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王宮
王宮
各地で魔獣被害が多発し、不安は王都まで届き始める。
王族は彼らを活気づけようと、パーティーを開催した。
貴族の入場は終わり、王族の登場となるとざわめきが起こる。
「あら? あれは、どういうこと?」
「隣にいる方は、どなただ?」
「隣国の王女よ。だけど、どうして?」
「今日は、聖女様との婚約発表じゃないのか?」
「聖女様は参加していないのか?」
コルネリウスが隣国の王女と共に登場したことで、会場内はどよめく。
つい最近コルネリウスと対面し聖女候補の打診を受けた私も状況を飲み込めずにいた。
「コルネリウス王子の本日のパートナーは、隣国の王女なのね。てっきりソミール様だと思っていたわ」
今回のパーティーは、二人の婚約発表の場だと思っていた。
「そうみたいだな」
私のパートナーはルードヴィック。
コルテーゼ領に滞在中の私にまで、王宮からパーティーの報せが届いた。
「ついに、婚約を発表するのね……」
欠席するわけにもいかず、準備に公爵家へ戻った。
「フローレンス、お帰り。あなた宛てにこんなに手紙が届いているわ。気に障るようだったら、燃やしてしまいなさい」
母は笑顔で怖いことを宣言する。
それも仕方がない。
公爵家に届いた沢山の手紙の内容は、どれもパーティーでのエスコートを希望する手紙。
聖女補佐に選ばれなかった時には蜘蛛の子を散らすように去って行き、母もお茶会に参加する度に嫌味攻撃を受けていた。
それが、最近になり『フローレンス様は、一段とお美しくなられたわね。久しぶりに会いたいわ』『母、娘でお茶会をするのも面白そうよね? ぜひバルツァル様もいらしてね』など言って、私をお茶会に参加させようとしていたらしい。
必死に私を招待するのは、彼らの領地が魔獣や災害の被害を受け続けているから。
聖女に願うも一向に改善されず、彼らも気付き始めてしまった。
「聖女の能力だけでは、難しいのでは?」
聖女の能力に不安を覚えた者たちは聖女候補だった者に連絡を取り、自身の領地だけでも祈ってもらおうという魂胆なのだろう。
分かりやすい手のひら返しに、私以上に母が怒りを見せている。
母を通して誘ってくる者は母が完全に立ちはだかり、私に招待状の存在すら隠してくれていた。
今回は使用人に断りの手紙を書かせ、私は一人で参加するつもりでいたのだが……
「お嬢様。ドレスと宝石が届きました」
「……どなたから?」
手紙の話を聞いていたので、どこかの令息がドレスと宝石を贈り強引にパートナー志願に来たのではないかと警戒する。
「ルードヴィック・コルテーゼ様からです」
「ルードヴィック様から?」
「お手紙も一緒に受け取りました」
『コルテーゼ領に訪れ、ブルニーマ・クラウトの世話をしてくれて感謝しています。王族のパーティーまで時間が迫っているにもかかわらず手入れをしてくれたお礼に、ドレスと宝石を受け取ってほしい。もし、パートナーがまだ決まっていないようなら、私にチャンスをいただけないだろうか? ドレスや宝石が好みでなければ、返却してくれて構わない。パートナーの存在に関わらず、断るのはフローレン嬢の自由です』
私は、ルードヴィックが贈ったドレスと宝石を身に着け彼のエスコートを受けている。
パーティーに私がルードヴィックの瞳の色のドレスを身に着け登場すると、誰もが私たちの関係を邪推する。
王族が登場するまで、彼らの話題は私たちが独占していた。
コルネリウスが登場すると、雰囲気が変わる。
彼のエスコートしている人物がソミールでないことに、周囲は動揺を隠せない。
それは、私も同じだ。
「ソミール様に、何かあったのかしら?」
「最近、結界を張る聖女の祈りの時間が伸びているらしい」
「そうなんですか? あの方が真面目に祈れば一時間も必要ないと思いますよ」
「王宮に出入りしている貴族によると、日によっては十時間超えることもあるとか……」
「十時間ですか? それは……間違った噂ですね。そんなはずありませんよ」
ソミールは効率よく働くタイプ。
十時間も時間を無駄にするとは思えない。
「噂だからな。だが、何時間も祈っているのは確かだそうだ」
「だとすると、今も祈りをしているのかしら?」
「さぁな。だけど、色々噂があるみたいだぞ」
「色々ですか?」
「『聖女の能力査定に誤りがあったんじゃないのか?』『聖女候補たちを補佐に任命するらしい』とか『本日招待された隣国の王女とコルネリウス王子が婚約するらしい』ってのもある」
「そうなんですか……どれも嘘ですよ。あの方の能力は確かですし、殿下との関係は候補時代からです。それに、私が、あの方の補佐をすることはありません」
「ああ。アレの補佐をする必要はない……ん? なんだか騒がしいな」
「何が起きてるんですか?」
ダンスホールから外れるようにいたので、何が起きているのか私からは見えなかった。
『コルネリウスは私の婚約者なのよ! 人の婚約者を取ろうとするなんて最低な女ね!!』
「この声って……」
「あぁ、ソミール嬢だ」
背の高いルードヴィックが状況を説明してくれる。
「ソミール嬢が、王女を……突き飛ばした!」
「まさか!」
何が起きているのか分からないが、会場内は混沌。
次に私が見た光景は、ソミールがコルネリウスと騎士に引きずられるように去って行く姿。
「王女よ、大変申し訳ない。今のは我が国の聖女なのだが、最近体調が良くないようなんだ」
「……そうなのですね」
国王が謝罪し王女もその場は受け入れ、パーティーは続行。
だが、パーティーでのソミールの行動が頭から離れないでいた。
