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強制力という運命なら、私は邪魔をしない
強制力と言う運命なら、私は邪魔をしない
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「……カール……ハイツ?」
「どうして俺の名前を知っている?」
彼を見た瞬間、様々な記憶が蘇った。
「お嬢様?」
振り返ると、見たことのある使用人が私に話しかける。
「……私?」
「どこか具合でも悪いのですか? もう、お戻りになりますか?」
「いえ……平気よ」
冷静に自分の置かれた状況を把握する。
ここは私が生きていた世界……ではない。
生きていた世界でプレイしていたゲームの世界によく似ている。
目の前にいる彼は主要人物。
私に声を掛けた使用人も、主要ではないが何度か登場している。
となると、私は……
「お嬢様? どうされました」
自身の姿を確認したくて鏡を探したが丁度良く発見する事は出来ない。
「ねぇ。私の名前は?」
小声で使用人に尋ねる。
「……クリスティン・ヴァルトローニ様でございます……どうされたのですか?」
私が自身の名前を尋ねたことで、使用人が不審に思っているのが伝わる。
「えっと……私が名前を平民に名乗って平気なのか聞きたかったの」
「あっ、そういう事ですね。名乗るのは、おやめになった方がよろしいかと」
使用人に不自然に思われることなく、名前を聞けたのではないだろうか?
やはり、私の名前は
クリスティン・ヴァルトローニ。
乙女ゲームの主要人物……公爵令嬢。
王子の婚約者。
勘違いしてはいけないのが、私は主人公ではないということ。
主人公は男爵令嬢。
天真爛漫で一生懸命。
つい手を貸したくなってしまうような女性。
様々な困難を乗り越えつつ、攻略対象の仲を深める恋愛ゲーム。
そこでの私の役割は、主人公の恋愛を盛り上げる為の障壁。
攻略対象は、悪役令嬢の婚約者である王子・悪役令嬢の幼馴染の侯爵令息・悪役令嬢の従者。
無料で出来るゲームの為、登場人物も最小限、複雑な設定もない。
恋愛ゲーム初心者の為のゲームと言われていた。
思い出せば出す程、この世界がゲームだと確信してしまう。
今の私は十歳前後。
「この後どうしたらいいのだろう?」
目の前には主人公の攻略対象の一人。
悪役令嬢に馬車馬の如く働かされる未来の従者がいる。
私が彼を従者にしなければ、悪役令嬢のバッドエンドの一つを回避できるのではないだろうか?
このゲームには主人公が各攻略対象と幸せになるルート・お友達ルート・『また、どこかで会いましょう』ルートがある。
主人公がどの未来を選ぼうと、悪役令嬢が平穏に暮らせることはない。
主人公の幸せの対比で使われるので、追放・後妻・使用人のどれかになる。
ここで攻略対象の彼を見捨てれば、悪役令嬢である私の未来を脅かす者が一つ減る。
主人公の幸せを壊すつもりはないが、私も幸せになりたい。
どうするべきか悩んだ結果、私が導き出した答えは……
「……貴方、大丈夫?」
突き放すことなく、やんわりと消える事。
ここで『平民如きが、私の道を塞ぐなんてっ』などというものなら、未来で復讐されかねない。
「こんなの平気」
「……手当、した方が良いと思うわ」
「俺は貴族じゃない」
「貴族じゃなくても、手当は受けるものよ」
ハンカチを取り出し、怪我している足を縛る。
ゲームだと、クリスティンは彼を連れ帰る。
手当をする為ではなく、彼をオモチャとして遊ぶためにだ。
我が家に招き入れることなく『良い人』の印象で、ここで終わらせる一手を打った。
よくある転生のように、私は主人公の邪魔をするつもりは無い。
物語を変えない程度に彼との関りを作って退散する。
「……あんた……」
カールハイツは何か言いかけるが、それ以上語らないので手当を終え立ち上がる。
「今日の私はただの気まぐれです。恩など感じる必要はありません。そのハンカチは捨てて頂いて構いませんから」
私達の接点はそれで終わらせた。
私が彼の記憶に残ったとしても、『手当をした貴族』変わった貴族だけでいい。
……なのに、どうして?
