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諦めの悪い男視点
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<ジャイルズ・アンダーソン>
婚約解消が正式に受理されてから状況が一変した。
順調だった伯爵家の経営は傾き苦しいものとなっている。
契約が打ち切られること五件、見直され悪条件となったものが三件。
新規の契約は……ゼロ。
兄の婚約も破棄された。
「全ては俺のせい……」
エヴァリーンとはそれから連絡を取っていない。
それどころではないから……
父の報告では、向こうも契約が絶たれ社交界で立場を危うくしているそうだ。
今の俺に令嬢を心配している余裕はない。
「……シャルロッテに謝罪し、再婚約してもらおう」
再婚約は父の意思ではない。
俺の独断。
父からは
「いいか、学園復帰は許可する。だが、これ以上アイゼンハワー公爵の怒りを買うような行動はするな」
久しぶりの登校初日に窘められる。
だが、我が家が再起するには俺が再びシャルロッテと婚約し、アイゼンハワー公爵からの許しを得ないといけない。
シャルロッテは婚約解消に痛手はないと言ったが、公爵が婚約に動いている様子はない……
やはり、ただのハッタリだったか。
令嬢が婚約解消となれば新たな婚約を結ぶのは難しい。
なら俺がまた婚約してやれば皆が丸く収まる。
「俺と婚約してくれ」
「お断りいたします」
最初は断られると思っていた。
あれだけプライドの高いシャルロッテがすんなり再婚約に応じるとは思っていない。
だが、強気に迫れば了承する。
一度は俺の事を好きになった女なんだ。
俺が本気の顔で迫ればアイツだって……
「なぁ、ジャイルズ。アイゼンハワーにハンカチ貰うっての本当なのか? 」
学園復帰して遠巻きにしていた奴が久しぶりに声を掛けてきた。
「それをどこで? 」
「いや。今、噂になってんだけどよ。ジャイルズが大会でアイゼンハワーの為に試合するって。そんでアイゼンハワーの方はハンカチをジャイルズに贈る約束をしていたのを聞いた奴がいるって。本当なのか? 」
「そうなのか? 」
あの時の会話を聞かれていた。
確かにその会話をしたが、正確ではない。
実際はハンカチを貰えるかは半々。
あの反応からして貰えるとは思うが、強がって意地になる可能性もある。
「そんな事ねぇよな? ジャイルズはエヴァリーンと婚約するんだろう? 」
「えっ? エヴァリーンとは……」
「あんだけ堂々と関係を見せつけてたんだ、今さらアイゼンハワーとは無いよな? 」
「それは……」
「今、アイゼンハワーに婚約の打診を考えている奴多いらしいしな」
「えっそうなのか? 」
婚約解消した令嬢に婚約の打診なんて……
訳アリの貴族か、歳の離れた後妻に入るのが一般的なのに……
「当然だろう? 公爵令嬢が婚約者不在になったんだ、上手くいけば公爵だぜ? しかもアイゼンハワーって言ったら、王族に次ぐ貴族。今の婚約を解消してでも婿入りしたいって奴までいるくらいだ。ジャイルズもやるな、そんな令嬢を捨てるなんてっ」
「違うっ、捨てた訳じゃ……」
「違うのか? でも、再婚約は公爵の面子として考えられないよな。長年娘を蔑ろにされていたのに、今さら謝罪するので再婚約を~なんて言われても許せるもんじゃねぇだろう? それにシャルロッテも、婚約者が別の……格下の令嬢と浮気してたのを暴露されて関係をそのままってのはな」
好き勝手なこと言いやがって……
「……ハンカチは俺が貰う」
「え? エヴァリーンじゃなく? 噂は本当なのか? あのアイゼンハワーがジャイルズと? 」
「大会の結果次第だ」
「本当かよっ」
嘘じゃない。
俺が大会で結果を見せれば、シャルロッテも俺を受け入れる。
全てが元通りに……
そして俺のこの発言は一気に広まった。
「これだけ噂が広まればアイツも拒否出来ないだろう……」
俺が噂を拡散した訳ではないが、いい方向に向かっていると感じる。
剣術大会当日。
俺は順調に三回戦に進んだ。
ここまでは予想通りだった……
「試合終了。勝者、カッシアーノ・モルディア」
負けた……
正直なところ優勝は不可能だと思っていた。
だが、ブロックごとの代表になれると思っていた……
「ここさえ勝てさえいれば……」
だが、二次予選は通過した。
この結果であれば、シャルロッテも俺の実力を認めるはず。
俺の試合見てくれてたよな?
