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18の扉 光の領域
勇気ひとつ
しおりを挟むそう「前回り」とは。
普通に
鉄棒を「自分の手で掴んで」
「自分で自分の体を支え」
「くるりと頭から回り」
「着地する」、それだけの アレだ。
だが しかし。
「それ」が できる子と できない子がいて。
えっ
ホントに?
なんで?
だって
「くるっと回るだけ」だし
「自分で掴んでいるんだよ?」と。
とてつもなく不思議顔で みんなを眺めていた私はひとり
「成る程」と 納得へ行き着いていた。
そうなんだ
だって「できない」というのは「完全なる思い込み」で
私達人間の体は 本能的に自分を守る様にできている為、棒を掴んで回れば「どうしたって落ちない様に掴み続ける」、それは道理だ。
だけど 「それぞれの子」の中には
「それぞれの縛り」があって。
そのうちのどれかが「ブレーキ」になり、「できない」へ変換され 結果として「勇気を出せない」。
そう
それが「良い」とか「悪い」ではなくて。
その「状況」が、とんでもなく「興味深い」ので ある。
「 ふむ。 なにしろ、運動という運動をしてこなかったからなのか。しかし、なんだろう、地面が迫ってくる? 頭を打ちそうなのが、怖いのかな ?」
「そうだね。私も一度やってみたが、あれは頭がぐわっとするだろう?…いやはや、慣れない者にはきついかも知らないな。」
「 まあ、そうなんですけど。でも、 それって、回らなきゃ。 わかんないじゃないですか。 だから「勇気」なのかなって思って。 それと、自分への信頼。 自分の手、ですよ? う~ん、なんか やっぱりこう、「できる」って 「感覚」 ふむ。」
「フフ、しかしそこでまた、他の子がやっているのを見て「悔しい」と思ってやる子と、逆に諦める子がいるだろう?あれも面白い。ここの性格の違いが良くわかって、今後また教えやすくなりそうだ。」
「 それなら。 良かったです。 そこで無理してやる必要はないんですけど。 てか、そもそも誰も「やれ」と言った訳でもないし。 そう考えると確かに面白いですよね。 勝手にみんなでやりたがって、「できるできない」になっちゃう。 うむ、人間とは。」
「確かにあの年頃は優劣を付けたがる傾向はある。だが君がやりたいのは、そういう事じゃないしね。そこに関しては余計な劣等感や優越感が生まれない様に、私の方でも気を付けておくよ。」
「 ありがとうございます。 助かります。」
確かに私はずっと 造船所へいる訳ではない。
「新しい物が増えて」
「そこからまた発生する 様々な出来事」
そこをきちんと回収して納めてゆく目は、幾つだって必要だ。
だから それを何も言わなくとも担ってくれる、暖かな瞳に感謝して。
また それを「どう 持っていけば みんなの最大値をとれるか」
それを視るのが 私の仕事でも ある。
そうして
「新しい種が撒かれた造船所」に
「なにいろの光を加えるのが適切か」
そんなことをくるくると廻していたら。
ふと イストリアが漏らした言葉が
私の中を スルリと 通り抜けた。
「………成る程。「勇気」が、あるからこそ。こうして落ち着いて日常を送れるということか。」
なにかに 深く 納得した様な。
その「いろ」が
「最近の世界の様子」と「複雑な流れ」を
スルリと私の元に 連れて来る。
そしてそれは 確かに「そう」で。
彼女は まだ「なにも」、その内容を話した訳ではないけれど
「世界は私の様に 呑気に回っていないこと」
「だけど 私はそれでいいこと」
「だが その上で どう動くのが最善かの提示が 今示されていること」
それがわかる。
だからとりあえず。
ポツリ ポツリと話される「現状」の事について
私はただ「受け入れて」。
自分の為に それを「どう 使うのか」
その光を展開して 静かにその話を聞いていた。
「「勇気」、勇気か。………君からその言葉が出た時、すっと腑に落ちた事があるんだ。そう、いろんな場所で問題と言われる事は起きているけれど、その「原因」がね。…やはり、精神的な所から来ているものが、多いと思う。勿論それは各場所によって偏りがあり、そのどれもは一概に言えないものだ。しかしね…皆が、疑心暗鬼と言うか…。」
