短編集

天冨 七緒

文字の大きさ
60 / 78
強制力という運命なら、私は邪魔をしない

強制力という運命なら、私は邪魔をしない 四

しおりを挟む
「クリスティン、最近あの従者の姿を見ないがどうした?」

「彼は、解雇しました」

「解雇? どうして?」

 王子は私の判断に驚いた様子。

「従者として主人に背く行為をしたので」

「君を欺いたのか?」

「欺いたというより、我が家の内情を吹聴したからでしょうか」

「……そうか」

 今頃カールハイツは主人公の屋敷で、お世話になっているのだろう。
 フィリベールからしたら、ライバルが愛しい人のより近い場所に行き気が気ではないのだろう。
 王子としては、悪役令嬢の私に見張らせていたかったのだろう。
 今も婚約者を目の前にしているのに、考え事をしている。

「クリスティン、君が下位貴族に嫌がらせをしているという噂を耳にしたのだが?」

「誤解ではないでしょうか?」

「身に覚えがないんだな?」

「はい」

 下位貴族とは主人公の事だろう。
 本人がフィリベールに助けを求めたのか、それとも強制力なのかゲーム通りの展開に。
 次第に私は『王子に近付く者に嫌がらせをする婚約者』と噂されるようになった。
 フィリベールの方も主人公との関係を隠す事がなくなる。
 その頃にはサンフォードも私に近付く事は無くなった。
 私といても旨味がないと判断したのだろう。
 主人公と一緒にいるのを目撃する。
 
 そして卒業式。
 
「クリスティン・ヴァルトローニ、君は私との婚約についてどのように思っている?」

「どのように? 王命によるものと思っております」

「王命……王命であれば、覆ることはないと?」

「覆るかどうかは分かりませんが、精進しなければならないと思っております」

「精進……私の婚約者という立場を笠に下位貴族に不遜な態度をしているという噂についてどう思う?」

「そのような振る舞いをした覚えはありませんが、自然とそのように振る舞い周囲を不快にさせていたのであれば私が不出来だったという事でしょう」

「不出来……」

「その事によって私が婚約者に相応しくないとお考えでしたら、婚約解消をして頂いても構いません」

「婚約解消されないと思っているのか?」

「いえ。王命に従いますという事です」

「令嬢は婚約解消を望むのか?」

「受けいれます」

「クリスティ……」

「フィリベール様っ、もういいではありませんか。私が受けた嫌がらせをここで公表しなくて結構です。これ以上の追及を私は望んでおりません。クリスティン様が婚約解消を受け入れてくださり良かったです」

 彼の隣には主人公、さらにカールハイツとサンフォードの姿。
 まさにゲーム通り。
 正確に婚約解消を宣言されていないが、彼の私への配慮だろう。
 ここで足搔くより受け入れてしまった方が恥を晒さなくて済む。

「婚約解消承りました」

 婚約解消を望んでいた王子や幼馴染みに従者は了承した私に何か言いたげな様子。
 私が主人公をイジメの証拠や証人が無駄となり感情がくすぶっているのかもしれない。
 そんな事、私には関係ない。
 その後、私達の婚約は滞りなく解消。 
 フィリベールは主人公との婚約を発表。
 私は謹慎。

「これから追放や使用人、どこかへ嫁がされるのか?」

 未だに、私への処遇が決まらない。

「いつまで、待てばいいのかしら?」
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

砕けた愛

篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。 あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。

あなた方の愛が「真実の愛」だと、証明してください

こじまき
恋愛
【全3話】公爵令嬢ツェツィーリアは、婚約者である公爵令息レオポルドから「真実の愛を見つけたから婚約破棄してほしい」と言われてしまう。「そう言われては、私は身を引くしかありませんわね。ただし最低限の礼儀として、あなた方の愛が本当に真実の愛だと証明していただけますか?」

そしてヒロインは売れ残った

しがついつか
恋愛
マーズ王国の住民は、貴賤に関係なく15歳になる歳から3年間、王立学園に通うこととなっている。 校舎は別れているものの、貴族と平民の若者が一か所に集う場所だ。 そのため時々、貴族に対してとんでもないことをやらかす平民が出てきてしまうのであった。 リーリエが入学した年がまさにそれだった。 入学早々、平民の女子生徒が男子生徒に次々とアプローチをかけていったのだ。

【完結】死がふたりを分かつとも

杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」  私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。  ああ、やった。  とうとうやり遂げた。  これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。  私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。 自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。 彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。 それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。 やれるかどうか何とも言えない。 だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。 だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺! ◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。 詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。 ◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。 1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。 ◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます! ◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。

公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】

佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。 異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。 幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。 その事実を1番隣でいつも見ていた。 一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。 25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。 これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。 何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは… 完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

(完結)家族にも婚約者にも愛されなかった私は・・・・・・従姉妹がそんなに大事ですか?

青空一夏
恋愛
 私はラバジェ伯爵家のソフィ。婚約者はクランシー・ブリス侯爵子息だ。彼はとても優しい、優しすぎるかもしれないほどに。けれど、その優しさが向けられているのは私ではない。  私には従姉妹のココ・バークレー男爵令嬢がいるのだけれど、病弱な彼女を必ずクランシー様は夜会でエスコートする。それを私の家族も当然のように考えていた。私はパーティ会場で心ない噂話の餌食になる。それは愛し合う二人を私が邪魔しているというような話だったり、私に落ち度があってクランシー様から大事にされていないのではないか、という憶測だったり。だから私は・・・・・・  これは家族にも婚約者にも愛されなかった私が、自らの意思で成功を勝ち取る物語。  ※貴族のいる異世界。歴史的配慮はないですし、いろいろご都合主義です。  ※途中タグの追加や削除もありえます。  ※表紙は青空作成AIイラストです。

処理中です...