい驚いた。ぼーっとしていて青信号になっていた事に気づかなかった。
 S大学が見えてきた。夜のS大学はなんとも不気味な雰囲気を醸し出していた。
 うわー。帰ろうかな。そう思ったが、ここで引き返したくはなかった。
 死ぬときくらい潔く死にたい。もうこの人生に決着をつけたい。
 大学なんて、前に付き合ってた彼氏の大学祭にデートで連れて行ってもらったぶりだった。結局その男もその時点で他に女を作っていて、2週間後にフラれた。

おどおどしながら屋上を目指して非常階段を登って行った。
馬鹿だな。是非通り抜けて下さいとでも言うような雑な施錠じゃ意味ないじゃん。
だからこの大学は自殺名所になるんだろう。

きっとこの大学の職員も病んでいてまともな感性など持ち合わせていないのだろう。

14階まで上がり、鍵すらかかっていない扉を静かに開ける。

目を疑った。人がいる。しかも…

その人は死のうとしていた。
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