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ハンカチの行方
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『二人とも私の為に争うのは止めて……』
自身の為に男子生徒二人が真剣勝負を始める姿に、女子生徒は争いを止める発言をするが表情はなんだか嬉しそう。
「あのセリフ……私も言いたいっ。悪い事リストに追加しないと……」
大会終わりという事もあり、二人はアドレナリンのせいか興奮状態にある。
「大丈夫なのこれ? 」
二人の勝負を楽しんで見学していた私だが、大会とは違いルール度外視になっているように感じこのままでは危険なのではと恐怖を感じた。
『二人共、もうやめてっ……ねぇっ』
彼女を取り合っての勝負だったのに、二人は彼女の言葉に耳を貸さない様子。
というより、聞こえていないのかもしれない。
「これ、誰が止めるの? 」
試合と違って、ここに教師はいない。
彼女にも二人を止められない様子。
先程までの優越感な表情は消え去り、どうしようも出来ない状況に恐怖を感じている。
「だ……誰か、呼びに行かないと……」
『二人共止めなさいっ』
誰かを呼びに行こうとした時、教師が到着する。
『……先生』
勝負している男子生徒の間に割って入るキングズリー。
教師の登場に二人を止めることが出来なかった生徒も安堵の表情。
『邪魔しないでくれ』
『これは真剣勝負なんだ』
教師が現れても、彼女の為の試合を終わらせる気はないようだ。
『いい加減にしなさいっ』
キングズリーは油断していた方の剣を体術を使い華麗に奪い、残り一人も勝負を終わらせまいと剣を振るうも払い除けられていた。
流石教師と言うべきが、キングズリーの剣捌きは美しかった。
剣を奪われた二人は漸く冷静さを取り戻す。
『まったく……』
『二人共ごめんなさい。私が曖昧な態度を取ってしまって……こんなに真剣な二人のどちらかなんて選べないわ……だから私は公平に……先生とパーティーに参加するわ』
「急展開っ」
自身の軽率な行動を反省し涙を見せていたかと思えば、突然キングズリーを引きずり込ませた。
決闘をしていた男子生徒二人もだが、先生も彼女の発言に唖然としている。
公平にと言いながら、彼女はこの場にいる一番いい男を掴み取ったようにしか見えなった。
『ねっ、先生。この場を収める為に、私と参加してください』
ポケットからハンカチを取り出し、キングズリーに差し出す彼女。
『この場を収める為に』という言葉は、かなりの攻撃。
男子生徒二人もキングズリーの返答を食い入るような眼を向けながら待つ。
『断る……二人共、そんなに体力が有り余っているなら競技場の周囲を試合が終わるまで走っていなさい……それに君も、二人が争う事のないよう監視していなさい』
キングズリーは彼女の提案を撥ね退け、三人に指示する。
『『『……はい』』』
『訓練用の剣は私が片付けておく』
『……すみませんでした』
『すみません』
三人はキングズリーの言葉に従い競技場へと戻る。
男子生徒二人は令嬢への熱意が冷めたように見えた……のは、私の願望かもしれない。
三人が去り、キングズリーも歩き出す。
男子生徒が置いて行った剣を拾う仕草をした時、不自然な動きを見せた。
キングズリーが去った後、彼らが試合をしていた場所まで確認に行く。
「あっこれって……」
血の痕を発見。
彼らの血かもしれないが、私はキングズリーの後を追いかけた。
「先生っ」
「アイゼンハワー、どうした? 」
キングズリーに返答することなく、彼の腕を確認した。
「これ……」
彼の腕には八センチ程の真新しい切り傷があった。
「剣の片付けの最中にやってしまった」
キングズリーが彼らを発見する前から私が全てを目撃していたのを知らない。
「……嘘つき。見てました……全部」
「……そうか……もう、問題ない」
「そうですか……」
