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ソミール・イリノエ 二
9
会場を離れ、控え室。
「ソミール嬢、なぜあんなことをした」
「コルネリウスが私じゃなく、あの女をエスコートしてたからよ!」
「あの女と呼ぶんじゃない。彼女は、隣国の王女だ」
「私より隣国の王女の方が大事なの?」
「私だって、本来はソミール嬢をエスコートする予定だった。だが、祈りが長引いているので、今回は王女をエスコートすることになった」
「そこは私を待つべきじゃないの?」
「隣国の王女を招待しているのに、私が遅刻するわけにはいかない」
「だったら、一人で入場すればいいじゃない。どうして王女とするのよ!」
「こちらから招待したんだ。恥をかかせるわけにはいかない」
「他の人がエスコートすればいいじゃない! コルネリウスは、私と婚約するのよ! 皆、勘違いするじゃない!!」
「……そのことなんだが、今のソミール嬢では聖女と次期王妃の両立は難しいのではないかという声が出ている」
「もう、分かりました。私に聖女の世話係として、候補者を付けたらいいですよ!」
「そうではない。私の婚約者は……別の人にして、ソミール嬢には聖女として祈りに専念してもらいたい」
「聖女か王妃のどちらかにしかなれないなら、私は王妃になります。聖女は聖女候補たちでもできるじゃない!!」
「ソミール嬢、君は聖女という立場を捨てることは出来ない」
「どうしてよ!」
「王族がそう判断したからだ」
「王族が勝手に判断したんじゃない。なら、私が聖女として振舞いながら聖女候補たちに祈りをさせればいいのよ」
「……ソミール嬢……国民を欺くことは出来ない」
「どうして否定ばかりなの? コルネリウスも私といられるように考えてよ。私のこと好きじゃないの?」
「……もう、以前のように見ることはできない」
「……何それ……なんで? どうして? 私、頑張ってるのに……皆に意地悪されても、一生懸命やってるのに。どうして、わかってくれないの?」
「誰も、ソミール嬢に意地悪などしていない」
「それは、コルネリウスは王子だもの。本当のこと言うわけないじゃない。どうして、私の言葉を信じてくれないの?」
「……信じたいが、もう信じられない」
「どうしちゃったの? 誰に何を言われたの? ねぇ、前のコルネリウスに戻って」
「前の私は、真実を見極めることができなかった……」
「真実を見極めるって何? 私、嘘なんて吐いてなよ? 」
「ああ。ソミール嬢は……嘘を吐いてないんだよな……」
「ねぇ、私の何がいけなかったの? 言ってよ。言ってくれなきゃわかんないよ」
「……ソミール嬢に貴族を先導するのは、難しいという判断がされている」
「私が平民だから王妃にはさせたくないって貴族から言われてるってこと?」
「違う。今の君はイリノエ侯爵令嬢だ」
「なら、どうして?」
「ソミール嬢が、いつまでたっても貴族としての振る舞いが身につかないからだ」
「それは、先生たちが意地悪してくるから! 私だって頑張ってるのに、酷いこと言われて辛いの!! どうしてわかってくれないの!」
「なんでも他人のせいにしてはいけない」
「どうして私の話を信じてくれないの?」
「先ほどのパーティーでの振る舞いが物語っている」
「さっきは、さっきよ。コルネリウスがあの女をエスコートしなければ、あんなことにはならなかったの!」
「隣国の王女を、あの女と呼んではいけない」
「そんなのどうでもいい。どうして私の味方になってくれないの? 一人で祈らされて時間が長くなって、それ以外の時間を勉強に充ててるのに皆が私に意地悪するの。なのに、コルネリウスは私に会いに来てくれなくて、隣国の王女をエスコートした。酷すぎる。私、頑張ってるのに!!」
「ソミール嬢が優先すべきは国の結界を維持する祈りだ。にも拘らず、結界に関して綻びが現れていると各地から報告が上がっている。ソミール嬢に聖女であり、王妃として私の隣に立つのは難しいと判断された。私からもソミール嬢には、負担が大きすぎたと反省している。婚約の話は、なかったことにしてくれ」
「なんで……なんで、そうなるの?」
「これは、決定事項だ」
「勝手に決めないで!! 待って、行かないで!! コルネリウス……どうしてわかってくれないの……ひっく……」
必死に引き止めてるに反応することなく、コルネリウスは控え室を去って行く。
ねぇ、私、泣いてるんだよ?
それなのに、コルネリウスは私を置き去りにした。
いつもなら、泣く私を一人にしたりしないのに。
ずっと傍にいてくれるのに……。
「なんで……コルネリウス……ひっく……ひっく……」
床に座りこみ、泣き続けた。
「聖女様、我々がイリノエ侯爵家まで送ります」
騎士がイリノエ侯爵家まで送ると告げる。
コルネリウスとの会話のすべてを目撃していたのに、私への同情は一切ない。
ねぇ、女の子が泣いてるんだよ?
