王子よ、貴方が責任取りなさい

天冨 七緒

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聖女候補卒業

挨拶

 周囲が騒がしくなり視線を向けると、会いたくない人物がこちらに向かってくる。

「レンス、ここにいたの! もう、気づかないところだったよ」

 気づかれないところにいたのだが、気づかれてほしくない人に気づかれてしまった。

「ソミール様。聖女、おめでとうございます」

「ありがとう。急に聖女って言われても、なんだか実感ないんだよね」

「そうですか。聖女となったソミール様と挨拶されたい方が大勢のようですね。私のことは気にせず、どうぞ」

「……レンス、聖女の補佐に指名されなくて怒ってる?」

 私が去ろうとするのを、聖女補佐に任命されない怒りだと思っているソミール。
 もし、聖女補佐に指名されても聖女がソミールであれば、断っただろう。
 なので、指名されなくて良かったと思っている。

「いえ、私は怒ってなどいませんよ」

 本当のことは言えない。

「ごめんね。私は、能力に関係なく『皆に傍にいてほしい』ってお願いしたんだけど、コルネリウスさんが……」

 能力に関係なく?
 それは、私の能力が劣っているってことを言いたいの?
 確かにソミールとの能力には差があるが、彼女に言われると震えが止まらない。

「ソミール嬢の能力であれば、聖女補佐は必要ない。王宮の使用人で十分だ」

 ソミールをエスコートするコルネリウス。
 聖女候補時代からコルネリウスに嫌われていると思っていたが、公私の区別も出来ないほどとは思わなかった。
 先ほどからずっと、私を睨みつけている。
 
「コルネリウスさん。レンスは私の親友で、ずっと仲良くしてたの」

「仲良く? 心の綺麗なソミールには、醜い人間の感情なんて想像もつかないだろうな」

 この人に何を訴えても無駄なんだと知る。

「コルネリウスさん、どういう意味?」

「いや、なんでもない。ソミール嬢、他にも挨拶するべき人がいる。そろそろ行こうか」

「はい……あっ、ルードヴィックさん。あの……あなたと婚約は、できそうにありません。ごめんなさい。それじゃぁ」

 爆弾発言をして去って行こうとするソミール。

「ソミール嬢。彼と婚約とは、どういうことだ?」

 ソミールの言葉に驚きを隠せないコルネリウス。
 ルードヴィックもありもしない話に困惑している。

「え? あの……それは……」

 ソミールはコルネリウスに問いだたされ、助けを求めるようにルードヴィックに視線を向ける。

「婚約を申し込まれていたのか?」

 ソミールに確認しつつ、ルードヴィックを睨みつけるコルネリウス。

「聖女様に婚約を申し込んだことはございません。何か誤解されているのではありませんか?」

「はっ、はい。分かりました。そういうことにしておきます」

 ルードヴィックが婚約の事実はないと宣言するも、ソミールの返事だとコルネリウスの前なので『婚約の話はない』ということに話を合わせたように聞こえる。
 
「君、名前は?」

 王族が貴族の名前を直接聞くのは侮辱に繋がる。
 ルードヴィックは侯爵家。
 知らないはずがない。
 コルネリウスはルードヴィックを『お前程度』と見下しているのだ。

「私は、ルードヴィック・コルテーゼと申します。フローレンス嬢があの花を発見したのは、我が領地です」

 ルードヴィックは名乗りつつ、あの花を発見したのが私だと伝える。

「……あの頃はソミール嬢は、平民だった。今後はそうはいかないからな」

「コルネリウスさん! 私は、大丈夫だから。レンス、またね」

 怒るコルネリウスを宥めながら去って行くソミール。

「……アイツは、本気であの女の言葉を信じているのか?」

 コルネリウスの態度に怒りを見せるルードヴィック。

「……はい」

「アレが次期国王に王妃だと思うと、この国は終わりだな」

「そんなこと、言わないで」

 誰が聞いているとも分からないパーティーで、そんな物騒な発言は控えてほしい。
 だけど、怒ってくれているルードヴィックに私は救われていた。

「ワイン飲まないか?」

 ルードヴィックのワインを飲むペースが速いように思うが、止めなかった。
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