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12日目 声優を目指すミャンマー人少女

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眩しい日差しが窓の外から射す午後2時半。
(最近快晴ばっかだな)

ゆきりさん ミャンマー人 18歳 大学二年生

ゆきりさんの第一印象
まだ垢抜けない感じのお嬢さん 貴族が座る様な大理石のテーブルに座って、時々急かせかノートにメモを取る癖がある

「ゆきりさん、こんにちは~」

「こんにちは~」

まるでアニメの様な声だ。甲高くて、すごく特徴的。

「はじめまして、エリです」

「はい。初めまして、ゆきりと申します」

その高い声と丁寧な口調にギャップがある。

「今日はレッスン予約してくれてありがとうございました~」

「はい、こちらこそ。ありがとうございました」

「はーい。じゃあ今日は初めてのレッスンなのでお互いの自己紹介をしたり、今後どういう風に日本語勉強していくかとかについて話していきたいと思ってます」

「じゃあまず私から簡単に自己紹介しますね♪」

「はい、宜しくお願いします」

「〇〇(会社名)で日本語講師をしていますエリです。北海道に住んでます。趣味は独身と料理です。宜しくお願いします」

「はい。えーと、ゆきりと申します。えーと、工学...大学で勉強しております。えーと、Mechanic Engineering(機会工学)」

「機械工学かな。へー、凄い。工学...大学ですか?」

「いえ、大学の名前はTechnology University(テクノロジー大学)」

「あ、なるほど。じゃあ工学部か。その大学の工学部で機械工学を専攻してるんですね」

「はい。そういうことですかね笑」

「少し混乱させてしまったかな笑」

「いえ、大丈夫です」

「ゆきりさんはどこに住んでいますか?」

「ミャンマーです」

「あ、ミャンマーなんですね」

「はい、知っていますか?」

「はい、もちろん! 」

「えーと、趣味は、アニメを見ることです」

「おお、ホントですか?」

「はい」

「好きなアニメは何ですか?」

「えーと、1番好きなのはフェアリーテイル」

「へー、私は見たことがないですが、凄く有名ですよね~」

「はい。仲間の力~とか」

「ゆきりさんは〇〇(会社名)のオンラインレッスンはよく利用されるんですか?」

「えーと、ちかずまい」

「ん?」

「ちかずまい」

「ちかずまい?」

「えーと、私は日本語のレベルはちょっと...N4...」

「N4?」

「N...4...じゃない。N3を今勉強しておりますから」

「あー、なるほど」

「しゃべ...ない笑」

「あー、なるほど。あんまり沢山の日本語しゃべらない?」

「はいはい。そうなの」

「でも、全然問題ないと思いましたけどね。私の話してる日本語も理解出来てる様だし」

「話してる内容の聞き取りは出来ます。でも会話がよく出来ません」

「そうなんですね~。喋るのがあまり得意じゃないんですね」

「はい」

「今はN3の勉強をしてるんですか?」

「そうです」

「なるほど。大学で機械工学の勉強をしながら日本語の勉強もしてるんですね~勉強熱心ですね」

「笑」

「日本語の勉強は長く続けてるんですか?」

「一年くらい勉強してます」

「一年なんですね。えっ、今大学何年生ですか...?」

「えーと、二年生です」

「そうなんですね。ところで、今大学で機械工学を勉強しるって事は将来はエンジニアになるつもりなんですか?」

「...いえ笑」

「そうなんだ笑」

「えーとね、お父さんが、私が機械工学のMaster(修士)を取るために日本に行かせてくれるから」

「あー、なるほど。じゃあミャンマーの大学を卒業してから日本に来てさらにMaster(修士)をとるために機械工学の学びを深めたいんですね」

「はいはい」

「そうなんですか~。私は数学などの理系科目が苦手なので尊敬します」

「えー、同じです笑 私も数学とか苦手です」

「本当ですか?笑 同じじゃないと思うけどな~笑」

「はい笑 最初は医学部に行くつもりでしたが点が足りなくて合格できませんでした」

「そうなんですか。それは残念でしたね。今の大学で行ってる勉強は難しいですか?」

「はい、難しい。今の学部には女の子が2人だけいますから」

「2人"しか"いないんですね。そっかあ。確かに理系学部は女性が少ないイメージはありました」

「はい」

「日本で機械工学のMaster(修士)を取得した後はどんな仕事をしたいんですか?」

「私の夢は声優です笑」

えー、声優なの!! エンジニア本当に関係ないんだ笑 大学院にまで行くのに笑

「えっ、そうなんですか笑」

「はい笑 だから日本でMaster(大学院の修士号)を取得した後に声優の養成所に行きたいです」

「なるほど...。じゃあアニメが本当に好きなんですね」

「はいっ。子供の頃から好きです」

「アニメを見るときは日本語で見たりするんですか?」

「いいえ、英語で見ることが多いです」

「英語なんですね~。じゃあゆきりさんは英語も話せるんですね」

「はい。でもUpper Intermediate(中級上レベル)くらい」

Upper IntermediateのレベルをToeicで例えるなら750点から850点だ。私よりも全然英語力が高い。

「すごい。ミャンマーでは英語できる人って多いんですか?」

「はい、多いです。大学でも殆ど英語で授業をしますから」

「そうですか~。ちなみに今は大学には通っているんですか?ウイルスとかでオンラインの授業の場合も多いですよね」

「今は大学には行っていません」

「ミャンマーでもウイルスは流行っていますか?」

「はい、凄く状況悪いです」

「そうなんですね。じゃあ授業もオンラインなんですか?」

「いえ、大学は一年くらい辞めました」

「辞めた?」

「はい。本当はオンラインで授業したいだけど、他の学生が文句を言って一年中止?辞めることになりました」

つまり、他の学生の苦情が多いため、対面授業からオンライン授業に移行するのではなく、1年間休学扱いで全学部生が大学の授業を受けるのをストップするということだろう。

「じゃあ今は一切大学の授業を受けていないんですか」

「はい。なので、来年3年生になる予定でしたが、1年休学しているためにもう一度2年生になります」

「そうなんですね。えーと、私は今27歳なんですけど、ゆきりさんはおいくつですか?」

「18歳です」

18歳...?なんだかピンとこない。日本で大学二年生といえば19歳や20歳ではないか。

「え、若いですね笑」

「はい笑 私の国では大学を卒業する歳は20歳です」

「そうなんですか...」

「はい。大学に入る歳はみんな17歳とか」

「うんうん」

「ミャンマーでは高校は2年間通います」

「あ、2年間なんですか」

「はい」

「え、中学校は何年間通いますか?」

「えーと、4年間」

「えっ、小学校は?」

「5年間」

なるほど。ようやく腑に落ちた。日本の義務教育期間の9年間と高校の3年間の合計で12年であるのに対して、ミャンマーで小学校から高校卒業までにかかる年数が11年であるから、ミャンマーの方が大学入学時の年数が日本と比べて1年すくないのだ。

「なるほど。日本だと小学校6年間、中学校3年間、高校3年間なので合計12年間かかります。なのでミャンマーより1年高校卒業するタイミングが遅くなるんです」

「あ、そうなんですか笑」

「はい、そんな違いがあるなんておもしろいですね笑」

レッスンの終わりの時間

「ゆきりさん、今日はレッスンありがとう~またお話ししましょうね」

「はい、また宜しくお願いします」

「はーい、さよなら」


ゆきりさんと話してみた感想

機械工学を勉強していながら声優を目指しているというゆきりさん。今はアニメ制作にも多くの外国人が関わっている時代だ。彼女の声をアニメで聞く日がいつかやってくるのかとしれない。
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