「やはり、場所によって傾向があって。ラピスでは普段はそんな事には関わらない様な者達が「まさか」という犯罪めいた事をしでかしたり、グロッシュラーでは「信仰を奪われた」と、抜け殻の様になる者が多い。だしかし、ここは。………分かっていた事だけれど、ここ暫く死者の増加が酷い。それが、「なに」故なのかは分からないが。うん、………いや、しかし、一番はやはり勇気か…気力か。そもそも短命だと、言われていた事もあるしね。」
「若い者達はまだ、良い方かと思いきや。あれははなから期待していないから、そう在れるのだろう。それはそれで寂しい事だが、それもまた私達が撒いた種だ。…うん、そうだ、その摘み取る覚悟が。できていなかった、ある意味それだけなのだろうね。」
「 はい。」
短く 応えた 私の「はい」には。
いろんな いろんな 意味が
込められていて
だからこそ彼女の優しい瞳は細まって。
一度、お茶を淹れ直してから
また報告の様な話は続いてゆく。
「だからアリス達は今が一番忙しい時だろう。銀が総出で埋葬を行っている様だ。…ああ、うん、彼も手伝ってくれているよ?そう言えば。」
「もうすぐ冬の祭祀だが。今年も舞はアラルエティーがやる事になっているが、司祭は彼がやるそうだ。うん、ミストラスではなくてね。そう言えば言っておいてくれと、言われたんだった。………ああ、いや、昨日の話なんだ、決まったのは。銀がなにしろ忙しいからね。でも、君には「言えばわかる」と。言っていたよ、彼は。」
「 「言えばわかる」。」
「うん。そう言っていた。昨夜聞いていない?うん?向こうに泊まったのかな。珍しく君も参加させるつもりなのかと思ったけれど、その様子じゃ、そうではないのかな。しかしやはり。君が意図的に止まっているならば、違うのかな。」
「 う~ ん? いや なんか。多分、「違った意味で」、「参加する」のかも。」
「フフッ、そうかも知れないね。ま、君達の心配はしていないが。何か必要な事があったら言いなさい。」
「 はい。 ありがとうございます。 」
そして 「イストリアから齎されたカケラ」
その「冬の祭祀のいろ」が 私の中をくるくると周り始めて。
だがしかし
「まだ」「纏まってない」
「なにか ごちゃついたスペースの中」は
静かにそのいろを飲み下して「他のいろ」と同調し始めている。
その「景色」は
やはり「それが必要だったこと」を示していて。
そしてまた「そのパーツが嵌ること」で。
私に「新しい展開が訪れること」をも 示唆して いる。
「でも、珍しいね。意図的に留まるとはいえ、君にしては………なんと言うか。」
「いつでも全力疾走」
そんな私を見ていたイストリアからすれば、今の私の状況に驚くのも無理はない。
「 フフッ、わかります。 うん、でも。 多分今は、「納得を溜めてるところ」なのかなぁと 思って。」
「納得?」
「はい。 きっと 私の中で、まだ どこか「完全に向こう側」に在れない部分があって。 でも、それも「向こうからやってくるもの」じゃない。 だから、 これまで以上に?浄めて、積んでくことで、視えるんだろうなって 。」
「…それは、予感かな。」
「 「予感」。 うーん 多分。 でも「確証」?でもあるな 。」
「なるほど。それはどちらでも、君ならば成るのだろうね。まあ私達は、それを楽しみにしていようか。」
「 はい。」
「じゃあ、用事はそんな所かな。多分他に言い忘れている事は無いと思うけれど。」
「 ふふっ、いや また伺います。」
「そうだね。」
「 じゃあご馳走様でした。」
そう言って 茶器を片付けるイストリアにニコリと笑い
半分「それって なんのことなんだろう?」そんないろを 顔に貼り付けて。
でも それも「時期にわかる」
そうみんなが囁いているから。
とりあえず安心して
白い書斎を 後にしたので ある。
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