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23の扉 新世紀
久しぶりの工房
しおりを挟む「今日は難しかったぁ。」
「私も全然上手に出来なかったけど、ヨークさんはそれでいいって。」
「親方はいつも「出来を見るわけじゃない」って言ってるもんな。」
「エーガーさんは結構細かいけど。」
「俺はそういうアドバイスの方が助かる。」
「てか、お腹空いた~。」
「ああ。」
「そうだな。じゃあまた明後日。」
「じゃあな。」
「うん。バイバーイ」
「またね。」
軽やかな声が 頭上を吹き抜けていく。
工房へ近付くに連れ 聞こえてきた話し声は
その内容が「通いの子供達」であることを表していて
早速私の中では「イストリアが言っていた工房の話」と繋がって、スペースへくるくると新しい色を齎して いる。
ふむ ?
そんな「私」は
今「すれ違うかも?」とドキドキしていた自分を虚空に投げ
「反対側へ消えていく声」を聴きながら
「もし すれ違っていたとしても何の問題もない私」を適用して
ピョイとはみ出しそうであった「自分のくくり」をチョチョイと整える。
そう
「気まずいもの」は 何もないし
「隠れる」必要もない
「私」はそれぞれの視点から「見たい様に見えて」
且つ
「それは最善に繋がっている」。
「 うん、だから「道」を。 真っ直ぐに 行く。」
そうして「くくり」と「位置」を整えると、丁度工房の扉が開き 赤茶毛の後ろ姿が観える。
よっしゃ。
それならばと 直ぐに「自分」を取り戻した私は
抜き足 差し足と
久しぶりのエーガーの背後に近づいて。
「 わっ!!」
「っぅわっ!吃驚した!………なんだ、ヨルか。やめてくれよ本当に。」
「 やった、 大成功~ 」
苦笑いをする優しいグリーンの瞳に「ニヤリ」として
ピョンピョン飛び回って いたのである。
成る程?
「真ん中」が 教室?になってるってことは
ロランはまだシャットから帰ってきてないんだ
ふむ
確かに「空きスペース」は勿体ないし
「炉」があるならみんなも使える うん
でも大体子供達がやってるのは陶器なのね
なるほど?
ガラスは熱いから ?
確かに鉄は難しそうだもんな ふむ
ぅわぁ
これとかマジ可愛い
上手くない? 何歳なのかな?
あ
でも さっき「大人」じゃないけど
「青年」くらいの人は いたな
年齢層は 意外と幅広いのかもね
ふむ
「お昼休み」の 看板を掛けて。
大きなエーガーが大きな戸を閉め 続いて無骨な長い通路を過ぎると
天井の高い工房が 変わらず私を迎え入れて くれる。
「教室」と先程表現したけれど そこは
ロランの抜けた後を有効利用している工房の一部で
以前よりテーブルと椅子が多いだけの 簡素な場所だ。
少し 薄暗く広い工房は
天井近くにある明かり取りの窓以外、「外」は感じられぬ意外と閉じた空間である。
だけど
「煌々と燃える炉」が二つもある、この場所は
いつ来ても私を熱く迎え入れてくれて
まるで閉塞感のない「この閉じた空間」は 何故なんだろうって。
今更ながら「ここのチカラ」を
思い切り感じ取って いた。
「………ヨル、僕ももう若くないんだからさ、少し手加減してくれよ?この間、腰をやったばかりなんだ。」
「 えっ ? エーガーさん三十代ですよね??」
じっと黙って辺りを見渡していると
「その二周目」に差し掛かったところで 背後から
声が掛かる。
確か
「私の記憶」によれば 三十代だった筈だけど。
「自分の時間の流れ」を把握した今は 「実際エーガーが今何歳なのか」、
それもまた気になるところだ。
「人の年齢」は
勿論「見た目の印象」でも それぞれ受ける「もの」は違うだろうが
そもそも「本人の認識」から「そうなっていること」が 多い。
私も 会う人会う人の年齢を 確認している訳じゃないから
わからないけれど。
これまでの「自分統計」では
「どれだけせかい側か」が現実に
確実に影響を齎しているのは 間違いない。
「まあ確かに、まだ38だけど。まだ、なのかもう、なのか、とりあえず少しずつガタがきているのは確かだよ。」
「こいつは鉄を扱うからな。どうしても重い物が多い。」
「 成る程。 すいませんでした、気を付けますね。 ふふ」
「…笑ってるじゃないか。」
確かに「以前の私」であれば
気を遣って「笑う」ことは無かっただろう。
だけど「今の私」は
「私達は変化する」ことも知っているし
「今のまま 未来へ進む」とも思っていない。
だからこそ、笑ってしまったのだけど
なにしろフォローをしておくことも大切な仕事の一部であるのは 間違いない。
「 いや、次来る時イストリアさん直伝の湿布お持ちします。 ん? 金の蜜でもいいか ?」
「そうかもな。」
「えっ、あれは女の人用では?」
「 ん?」
「そうなのか?」
「 いや、全然そんなことないんですけど。」
「イストリアのハーブ畑」→「金の蜜」、と
スペースがくるくる「この場の最適」を弾き出すと
それに反応したエーガーが「ポン」と固い色を発したのが 視える。
そして
顔を見合わせる、私とヨークの間には
「?」が浮かんでいるがしかし
エーガーはキョトンとしていて。
するとそこへ明晰君が「ラピスの景色」をポンと降ろし
彼が「何故 そう言ったのか」を
スペースで 観せてくれているんだ。
ルシアの店にいる 沢山の女性達
北の広場での井戸端会議
「美容」 「健康」 「肌と髪の艶」
「金の蜜」の 可愛い小瓶 。
なるほど 確かに ?
パラパラと 展開するそれは
「今 ここにある共通認識」みたいなもので
「せかいのなかみ」
即ち「情報」を明晰君が的確に映して観せているもので
「だからエーガーが女性用だと思っている理由」、
それである。
それは「誰しもが持つ 固定観念」の一部でもあり
だからこそラピスの中では「金の蜜は女性用」、
そう思っている人が他にもいるということだろう。
「 成る程? 他にも置く場所を検討してみるべきか?」
だから「それ」が「全然そんなことはない」のを説明しながら。
ふわりと 鼻に届いた
ヨークのサンドイッチの匂いと共に
広がる「休憩の空気」を
味わっていたので ある。
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