許可と取ることなくキングズリーの傷にハンカチで応急手当をした。
「……悪いな」
「いえ……先生も大変なんですね。あんな現場を収めなければならないなんて」
「教師だからな」
「それは教師の仕事なんですか? 」
「不安定な時期にある生徒を導くのが教師の務めだ」
「……大変ですね」
「ん? なんだこの……柄は……」
「それは、平和の象徴の木に止まる鳥」
「木と鳥……木と……鳥……」
「なんですか? 何か言いたいことでも? 」
「……才能ないな」
「うわっ、はっきり言った。分かってたけど……分かっていましたけど、そんなにはっきり言います? 」
「すまん……つい……」
「いいですよ。どうせ永久封印のハンカチだったので使い道ができて良かったです。汚れたので燃やしてくれて構いませんので。絶対に返さないでくださいね」
「まさか、このハンカチって……」
「なんですか? 」
「刺繍の課題のハンカチなのか? 」
「そうですけど」
「……パーティーはどうするんだ? まぁ、ハンカチが必ずパーティーのパートナーの条件ではないが……」
「パーティーに参加するつもりありませんので、問題ありません」
「誰も誘ってないのか? 」
「はい」
「誰にも誘われてないのか? 」
「……はい」
つい忘れていた人物を思い出してしまい、間を作ってしまった。
「誰かに誘われていたんじゃないのか? 」
「……元婚約者にハンカチを強請られました」
「元……ジャイルズ・アンダーソンか? 」
「はい」
「渡すのか? 」
「今、先生に渡しました」
「あっ……返すか? 」
「血に濡れたハンカチを? 」
「……すまん」
「いいんです。先程も言いましたが、私はパーティーに参加するつもりはないんで。先生もこの後ちゃんとした手当を受けてくださいね。それじゃっ」
これ以上ハンカチとパーティーの話をしたくなかったので強制的に会話を終わらせ、その場を去った。
「……ハンカチ……んふっ……へぇ~」
私達を遠くから眺めていた人物に私は気が付かなかった。
本日の一言日記。
「私の為に喧嘩は止めて」……私が言いたかった。
主役を奪われてしまって悔しい。
いつか言ってやりたい。
自身の為に男子生徒二人が真剣勝負を始める姿に、女子生徒は争いを止める発言をするが表情はなんだか嬉しそう。
「あのセリフ……私も言いたいっ。悪い事リストに追加しないと……」
大会終わりという事もあり、二人はアドレナリンのせいか興奮状態にある。
「大丈夫なのこれ? 」
二人の勝負を楽しんで見学していた私だが、大会とは違いルール度外視になっているように感じこのままでは危険なのではと恐怖を感じた。
『二人共、もうやめてっ……ねぇっ』
彼女を取り合っての勝負だったのに、二人は彼女の言葉に耳を貸さない様子。
というより、聞こえていないのかもしれない。
「これ、誰が止めるの? 」
試合と違って、ここに教師はいない。
彼女にも二人を止められない様子。
先程までの優越感な表情は消え去り、どうしようも出来ない状況に恐怖を感じている。
「だ……誰か、呼びに行かないと……」
『二人共止めなさいっ』
誰かを呼びに行こうとした時、教師が到着する。
『……先生』
勝負している男子生徒の間に割って入るキングズリー。
教師の登場に二人を止めることが出来なかった生徒も安堵の表情。
『邪魔しないでくれ』
『これは真剣勝負なんだ』
教師が現れても、彼女の為の試合を終わらせる気はないようだ。
『いい加減にしなさいっ』
キングズリーは油断していた方の剣を体術を使い華麗に奪い、残り一人も勝負を終わらせまいと剣を振るうも払い除けられていた。
流石教師と言うべきが、キングズリーの剣捌きは美しかった。
剣を奪われた二人は漸く冷静さを取り戻す。
『まったく……』
『二人共ごめんなさい。私が曖昧な態度を取ってしまって……こんなに真剣な二人のどちらかなんて選べないわ……だから私は公平に……先生とパーティーに参加するわ』
「急展開っ」
