61 / 65
本題
秘密
しおりを挟む
スカーレット・ファルビアンクスの無実が証明され、私を陥れようとした者達が処罰されたことで私の王宮に上がる日が決定した。
「寂しくなるわ」
お母様は私の頬を両手で包みながら別れを惜しむ。
「王宮でも身体に気を付けるんだぞ」
記憶が戻らないまま王宮へ上がる事への不安から、お父様からも心配の声を頂く。
「はい」
王子は私が別人であることを知っているが、他の人は違う。おかしな発言で疑惑を待たれるような事は避けたい。
「そうよ、忘れてた。レオナルド王子から頂いた種が開花したわよ。貴女見た?」
あれはレオナルド王子ではなくリルコット先生から頂いたのだが、お母様は勘違いをしていた。
「まだ見ていません」
確かに蕾が出来、そろそろ咲きそうだなぁとは思っていた。
「なら見てきなさい、とっても綺麗だから」
お母様に促され花を確認に行きながら、お母様が勘違いしてしまったのを考えていた。
確かに婚約者がいて贈り物されたら婚約者からと思うのが自然な事。
私としては、植物の種はドレスや宝石とは違い高価なものではないから深い意味はないと感じ受け取った。
それに先生もあの種を、贈り物というより温室での花のお世話が出来ない私への「課題」と言っていた。
「……わぁ……綺麗」
先日までは咲いていなかった花が今日は開花している。
「素敵ねぇ」
私が花に感動しているとお母様も隣にいた。
「お母様」
「私ね、少し不安でもあったの」
お母様は花を見つめたまま語りだす。
「婚約が決まってからレオナルド王子が我が家を訪れたことなんて一度も無かったでしょ?贈り物もいつも白い物だった。スカーレットは王子が大好きだったけど、私は王子の気持ちが見えなくて本当は怖かったの。いつか婚約解消されるんじゃないかって…貴方が傷つかないように前向きな言葉だけを口にしていた……」
私の知らない王子とスカーレットの関係。
それに、お母様は楽天家な人だと思っていたが、それは不安の裏返しだったのか……
「だけど貴方が記憶を失ってから王子は我が家を訪れ、贈り物までしてくれた。ただの贈り物じゃなく王子の瞳の色の……信じられなかったわ……良かった……本当に良かった……」
お母様の涙ぐむ声で娘の婚約を本気で心配していたのを知る。
「ありがとうございます。私は大丈夫です」
「そうね……この花が答えなのよね」
お母様は花を見て微笑む。
「ん? この花? 」
「あら、分からない? この赤い花の花言葉は「あなたを愛しています」よ」
「へ? 」
あなたを愛しています? え? だって…この花の種をくれたのは……え?
「幸せになるのよ? 」
「……ぁ……はぃ……」
お母様が立ち去った後、一人花を眺め続けた。
えっと……深い意味はないんだよね?
「課題」として、花の種を貰っただけで咲いた花の花言葉は私に向けたメッセージ……なんて事はない。
ないよ……だって、相手は先生だし、私に興味なんてないし。
温室にある沢山の種の中から偶然手に取ったのがこれだったに過ぎないのに、花言葉を調べたら「あなたを愛してます」と、先生に「告白されたぁ」なんて勘違いしたら恥ずかしいし、先生もきっと呆れてしまう。
在学中は色々と迷惑を掛けてしまったのに、卒業しても迷惑を掛けるなんて……
花言葉の事には触れず、先生に花が咲いた事と在学中は温室の世話が心の支えだったことを告白し感謝の手紙を送った。
先生からの返事を待ちたかったが、王宮へ上がる日が先に来てしまった。
王族の馬車がファルビアンクス公爵邸まで訪れ、私は家族に別れの挨拶をしてから馬車に乗り込んだ。
荷物は公爵家の馬車に既に積み込んであるので、私が馬車に乗ればすぐに出発出来る。
私は今日から王宮に住み、王妃教育を学ぶ。
今後は家族であっても会うことは難しく、屋敷に戻ることも緊急事態が起きない限り出来ないだろう。
今後の事を考えると漠然と不安だった。
王妃教育に対してもだが、前世を思い出した代償にこの国の記憶を失ったことなど、少し考えれば懸念事項が山程溢れてくる。
自らを不安にし緊張が増してくると王宮に辿り着いてしまい、多くの方が出迎えてくれていた。
その中心にいるのがレオナルド王子。
馬車が停車し施錠を解くと扉が開くので、降りようとすればスマートに王子が手を差し出しエスコートされる。
「待っていた。今日からよろしく」
「……はぃ……よろしくお願いします」
今日から私の王妃教育が始まる。
学園から王宮に場所を移し、再びボロを出さずに私の秘密がバレないように生活しなければならない。
私はこれから無事に王妃教育を乗り気る事が出来るだろうか?