優しくするのが当然じゃないの?
どうして皆、そんなに冷たいの?
「ソミール嬢、なぜあんなことをした」
「コルネリウスが私じゃなく、あの女をエスコートしてたからよ!」
「あの女と呼ぶんじゃない。彼女は、隣国の王女だ」
「私より隣国の王女の方が大事なの?」
「私だって、本来はソミール嬢をエスコートする予定だった。だが、祈りが長引いているので、今回は王女をエスコートすることになった」
「そこは私を待つべきじゃないの?」
「隣国の王女を招待しているのに、私が遅刻するわけにはいかない」
「だったら、一人で入場すればいいじゃない。どうして王女とするのよ!」
「こちらから招待したんだ。恥をかかせるわけにはいかない」
「他の人がエスコートすればいいじゃない! コルネリウスは、私と婚約するのよ! 皆、勘違いするじゃない!!」
「……そのことなんだが、今のソミール嬢では聖女と次期王妃の両立は難しいのではないかという声が出ている」
「もう、分かりました。私に聖女の世話係として、候補者を付けたらいいですよ!」
「そうではない。私の婚約者は……別の人にして、ソミール嬢には聖女として祈りに専念してもらいたい」
「聖女か王妃のどちらかにしかなれないなら、私は王妃になります。聖女は聖女候補たちでもできるじゃない!!」
「ソミール嬢、君は聖女という立場を捨てることは出来ない」
「どうしてよ!」
「王族がそう判断したからだ」
「王族が勝手に判断したんじゃない。なら、私が聖女として振舞いながら聖女候補たちに祈りをさせればいいのよ」
「……ソミール嬢……国民を欺くことは出来ない」
「どうして否定ばかりなの? コルネリウスも私といられるように考えてよ。私のこと好きじゃないの?」
「……もう、以前のように見ることはできない」
「……何それ……なんで? どうして? 私、頑張ってるのに……皆に意地悪されても、一生懸命やってるのに。どうして、わかってくれないの?」
「誰も、ソミール嬢に意地悪などしていない」
「それは、コルネリウスは王子だもの。本当のこと言うわけないじゃない。どうして、私の言葉を信じてくれないの?」
「……信じたいが、もう信じられない」
「どうしちゃったの? 誰に何を言われたの? ねぇ、前のコルネリウスに戻って」
「前の私は、真実を見極めることができなかった……」
「真実を見極めるって何? 私、嘘なんて吐いてなよ? 」
「ああ。ソミール嬢は……嘘を吐いてないんだよな……」
「ねぇ、私の何がいけなかったの? 言ってよ。言ってくれなきゃわかんないよ」
「……ソミール嬢に貴族を先導するのは、難しいという判断がされている」
「私が平民だから王妃にはさせたくないって貴族から言われてるってこと?」
「違う。今の君はイリノエ侯爵令嬢だ」
「なら、どうして?」
「ソミール嬢が、いつまでたっても貴族としての振る舞いが身につかないからだ」
「それは、先生たちが意地悪してくるから! 私だって頑張ってるのに、酷いこと言われて辛いの!! どうしてわかってくれないの!」
「なんでも他人のせいにしてはいけない」
「どうして私の話を信じてくれないの?」
「先ほどのパーティーでの振る舞いが物語っている」
「さっきは、さっきよ。コルネリウスがあの女をエスコートしなければ、あんなことにはならなかったの!」
「隣国の王女を、あの女と呼んではいけない」
「そんなのどうでもいい。どうして私の味方になってくれないの? 一人で祈らされて時間が長くなって、それ以外の時間を勉強に充ててるのに皆が私に意地悪するの。なのに、コルネリウスは私に会いに来てくれなくて、隣国の王女をエスコートした。酷すぎる。私、頑張ってるのに!!」
「ソミール嬢が優先すべきは国の結界を維持する祈りだ。にも拘らず、結界に関して綻びが現れていると各地から報告が上がっている。ソミール嬢に聖女であり、王妃として私の隣に立つのは難しいと判断された。私からもソミール嬢には、負担が大きすぎたと反省している。婚約の話は、なかったことにしてくれ」
「なんで……なんで、そうなるの?」
「これは、決定事項だ」
「勝手に決めないで!! 待って、行かないで!! コルネリウス……どうしてわかってくれないの……ひっく……」
必死に引き止めてるに反応することなく、コルネリウスは控え室を去って行く。
ねぇ、私、泣いてるんだよ?
それなのに、コルネリウスは私を置き去りにした。
いつもなら、泣く私を一人にしたりしないのに。
ずっと傍にいてくれるのに……。
「なんで……コルネリウス……ひっく……ひっく……」
床に座りこみ、泣き続けた。
「聖女様、我々がイリノエ侯爵家まで送ります」
騎士がイリノエ侯爵家まで送ると告げる。
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優しくするのが当然じゃないの?
どうして皆、そんなに冷たいの?
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