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snow moon
しおりを挟むさて。
外に出て、少し驚いた俺。
すっかり、元通りの雪景色。
確かに家のカレンダーは二月を表していた。
「春に…………。」
なったんじゃなかったっけ?
そんな事をポツリと呟きながら、家の鍵を閉めまたポケット入れる。
あれは。
魔女の森だからなのか?
それとも。
段々と
俺と近づくにつれ、吹雪が止み雪が収まり
解けて 俺と あの甘いのも
うん?
もしそうなら
いいけどな。
気を取り直して、月明かりの中を森へ向かう。
偶然なのか、何なのか
今日も大きな満月だ。
二月の、満月。
「確かスノームーン………。」
空を見上げながら進む。
足跡は消さない。
ただただ真っ直ぐ森へ進む俺の足跡を
追う者は
誰もいないと知っているからだ。
おお、今日も元気に暴れてやがる。
ちょっと焦らしてやろうか………。
森の入り口では、あの時と同じように冬の精霊がぐるんぐるんと腕と体を振り回している。
うーん。
もう少し、お淑やかにならんものか。
ま、まだ二月だからな。
そう、三月、春に近づいて行くとあいつは
人が変わったように
(てかマジで精霊だし、変わってるのかも)
大人しくなる。
きっと、俺が思うに春の精霊にいつからか
取って代わられるのだろう。
そしてまた。
冬まで何処で何をしているのだろうな。
ヤベ。
そろそろ行かんと森の入り口で死ぬのは御免だ。
おっ、ちょ、手加減しろや…………。
うーっ、寒っ。
そうしてまた、森の中へ入った。
「今日は少ないな。」
雪の結晶虫はチラホラしか見えない。
多分、満月だから?
しかし前回は満月でも、ウザかった記憶。
まぁ、どっちでもいいけれど。
そのまま奥へ、奥へ、進む。
何処へともなく。
月明かりの明るい森は、時折舞う結晶虫と
俺が舞い上げる粉雪、風は殆ど無く
ただ、静かに俺を奥へと誘う。
月明かりが描く白いキャンバスへの地下鉄の様な紋様
見上げて大きな枝振りを暫く楽しんだ。
すっかり葉を落とした木々達は
あのまま春になれば盛盛りと葉を茂らせるのだろうか。
そのまま、あても無く進む。
寒くは、ない。
白いキャンバスにはまだ続く
細い線と俺の痕跡
誰もいない
今日は 何も 動物も 精霊すこし それ以外
静かだ。
あっ。
「迎えに来てくれたのか?」
「 に 仰せつかり 参った」
えっ。
声が違う。
誰こいつ。
でも多分、影の…………兄弟?
低い声、大きな長い、長い、影。
チラリと見えて少し嬉しくなった俺の心は
ヒュンッと縮んだけれど
とりあえず俺を迎えに来た事だけは
確からしい。
影はきっと
彼女の側に いるのだろう。
え?待って?
なに、何つった?
「仰せつかり参った」って、誰が迎えに寄越したの??
甘いの? 影? 甘いの? 影??
でもこいつ
明らかに影より 偉そう でかいし
大人っぽい あの影 なんか幼いしな。
えー
俺の甘いの 俺を 待ってる 待って 待ってる
の????????マジ?
いや、調子に乗るな。
俺はあの森を追い出された おとこ
俺の甘いのを 泣かせたまま 扉の一つも
開けられない おとこ
そんな そん俺でも 迎えを寄越す あの
お れ の 甘いの
ヤバ 可愛 可愛
待て待て まだ 小屋に着いてないのに馬鹿。
戻って~
はい。帰ってきた大人な俺。
それにしたってどうして迎えが?
まぁこの森は 彼女の森なのだろうけど。
スノームーンに照らされる
長く大きな影を見ながらつらつらと歩く。
すると、あの
俺の死場所にふさわしい、白くて丸い
小さな広場が現れた。
「お、おっ。」
大きい影に押されて 転がる俺。
しかし粉雪が心地よく、俺を包み
頭上で見守る
巨大な満月は
俺を
俺をじっと
見つめていたんだ。
あ。
飴を食おう。
これで
完璧。
そうして口の中は無事
甘くなり
俺は甘いのの元に
帰れた
のかな
うん。
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