「ジャイルズ様? 」
「……エヴァリーン」
互いに学園に復帰してから避けていた。
廊下で得すれ違っても挨拶もしていない。
周囲が俺達を監視しているようで、俺は極端に彼女を避けた。
「私が声を掛けたのに喜んでくださらないのですか? 」
「俺達が一緒にいるところを見られたくない」
「……婚約するのに? 」
「そんな約束をした覚えはない」
「……本気で言っているんですか? 私はそのつもりでジャイルズ様といたのに……」
「申し訳ないが、俺は婚約解消するつもりもなかったんだ」
「……あのような振る舞いをしておきながら、今さらそんな事言っても手遅れですよ」
「いや、俺達はやり直せる」
「……アイゼンハワー令嬢はそんな風には思っていないと思いますよ? 」
「そんなことはない」
「ふふっ、何も知らないんですね? 」
「何をだ? 」
「私見ましたよ、アイゼンハワー令嬢がハンカチを渡しているのを」
「誰にだ? 」
俺にくれる約束をしたのに他の奴に渡すなんて……
信じられない。
「キングズリー先生が受け取っていましたよ」
「キング……先生が……」
キングズリーが侯爵令息の次男だというのは貴族であれば誰もが知っている情報。
令嬢達には爵位だけでなく、容姿も好評らしい。
婚約者や密かに思っていた令嬢がキングズリーに懸想していると知り、嫉妬する令息の存在は知っていた。
だが、キングズリーは『教師』として対応し一人の女子生徒を特別に扱っている者はいなかった……
なので好感を持てていたというのに……裏切りだ。
婚約解消が正式に受理されてから状況が一変した。
順調だった伯爵家の経営は傾き苦しいものとなっている。
契約が打ち切られること五件、見直され悪条件となったものが三件。
新規の契約は……ゼロ。
兄の婚約も破棄された。
「全ては俺のせい……」
エヴァリーンとはそれから連絡を取っていない。
それどころではないから……
父の報告では、向こうも契約が絶たれ社交界で立場を危うくしているそうだ。
今の俺に令嬢を心配している余裕はない。
「……シャルロッテに謝罪し、再婚約してもらおう」
再婚約は父の意思ではない。
俺の独断。
父からは
「いいか、学園復帰は許可する。だが、これ以上アイゼンハワー公爵の怒りを買うような行動はするな」
久しぶりの登校初日に窘められる。
だが、我が家が再起するには俺が再びシャルロッテと婚約し、アイゼンハワー公爵からの許しを得ないといけない。
シャルロッテは婚約解消に痛手はないと言ったが、公爵が婚約に動いている様子はない……
やはり、ただのハッタリだったか。
令嬢が婚約解消となれば新たな婚約を結ぶのは難しい。
なら俺がまた婚約してやれば皆が丸く収まる。
「俺と婚約してくれ」
「お断りいたします」
最初は断られると思っていた。
あれだけプライドの高いシャルロッテがすんなり再婚約に応じるとは思っていない。
だが、強気に迫れば了承する。
一度は俺の事を好きになった女なんだ。
俺が本気の顔で迫ればアイツだって……
「なぁ、ジャイルズ。アイゼンハワーにハンカチ貰うっての本当なのか? 」
学園復帰して遠巻きにしていた奴が久しぶりに声を掛けてきた。
「それをどこで? 」
「いや。今、噂になってんだけどよ。ジャイルズが大会でアイゼンハワーの為に試合するって。そんでアイゼンハワーの方はハンカチをジャイルズに贈る約束をしていたのを聞いた奴がいるって。本当なのか? 」
「そうなのか? 」
あの時の会話を聞かれていた。
確かにその会話をしたが、正確ではない。
実際はハンカチを貰えるかは半々。