「これからどうなるんでしょう?」
王族は彼らを活気づけようと、パーティーを開催した。
貴族の入場は終わり、王族の登場となるとざわめきが起こる。
「あら? あれは、どういうこと?」
「隣にいる方は、どなただ?」
「隣国の王女よ。だけど、どうして?」
「今日は、聖女様との婚約発表じゃないのか?」
「聖女様は参加していないのか?」
コルネリウスが隣国の王女と共に登場したことで、会場内はどよめく。
つい最近コルネリウスと対面し聖女候補の打診を受けた私も状況を飲み込めずにいた。
「コルネリウス王子の本日のパートナーは、隣国の王女なのね。てっきりソミール様だと思っていたわ」
今回のパーティーは、二人の婚約発表の場だと思っていた。
「そうみたいだな」
私のパートナーはルードヴィック。
コルテーゼ領に滞在中の私にまで、王宮からパーティーの報せが届いた。
「ついに、婚約を発表するのね……」
欠席するわけにもいかず、準備に公爵家へ戻った。
「フローレンス、お帰り。あなた宛てにこんなに手紙が届いているわ。気に障るようだったら、燃やしてしまいなさい」
母は笑顔で怖いことを宣言する。
それも仕方がない。
公爵家に届いた沢山の手紙の内容は、どれもパーティーでのエスコートを希望する手紙。
聖女補佐に選ばれなかった時には蜘蛛の子を散らすように去って行き、母もお茶会に参加する度に嫌味攻撃を受けていた。
それが、最近になり『フローレンス様は、一段とお美しくなられたわね。久しぶりに会いたいわ』『母、娘でお茶会をするのも面白そうよね? ぜひバルツァル様もいらしてね』など言って、私をお茶会に参加させようとしていたらしい。
必死に私を招待するのは、彼らの領地が魔獣や災害の被害を受け続けているから。
聖女に願うも一向に改善されず、彼らも気付き始めてしまった。
「聖女の能力だけでは、難しいのでは?」
聖女の能力に不安を覚えた者たちは聖女候補だった者に連絡を取り、自身の領地だけでも祈ってもらおうという魂胆なのだろう。
分かりやすい手のひら返しに、私以上に母が怒りを見せている。
母を通して誘ってくる者は母が完全に立ちはだかり、私に招待状の存在すら隠してくれていた。
今回は使用人に断りの手紙を書かせ、私は一人で参加するつもりでいたのだが……
「お嬢様。ドレスと宝石が届きました」
「……どなたから?」
手紙の話を聞いていたので、どこかの令息がドレスと宝石を贈り強引にパートナー志願に来たのではないかと警戒する。
「ルードヴィック・コルテーゼ様からです」
「ルードヴィック様から?」
「お手紙も一緒に受け取りました」
『コルテーゼ領に訪れ、ブルニーマ・クラウトの世話をしてくれて感謝しています。王族のパーティーまで時間が迫っているにもかかわらず手入れをしてくれたお礼に、ドレスと宝石を受け取ってほしい。もし、パートナーがまだ決まっていないようなら、私にチャンスをいただけないだろうか? ドレスや宝石が好みでなければ、返却してくれて構わない。パートナーの存在に関わらず、断るのはフローレン嬢の自由です』
私は、ルードヴィックが贈ったドレスと宝石を身に着け彼のエスコートを受けている。
パーティーに私がルードヴィックの瞳の色のドレスを身に着け登場すると、誰もが私たちの関係を邪推する。
王族が登場するまで、彼らの話題は私たちが独占していた。
コルネリウスが登場すると、雰囲気が変わる。
彼のエスコートしている人物がソミールでないことに、周囲は動揺を隠せない。
それは、私も同じだ。
「ソミール様に、何かあったのかしら?」
「最近、結界を張る聖女の祈りの時間が伸びているらしい」
「そうなんですか? あの方が真面目に祈れば一時間も必要ないと思いますよ」
「王宮に出入りしている貴族によると、日によっては十時間超えることもあるとか……」
「十時間ですか? それは……間違った噂ですね。そんなはずありませんよ」
ソミールは効率よく働くタイプ。
十時間も時間を無駄にするとは思えない。
「噂だからな。だが、何時間も祈っているのは確かだそうだ」
「だとすると、今も祈りをしているのかしら?」
「さぁな。だけど、色々噂があるみたいだぞ」
「色々ですか?」
「『聖女の能力査定に誤りがあったんじゃないのか?』『聖女候補たちを補佐に任命するらしい』とか『本日招待された隣国の王女とコルネリウス王子が婚約するらしい』ってのもある」
「そうなんですか……どれも嘘ですよ。あの方の能力は確かですし、殿下との関係は候補時代からです。それに、私が、あの方の補佐をすることはありません」
「ああ。アレの補佐をする必要はない……ん? なんだか騒がしいな」
「何が起きてるんですか?」
ダンスホールから外れるようにいたので、何が起きているのか私からは見えなかった。
『コルネリウスは私の婚約者なのよ! 人の婚約者を取ろうとするなんて最低な女ね!!』
「この声って……」
「あぁ、ソミール嬢だ」
背の高いルードヴィックが状況を説明してくれる。
「ソミール嬢が、王女を……突き飛ばした!」
「まさか!」
何が起きているのか分からないが、会場内は混沌。
次に私が見た光景は、ソミールがコルネリウスと騎士に引きずられるように去って行く姿。
「王女よ、大変申し訳ない。今のは我が国の聖女なのだが、最近体調が良くないようなんだ」
「……そうなのですね」
国王が謝罪し王女もその場は受け入れ、パーティーは続行。
だが、パーティーでのソミールの行動が頭から離れないでいた。
「これからどうなるんでしょう?」
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