私のスカーレット・ファルビアンクスはまだまだ続く。
おわり
「寂しくなるわ」
お母様は私の頬を両手で包みながら別れを惜しむ。
「王宮でも身体に気を付けるんだぞ」
記憶が戻らないまま王宮へ上がる事への不安から、お父様からも心配の声を頂く。
「はい」
王子は私が別人であることを知っているが、他の人は違う。おかしな発言で疑惑を待たれるような事は避けたい。
「そうよ、忘れてた。レオナルド王子から頂いた種が開花したわよ。貴女見た?」
あれはレオナルド王子ではなくリルコット先生から頂いたのだが、お母様は勘違いをしていた。
「まだ見ていません」
確かに蕾が出来、そろそろ咲きそうだなぁとは思っていた。
「なら見てきなさい、とっても綺麗だから」
お母様に促され花を確認に行きながら、お母様が勘違いしてしまったのを考えていた。
確かに婚約者がいて贈り物されたら婚約者からと思うのが自然な事。
私としては、植物の種はドレスや宝石とは違い高価なものではないから深い意味はないと感じ受け取った。
それに先生もあの種を、贈り物というより温室での花のお世話が出来ない私への「課題」と言っていた。
「……わぁ……綺麗」
先日までは咲いていなかった花が今日は開花している。
「素敵ねぇ」
私が花に感動しているとお母様も隣にいた。
「お母様」
「私ね、少し不安でもあったの」
お母様は花を見つめたまま語りだす。
「婚約が決まってからレオナルド王子が我が家を訪れたことなんて一度も無かったでしょ?贈り物もいつも白い物だった。スカーレットは王子が大好きだったけど、私は王子の気持ちが見えなくて本当は怖かったの。いつか婚約解消されるんじゃないかって…貴方が傷つかないように前向きな言葉だけを口にしていた……」
私の知らない王子とスカーレットの関係。
それに、お母様は楽天家な人だと思っていたが、それは不安の裏返しだったのか……
「だけど貴方が記憶を失ってから王子は我が家を訪れ、贈り物までしてくれた。ただの贈り物じゃなく王子の瞳の色の……信じられなかったわ……良かった……本当に良かった……」
お母様の涙ぐむ声で娘の婚約を本気で心配していたのを知る。
「ありがとうございます。私は大丈夫です」
「そうね……この花が答えなのよね」
お母様は花を見て微笑む。
「ん? この花? 」
「あら、分からない? この赤い花の花言葉は「あなたを愛しています」よ」
「へ? 」
あなたを愛しています? え? だって…この花の種をくれたのは……え?
「幸せになるのよ? 」
「……ぁ……はぃ……」
お母様が立ち去った後、一人花を眺め続けた。
えっと……深い意味はないんだよね?
「課題」として、花の種を貰っただけで咲いた花の花言葉は私に向けたメッセージ……なんて事はない。
ないよ……だって、相手は先生だし、私に興味なんてないし。
温室にある沢山の種の中から偶然手に取ったのがこれだったに過ぎないのに、花言葉を調べたら「あなたを愛してます」と、先生に「告白されたぁ」なんて勘違いしたら恥ずかしいし、先生もきっと呆れてしまう。
在学中は色々と迷惑を掛けてしまったのに、卒業しても迷惑を掛けるなんて……
花言葉の事には触れず、先生に花が咲いた事と在学中は温室の世話が心の支えだったことを告白し感謝の手紙を送った。
先生からの返事を待ちたかったが、王宮へ上がる日が先に来てしまった。
王族の馬車がファルビアンクス公爵邸まで訪れ、私は家族に別れの挨拶をしてから馬車に乗り込んだ。
荷物は公爵家の馬車に既に積み込んであるので、私が馬車に乗ればすぐに出発出来る。
私は今日から王宮に住み、王妃教育を学ぶ。
今後は家族であっても会うことは難しく、屋敷に戻ることも緊急事態が起きない限り出来ないだろう。
今後の事を考えると漠然と不安だった。
王妃教育に対してもだが、前世を思い出した代償にこの国の記憶を失ったことなど、少し考えれば懸念事項が山程溢れてくる。
自らを不安にし緊張が増してくると王宮に辿り着いてしまい、多くの方が出迎えてくれていた。
その中心にいるのがレオナルド王子。
馬車が停車し施錠を解くと扉が開くので、降りようとすればスマートに王子が手を差し出しエスコートされる。
「待っていた。今日からよろしく」
「……はぃ……よろしくお願いします」
今日から私の王妃教育が始まる。
学園から王宮に場所を移し、再びボロを出さずに私の秘密がバレないように生活しなければならない。
私はこれから無事に王妃教育を乗り気る事が出来るだろうか?
私のスカーレット・ファルビアンクスはまだまだ続く。
おわり
292
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
「君は悪役令嬢だ」と離婚されたけど、追放先で伝説の力をゲット!最強の女王になって国を建てたら、後悔した元夫が求婚してきました
黒崎隼人
ファンタジー
「君は悪役令嬢だ」――冷酷な皇太子だった夫から一方的に離婚を告げられ、すべての地位と財産を奪われたアリシア。悪役の汚名を着せられ、魔物がはびこる辺境の地へ追放された彼女が見つけたのは、古代文明の遺跡と自らが「失われた王家の末裔」であるという衝撃の真実だった。
古代魔法の力に覚醒し、心優しき領民たちと共に荒れ地を切り拓くアリシア。
一方、彼女を陥れた偽りの聖女の陰謀に気づき始めた元夫は、後悔と焦燥に駆られていく。
追放された令嬢が運命に抗い、最強の女王へと成り上がる。
愛と裏切り、そして再生の痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
厄災烙印の令嬢は貧乏辺境伯領に嫁がされるようです
あおまる三行
恋愛
王都の洗礼式で「厄災をもたらす」という烙印を持っていることを公表された令嬢・ルーチェ。
社交界では腫れ物扱い、家族からも厄介者として距離を置かれ、心がすり減るような日々を送ってきた彼女は、家の事情で辺境伯ダリウスのもとへ嫁ぐことになる。
辺境伯領は「貧乏」で知られている、魔獣のせいで荒廃しきった領地。
冷たい仕打ちには慣れてしまっていたルーチェは抵抗することなくそこへ向かい、辺境の生活にも身を縮める覚悟をしていた。
けれど、実際に待っていたのは──想像とはまるで違う、温かくて優しい人々と、穏やかで心が満たされていくような暮らし。
そして、誰より誠実なダリウスの隣で、ルーチェは少しずつ“自分の居場所”を取り戻していく。
静かな辺境から始まる、甘く優しい逆転マリッジラブ物語。
裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。
夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。
辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。
側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。
※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる