王子よ、貴方が責任取りなさい

天冨 七緒

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コルネリウス王子

司祭の話 三

「魔獣被害が報告されている箇所に、聖女候補たちが関係する場所は含まれていません」

「偶然だろう」

「偶然ですね。被害を訴えているのが、ソミールさんを養女にしたイリノエ侯爵領や、ソミールさんを支持している貴族の領地だとか。本当に偶然ですね」

 そこは、気になっていた。
 だが、ただの偶然だ。
 なら、どうしてソミールが聖女に選ばれた?

「最後の儀式で聖女に認定されると、能力を授かると言われています」

「能力を授かる……」

「その人に相応しい能力だとか……ソミールさんは、聖女と判定される前は多大な能力を保持していました。今はどうなのでしょう?」

「今は……」

 ソミール付きの使用人の報告によると、ソミールの祈りの時間は日に日に長引いている。
 それでも、結界に綻びが生じている。
 能力を授かるどころか、衰えているように……。

「ソミールさんが聖女と認定され、我々は真実を伏せました。コルネリウス殿下、ソミールさんが今代の聖女です」

 司祭の言葉が重くのしかかる。
 そんな私に司祭は続ける。

「貧困街での食料支援ですが、準備したのはアンギレーリさん。配布したのがソミールさんです」

「ああ、報告書を読んだ」

「申請書には、アンギレーリさんの名前しか記入されていません。すべての準備を行ったのが、アンギレーリさんだということです。どこで知ったのかソミールさんは当日、アンギレーリさんの許可なく食料配布をしていたそうです。直接触れ合ったことで、国民にはソミールさんとの記憶が色濃く残り噂が広まった」

 司祭の言う通りだ。

「騎士団への激励に王都巡回も、ジラルディさんが申請したのを確認しています。ですが、修正報告書が届きソミールの名前が追加されていました。私は、ソミールさんの申請を許可した記憶はありません」

 ソミールの名前を追加したのは、私だ。
 令嬢たちからの嫌がらせで、ソミールの名前が消去されたのだと思い込み記入した
 それに騎士団を訪問した際、私が「ソミール嬢を案内するように」と言った。

「マレンゴさんによる寄付金集めのイベントですが、ソミールさんに掃除を任せたことはないそうです。おかしいとは思いませんか?」

「……おかしい?」

「マレンゴさんは貴族です。貴族を出迎えるのに、掃除をさせるものですか?」

「掃除はするだろう」

「はい。掃除は、客人を出迎える前に終わらせておきます。でないと、不十分な段階でお客様を招き入れたということになりますから」

 司祭の言葉に頭を殴られてような衝撃を受けた。
 王宮も、使用人と貴族の通路は分けられている。
 客人の前で掃除をすることはない。
 
「クレパルディさんの花壇は、卒業生から託されたもの。それを他人に任せるほど、あの方は無責任な聖女候補ではありません。それに、ソミールさんは枯れたと思い引き抜いていましたが、茎を切り根を残せば来年芽吹く花でした。何も知らないソミールさんは根ごと引き抜いてしまい、すぐに植え直したが芽吹かなかったとクレパルディさんは嘆いていました」

 ソミールは手伝いたかっただけではないか……言い返したかったが、喉に張り付いて声にならなかった。

「バルツァルさんの訪問時に、ソミールさんは『家族の容態が心配』と言うので、私は許可しました。ですが、ソミールさんは家族の元ではなく、バルツァルさんの活動に同行していました」

 嘘を吐いて、聖女候補の活動場所に同行……
 ソミールは他人の功績を奪っていたわけではない……と、以前のように思えなくなってきた。
 
「祈りの場の水晶が、掃除中の不注意により破損する事故が起きました。本人が正直に謝罪に来ましたので、教会でも大事にはしておりません。その後、ソミールさんが確認に訪れました。『水晶の破損について、なんと報告されたのか教えてほしい』どうして聞きたいのか話を聞くと、ソミールさんはある方に『水晶が破損したのは、自分にあると変わりに謝罪してほしいと頼まれた』と訪れました。破損させてしまった方は、誰かを身代わりにすることなく、責任は自分にあると謝罪しています。話が矛盾しています。おかしく思い、水晶を確認すると何かが塗布されていることが分かりました」

「何かが塗布?」

「はい。それは油でした。その後、見習い一人一人に確認すると、『調理場から出てくるソミールさんを見た』と証言し『手には、瓶を持っていた』と。証拠がなかったので本人に確認はしていませんが、そうだろうと私は思っています」

 ソミールを擁護する言葉すら思い浮かばない。
 もし、司祭の話がすべて正しかった時、聖女候補たちがソミールを避けている理由も頷ける。
 聖女補佐を断るのも納得できてしまう。

「殿下。これが、私のソミールさんの評価です」

「……どうして、司祭は本当のことを報告しなかった?」

「報告していたら、何か変わったのでしょうか? 聖女候補は年々減少しています。結界も綻びを確認と報告があります。聖女候補の中で、ソミールさんが群を抜いて能力を保持しています。儀式の結果、ソミールさんが聖女なのであれば、私は従います」

「そんな女を……」

 自分が何を言おうとしたのか驚く。

「私は、聖女候補たちに残酷なことをしました。あれだけ努力し、『聖女とは、どうあるべきか』に向き合っていた彼女たち。彼女たちの思いを知っていながら、私は儀式の結果だけでソミールさんを聖女に任命しました。私がもっと、強くあればそんな判断はしなかったでしょう……この判断を一生、後悔するのでしょう」

 司祭は、私が思う身分差別をしていないかった。
 むしろ、逆差別というのだろうか?
 平民が『差別』という言葉を利用し、貴族を蔑ろにしていた。
 教会内で特別扱いされていたのは、ソミールの方だったのか?
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