短編集

天冨 七緒

文字の大きさ
34 / 78
私は小説とは違うの

私は小説とは違うの 五/十四

しおりを挟む
 二年生に上がる頃には、王子と平民の関係は周知の事実となった。

「エミーリア様、貴方何度も忠告させていただいておりますが立場を弁えるべきです。カラフィアート侯爵令嬢に失礼だと思わないのですか? 」

 突然自身の名が登場し彼女達を探し、気付かれないように近付く。
 
「カラフィアート侯爵令嬢は王子の婚約者有力候補と言われているのに、貴方との悪評が広まりお二人は婚約発表できずにいらっしゃるんですよ。申し訳ないと思わないのですか? 」

「私はルドヴィーク様と友人なだけで……」

「まぁ、アルドロヴァンディ王子をルドヴィーク様とお呼びになるなんてっ。カラフィアート侯爵令嬢のお叱りを受けますよ」

「そんなっ、私はただ友人として……」

 エミーリアという平民の生徒を忠告する令嬢達は、私の名を口にしていた。
 私と令嬢達は挨拶をする程度で特別親しい関係ではない。
 なのに、令嬢達が私の名を口にする意味……
 善意からかもしれないが、私としては身に覚えが無いので止めて頂きたい。
 周囲を見回すと数名の生徒はいるが、この状況に率先して関わろうとする者はいない。
 私の名前が聞こえたので仕方なく令嬢達の元へ向かう。
 
「そこの皆様、私の名前が聞こえたのですがお尋ねしてもよろしいかしら? 」

 本当はこのような場に巻き込まれたくないのが本音。
 エミーリアを取り囲んでいた令嬢達は私の登場に驚くも、瞬時に勝ち誇った表情を見せる。

「カラフィアート侯爵令嬢。私達は令嬢の為を思ってこちらの平民に忠告をしておりました」

「忠告とはなんでしょう? 」

「アルドロヴァンディ王子と親しくしている事を何度も注意しているのですが全く態度を改める様子がなく、私達もどうしたものかと困惑しておりました」

「令嬢達に疑問なのですが、アルドロヴァンディ王子と親密することが何故いけないのでしょうか? 」

「えっ? それは……だって……彼女は平民で……」

 私の想定外の質問に令嬢達はしどろもどろ。

「私は王子がどの方と親密になろうと構いません。王子の交友関係に私が口を出す事ではありませんから」

「カラフィアート侯爵令嬢は……王子の婚約者に内定と……」

「それは噂であって、私と王子に婚約の話は一切ありません」

「そんなっ……えっ……」

「それに私は彼女が平民だとしても何の問題もありません。彼女の学園入学は学園長が許可したもの、私が異を唱えることはありません」

「……そう……ですけど……」

 エミーリアを取り囲んでいた令嬢達は当然自分達を援護してくれると思っていた私が、思いもよらない反応を見せたことで先程までの勢いを失いその場を去って行く。

「……カラフィアート様……」

 私もすぐに立ち去るつもりだったが、彼女の方から声を掛けられるとは思わなかった。

「何でしょう? 」

「その……誤解です。私は王子と……」

「エミーリアッ」

「……ルドヴィーク様っ」

 絵本のように王子は愛する者の危機的状況に駆け付けた……少し遅いけど。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

【完結】妃が毒を盛っている。

井上 佳
ファンタジー
2年前から病床に臥しているハイディルベルクの王には、息子が2人いる。 王妃フリーデの息子で第一王子のジークムント。 側妃ガブリエレの息子で第二王子のハルトヴィヒ。 いま王が崩御するようなことがあれば、第一王子が玉座につくことになるのは間違いないだろう。 貴族が集まって出る一番の話題は、王の後継者を推測することだった―― 見舞いに来たエルメンヒルデ・シュティルナー侯爵令嬢。 「エルメンヒルデか……。」 「はい。お側に寄っても?」 「ああ、おいで。」 彼女の行動が、出会いが、全てを解決に導く――。 この優しい王の、原因不明の病気とはいったい……? ※オリジナルファンタジー第1作目カムバックイェイ!! ※妖精王チートですので細かいことは気にしない。 ※隣国の王子はテンプレですよね。 ※イチオシは護衛たちとの気安いやり取り ※最後のほうにざまぁがあるようなないような ※敬語尊敬語滅茶苦茶御免!(なさい) ※他サイトでは佳(ケイ)+苗字で掲載中 ※完結保証……保障と保証がわからない! 2022.11.26 18:30 完結しました。 お付き合いいただきありがとうございました!

本当に現実を生きていないのは?

朝樹 四季
恋愛
ある日、ヒロインと悪役令嬢が言い争っている場面を見た。ヒロインによる攻略はもう随分と進んでいるらしい。 だけど、その言い争いを見ている攻略対象者である王子の顔を見て、俺はヒロインの攻略をぶち壊す暗躍をすることを決意した。 だって、ここは現実だ。 ※番外編はリクエスト頂いたものです。もしかしたらまたひょっこり増えるかもしれません。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

悪役令嬢の大きな勘違い

神々廻
恋愛
この手紙を読んでらっしゃるという事は私は処刑されたと言う事でしょう。 もし......処刑されて居ないのなら、今はまだ見ないで下さいまし 封筒にそう書かれていた手紙は先日、処刑された悪女が書いたものだった。 お気に入り、感想お願いします!

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

悪役令嬢、休職致します

碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。 しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。 作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。 作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。

処理中です...