「ねぇ、どうして彼がいるの?」
カールハイツが我が家の使用人見習いとして働いている。
「お嬢様のハンカチを返しに来たと……仕事を探していると申すので……」
「それで、どうして?」
我が家は公爵家。
なんの紹介状も身分の保証もなく使用人になれるものではない。
「彼がどうしても働きたいと門の前で何日も居座り、旦那様が『相手が子供ならば』と試用期間を与えたようです」
「そう……」
突き放したつもりでも、結局はこうなるのか……
物語の強制力とは言いたくないが、運命のようにも感じる。
私はやはり、ゲームの悪役令嬢のような人生を迎えるのだろうか?
今の彼は使用人見習いなので、接点はない。
それでも警戒してしまう。
自分の家なのに、カールハイツと接触しないよう過ごす。
「お嬢様、本日より使用人として働く事になりましたカールハイツです。よろしくお願いします」
試用期間を終え、正式採用となったカールハイツ。
物覚えが良いとかで、使用人達からの評価も高い様子。
私としては接点を持ちたくないのだが、年齢が近いという事で私付きとして育てる予定らしい。
「……そう。貴方なら使用人より騎士に向いていそうだけど……まぁ、頑張ってね」
特別親しくするつもりもなく、使用人の一人として対応。
挨拶を終え、その場を離れる。
普段通りを装うも、内心は心臓バクバク。
「どうしてゲーム通りになるのよっ」
それからも、カールハイツと至る所で遭遇する。
「……ゲームでは、確か一緒に学園へ通うのよね。荷物持ちや課題を変わりにやらせて、主人公への嫌がらせをさせる……私が命令したけど、裏でこっそり主人公を助けていたのよね」
今回の私は主人公に対して嫌がらせをするつもりは無い。
ないけど……
この分だと『強制力』のようなものが働き、私が犯人として処分されるかもしれない。
「はぁ……嫌だな……追放も後妻に入るのも。良くて使用人よねぇ。使用人ならよくわからない世界で、住む場所と食事が確保できるのは有り難い」
私が辿る悪役令嬢の未来を思い浮かべる。
「……お嬢様、旦那様がお呼びです。応接室でお待ちです」
「分かったわ」
ここで気が付くべきだった。
父が常にいる執務室ではなく、応接室に呼ばれた理由を。
「お父様、クリスティンです」
「あぁ、入りなさい」
「失礼します……」
「どうして俺の名前を知っている?」
彼を見た瞬間、様々な記憶が蘇った。
「お嬢様?」
振り返ると、見たことのある使用人が私に話しかける。
「……私?」
「どこか具合でも悪いのですか? もう、お戻りになりますか?」
「いえ……平気よ」
冷静に自分の置かれた状況を把握する。
ここは私が生きていた世界……ではない。
生きていた世界でプレイしていたゲームの世界によく似ている。
目の前にいる彼は主要人物。
私に声を掛けた使用人も、主要ではないが何度か登場している。
となると、私は……
「お嬢様? どうされました」
自身の姿を確認したくて鏡を探したが丁度良く発見する事は出来ない。
「ねぇ。私の名前は?」
小声で使用人に尋ねる。
「……クリスティン・ヴァルトローニ様でございます……どうされたのですか?」
私が自身の名前を尋ねたことで、使用人が不審に思っているのが伝わる。
「えっと……私が名前を平民に名乗って平気なのか聞きたかったの」
「あっ、そういう事ですね。名乗るのは、おやめになった方がよろしいかと」
使用人に不自然に思われることなく、名前を聞けたのではないだろうか?
やはり、私の名前は
クリスティン・ヴァルトローニ。
乙女ゲームの主要人物……公爵令嬢。
王子の婚約者。
勘違いしてはいけないのが、私は主人公ではないということ。
主人公は男爵令嬢。
天真爛漫で一生懸命。
つい手を貸したくなってしまうような女性。
様々な困難を乗り越えつつ、攻略対象の仲を深める恋愛ゲーム。
そこでの私の役割は、主人公の恋愛を盛り上げる為の障壁。
攻略対象は、悪役令嬢の婚約者である王子・悪役令嬢の幼馴染の侯爵令息・悪役令嬢の従者。
無料で出来るゲームの為、登場人物も最小限、複雑な設定もない。
恋愛ゲーム初心者の為のゲームと言われていた。
思い出せば出す程、この世界がゲームだと確信してしまう。
今の私は十歳前後。
「この後どうしたらいいのだろう?」
目の前には主人公の攻略対象の一人。
悪役令嬢に馬車馬の如く働かされる未来の従者がいる。
私が彼を従者にしなければ、悪役令嬢のバッドエンドの一つを回避できるのではないだろうか?