あの反応からして貰えるとは思うが、強がって意地になる可能性もある。
「そんな事ねぇよな? ジャイルズはエヴァリーンと婚約するんだろう? 」
「えっ? エヴァリーンとは……」
「あんだけ堂々と関係を見せつけてたんだ、今さらアイゼンハワーとは無いよな? 」
「それは……」
「今、アイゼンハワーに婚約の打診を考えている奴多いらしいしな」
「えっそうなのか? 」
婚約解消した令嬢に婚約の打診なんて……
訳アリの貴族か、歳の離れた後妻に入るのが一般的なのに……
「当然だろう? 公爵令嬢が婚約者不在になったんだ、上手くいけば公爵だぜ? しかもアイゼンハワーって言ったら、王族に次ぐ貴族。今の婚約を解消してでも婿入りしたいって奴までいるくらいだ。ジャイルズもやるな、そんな令嬢を捨てるなんてっ」
「違うっ、捨てた訳じゃ……」
「違うのか? でも、再婚約は公爵の面子として考えられないよな。長年娘を蔑ろにされていたのに、今さら謝罪するので再婚約を~なんて言われても許せるもんじゃねぇだろう? それにシャルロッテも、婚約者が別の……格下の令嬢と浮気してたのを暴露されて関係をそのままってのはな」
好き勝手なこと言いやがって……
「……ハンカチは俺が貰う」
「え? エヴァリーンじゃなく? 噂は本当なのか? あのアイゼンハワーがジャイルズと? 」
「大会の結果次第だ」
「本当かよっ」
嘘じゃない。
俺が大会で結果を見せれば、シャルロッテも俺を受け入れる。
全てが元通りに……
そして俺のこの発言は一気に広まった。
「これだけ噂が広まればアイツも拒否出来ないだろう……」
俺が噂を拡散した訳ではないが、いい方向に向かっていると感じる。
剣術大会当日。
俺は順調に三回戦に進んだ。
ここまでは予想通りだった……
「試合終了。勝者、カッシアーノ・モルディア」
負けた……
正直なところ優勝は不可能だと思っていた。
だが、ブロックごとの代表になれると思っていた……
「ここさえ勝てさえいれば……」
だが、二次予選は通過した。
この結果であれば、シャルロッテも俺の実力を認めるはず。
俺の試合見てくれてたよな?
「ジャイルズ様? 」
「……エヴァリーン」
互いに学園に復帰してから避けていた。
廊下で得すれ違っても挨拶もしていない。
周囲が俺達を監視しているようで、俺は極端に彼女を避けた。
「私が声を掛けたのに喜んでくださらないのですか? 」
「俺達が一緒にいるところを見られたくない」
「……婚約するのに? 」
「そんな約束をした覚えはない」
「……本気で言っているんですか? 私はそのつもりでジャイルズ様といたのに……」
「申し訳ないが、俺は婚約解消するつもりもなかったんだ」
「……あのような振る舞いをしておきながら、今さらそんな事言っても手遅れですよ」
「いや、俺達はやり直せる」
「……アイゼンハワー令嬢はそんな風には思っていないと思いますよ? 」
「そんなことはない」
「ふふっ、何も知らないんですね? 」
「何をだ? 」
「私見ましたよ、アイゼンハワー令嬢がハンカチを渡しているのを」
「誰にだ? 」
俺にくれる約束をしたのに他の奴に渡すなんて……
信じられない。
「キングズリー先生が受け取っていましたよ」
「キング……先生が……」
キングズリーが侯爵令息の次男だというのは貴族であれば誰もが知っている情報。
令嬢達には爵位だけでなく、容姿も好評らしい。
婚約者や密かに思っていた令嬢がキングズリーに懸想していると知り、嫉妬する令息の存在は知っていた。
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