自身の軽率な行動を反省し涙を見せていたかと思えば、突然キングズリーを引きずり込ませた。
決闘をしていた男子生徒二人もだが、先生も彼女の発言に唖然としている。
公平にと言いながら、彼女はこの場にいる一番いい男を掴み取ったようにしか見えなった。
『ねっ、先生。この場を収める為に、私と参加してください』
ポケットからハンカチを取り出し、キングズリーに差し出す彼女。
『この場を収める為に』という言葉は、かなりの攻撃。
男子生徒二人もキングズリーの返答を食い入るような眼を向けながら待つ。
『断る……二人共、そんなに体力が有り余っているなら競技場の周囲を試合が終わるまで走っていなさい……それに君も、二人が争う事のないよう監視していなさい』
キングズリーは彼女の提案を撥ね退け、三人に指示する。
『『『……はい』』』
『訓練用の剣は私が片付けておく』
『……すみませんでした』
『すみません』
三人はキングズリーの言葉に従い競技場へと戻る。
男子生徒二人は令嬢への熱意が冷めたように見えた……のは、私の願望かもしれない。
三人が去り、キングズリーも歩き出す。
男子生徒が置いて行った剣を拾う仕草をした時、不自然な動きを見せた。
キングズリーが去った後、彼らが試合をしていた場所まで確認に行く。
「あっこれって……」
血の痕を発見。
彼らの血かもしれないが、私はキングズリーの後を追いかけた。
「先生っ」
「アイゼンハワー、どうした? 」
キングズリーに返答することなく、彼の腕を確認した。
「これ……」
彼の腕には八センチ程の真新しい切り傷があった。
「剣の片付けの最中にやってしまった」
キングズリーが彼らを発見する前から私が全てを目撃していたのを知らない。
「……嘘つき。見てました……全部」
「……そうか……もう、問題ない」
「そうですか……」
許可と取ることなくキングズリーの傷にハンカチで応急手当をした。
「……悪いな」
「いえ……先生も大変なんですね。あんな現場を収めなければならないなんて」
「教師だからな」
「それは教師の仕事なんですか? 」
「不安定な時期にある生徒を導くのが教師の務めだ」
「……大変ですね」
「ん? なんだこの……柄は……」
「それは、平和の象徴の木に止まる鳥」
「木と鳥……木と……鳥……」
「なんですか? 何か言いたいことでも? 」
「……才能ないな」
「うわっ、はっきり言った。分かってたけど……分かっていましたけど、そんなにはっきり言います? 」
「すまん……つい……」
「いいですよ。どうせ永久封印のハンカチだったので使い道ができて良かったです。汚れたので燃やしてくれて構いませんので。絶対に返さないでくださいね」
「まさか、このハンカチって……」
「なんですか? 」
「刺繍の課題のハンカチなのか? 」
「そうですけど」
「……パーティーはどうするんだ? まぁ、ハンカチが必ずパーティーのパートナーの条件ではないが……」
「パーティーに参加するつもりありませんので、問題ありません」
「誰も誘ってないのか? 」
「はい」
「誰にも誘われてないのか? 」
「……はい」
つい忘れていた人物を思い出してしまい、間を作ってしまった。
「誰かに誘われていたんじゃないのか? 」
「……元婚約者にハンカチを強請られました」
「元……ジャイルズ・アンダーソンか? 」
「はい」
「渡すのか? 」
「今、先生に渡しました」
「あっ……返すか? 」
「血に濡れたハンカチを? 」
「……すまん」
「いいんです。先程も言いましたが、私はパーティーに参加するつもりはないんで。先生もこの後ちゃんとした手当を受けてくださいね。それじゃっ」
これ以上ハンカチとパーティーの話をしたくなかったので強制的に会話を終わらせ、その場を去った。
「……ハンカチ……んふっ……へぇ~」
私達を遠くから眺めていた人物に私は気が付かなかった。
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