このゲームには主人公が各攻略対象と幸せになるルート・お友達ルート・『また、どこかで会いましょう』ルートがある。
主人公がどの未来を選ぼうと、悪役令嬢が平穏に暮らせることはない。
主人公の幸せの対比で使われるので、追放・後妻・使用人のどれかになる。
ここで攻略対象の彼を見捨てれば、悪役令嬢である私の未来を脅かす者が一つ減る。
主人公の幸せを壊すつもりはないが、私も幸せになりたい。
どうするべきか悩んだ結果、私が導き出した答えは……
「……貴方、大丈夫?」
突き放すことなく、やんわりと消える事。
ここで『平民如きが、私の道を塞ぐなんてっ』などというものなら、未来で復讐されかねない。
「こんなの平気」
「……手当、した方が良いと思うわ」
「俺は貴族じゃない」
「貴族じゃなくても、手当は受けるものよ」
ハンカチを取り出し、怪我している足を縛る。
ゲームだと、クリスティンは彼を連れ帰る。
手当をする為ではなく、彼をオモチャとして遊ぶためにだ。
我が家に招き入れることなく『良い人』の印象で、ここで終わらせる一手を打った。
よくある転生のように、私は主人公の邪魔をするつもりは無い。
物語を変えない程度に彼との関りを作って退散する。
「……あんた……」
カールハイツは何か言いかけるが、それ以上語らないので手当を終え立ち上がる。
「今日の私はただの気まぐれです。恩など感じる必要はありません。そのハンカチは捨てて頂いて構いませんから」
私達の接点はそれで終わらせた。
私が彼の記憶に残ったとしても、『手当をした貴族』変わった貴族だけでいい。
……なのに、どうして?
「ねぇ、どうして彼がいるの?」
カールハイツが我が家の使用人見習いとして働いている。
「お嬢様のハンカチを返しに来たと……仕事を探していると申すので……」
「それで、どうして?」
我が家は公爵家。
なんの紹介状も身分の保証もなく使用人になれるものではない。
「彼がどうしても働きたいと門の前で何日も居座り、旦那様が『相手が子供ならば』と試用期間を与えたようです」
「そう……」
突き放したつもりでも、結局はこうなるのか……
物語の強制力とは言いたくないが、運命のようにも感じる。
私はやはり、ゲームの悪役令嬢のような人生を迎えるのだろうか?
今の彼は使用人見習いなので、接点はない。
それでも警戒してしまう。
自分の家なのに、カールハイツと接触しないよう過ごす。
「お嬢様、本日より使用人として働く事になりましたカールハイツです。よろしくお願いします」
試用期間を終え、正式採用となったカールハイツ。
物覚えが良いとかで、使用人達からの評価も高い様子。
私としては接点を持ちたくないのだが、年齢が近いという事で私付きとして育てる予定らしい。
「……そう。貴方なら使用人より騎士に向いていそうだけど……まぁ、頑張ってね」
特別親しくするつもりもなく、使用人の一人として対応。
挨拶を終え、その場を離れる。
普段通りを装うも、内心は心臓バクバク。
「どうしてゲーム通りになるのよっ」
それからも、カールハイツと至る所で遭遇する。
「……ゲームでは、確か一緒に学園へ通うのよね。荷物持ちや課題を変わりにやらせて、主人公への嫌がらせをさせる……私が命令したけど、裏でこっそり主人公を助けていたのよね」
今回の私は主人公に対して嫌がらせをするつもりは無い。
ないけど……
この分だと『強制力』のようなものが働き、私が犯人として処分されるかもしれない。
「はぁ……嫌だな……追放も後妻に入るのも。良くて使用人よねぇ。使用人ならよくわからない世界で、住む場所と食事が確保できるのは有り難い」
私が辿る悪役令嬢の未来を思い浮かべる。
「……お嬢様、旦那様がお呼びです。応接室でお待ちです」
「分かったわ」
ここで気が付くべきだった。
父が常にいる執務室ではなく、応接室に呼ばれた理由を。
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「失礼します……」
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