50 / 63
休日
しおりを挟む
パーティーの翌日は休み。
今日は珍しく、父もいる。
「お父様、お茶を一緒にしませんか? 」
「もちろんだ」
私が誘うと父は仕事を中断してお茶に付き合ってくれる。
昨日、父がキングズリーと何を話したのか気になり探りを入れるために誘った。
「お……お父様……これを……」
「なんだい? 」
「私が……初めて働いて購入したブレスレットです」
以前購入した贈り物を渡す時が来た。
いつ渡そうと思っていたら時間が過ぎてしまっていたので、いい機会。
「そんな貴重な物をくれるのかい? 」
「はい……お父様には安物でみっともないと思いますが……」
「そんなことは無い、シャルロッテからの贈り物大切に使わせてもらうよ」
父はすぐに身に着けてくれた。
公爵という立場の人が身に着けるには相応しくない代物。
今日だけだろうが、その行動が嬉しい。
「それ、私とお揃いなんです」
私も身に着けているブレスレットを見せた。
「おぉ。シャルロッテとお揃い。毎日つけるからな」
「これは安物なので……」
「金額じゃない、シャルロッテの思いが詰まったものだ」
父の嬉しそうに眺める姿に、この後自分が聞き出したいが為に贈ったと思えてしまいそうで話の切り出し方が分からない。
「学園はどうだ? 」
「慣れた……と思います」
「不安なことがあればすぐに言いなさい、私が解決する」
「ありがとうございます。今のところは……問題ないです」
「そうか? 我慢するんじゃないぞ」
「はい」
「昨日、ロヴァルト様に送られたようだが親しいのか? 」
父の方からキングズリーの話をされた。
「私の異変に気が付き、色々お世話になっております」
「記憶が無い事を話したのか? 」
「はい」
「彼はいつ気が付いたんだ?」
「……初日です」
「初日にシャルロッテの変化に気が付いたのか?」
私が迷子になって気が付かれたとは言い辛い。
「あっ……はい」
「そうか……彼はとても生徒の事を見ているんだな……どうだ? 彼は」
「えっと……素敵な先生だと思います。優しくて、いろんな場面で助けてくれるので」
「婚約者には? 」
思いがけない父の言葉に驚く。
「婚約者ですか? 」
「あぁ。私は昔、シャルロッテとロヴァルト様との婚約を考えていたんだ」
「そう……だったんですか? 」
何してんの過去の私。
絶対に、アンダーソンよりキングズリーの方が断然いい男よ。
婚約と言う重大な事は、目の肥えた父に任せておきなさいよ。
幼かったとは言え、なんて過ちを……
「シャルロッテの気持ち次第だ」
「私は……キングズリー先生と婚約出来たらと思いますが……過去の失敗から相手の気持ちを蔑ろにしたくありません」
「ロヴァルト様はシャルロッテの気持ちが大事だと話してくれたよ」
もうすでに話しているの?
父よ、行動が早い。
でも嫌いじゃないよ。
相手がキングズリーなら……
「大事に……私が、望んだら婚約が? 」
「あぁ」
「少し……考えさせてください」
「急いで結論を出す必要はない。ゆっくり考えなさい」
「はい」
父とのお茶会は終わった。
過去、見た目で婚約者を選んだことのある私だから、先生の容姿で父が乗り気になるのではないか? と再び話を持ちかけたとか?
だけど、まさか過去に父が私の婚約者に選んでいたのがキングズリーだったとは……
「私が先生と婚約したいと言ったら、本当に婚約するんだろうか? そこに先生の気持ちは? 先生が私を……ありえない」
私はこの提案を喜んでいいのだろうか?
父との会話で、キングスリー家が侯爵家だと初めて知る。
もし公爵の父が婚約を申し込んだら、侯爵家の先生は断ることが出来るのだろうか?
もしかしたら、キングスリーは私が婚約を申し込むことがないと思い私に決断を託したのではないだろうか?
ここで私が『先生と婚約します』なんて言ったら、キングスリーを困らせるだけ……
「はぁ……どうしたらいいんだろう? 」
嬉しい提案なのに……
今日は珍しく、父もいる。
「お父様、お茶を一緒にしませんか? 」
「もちろんだ」
私が誘うと父は仕事を中断してお茶に付き合ってくれる。
昨日、父がキングズリーと何を話したのか気になり探りを入れるために誘った。
「お……お父様……これを……」
「なんだい? 」
「私が……初めて働いて購入したブレスレットです」
以前購入した贈り物を渡す時が来た。
いつ渡そうと思っていたら時間が過ぎてしまっていたので、いい機会。
「そんな貴重な物をくれるのかい? 」
「はい……お父様には安物でみっともないと思いますが……」
「そんなことは無い、シャルロッテからの贈り物大切に使わせてもらうよ」
父はすぐに身に着けてくれた。
公爵という立場の人が身に着けるには相応しくない代物。
今日だけだろうが、その行動が嬉しい。
「それ、私とお揃いなんです」
私も身に着けているブレスレットを見せた。
「おぉ。シャルロッテとお揃い。毎日つけるからな」
「これは安物なので……」
「金額じゃない、シャルロッテの思いが詰まったものだ」
父の嬉しそうに眺める姿に、この後自分が聞き出したいが為に贈ったと思えてしまいそうで話の切り出し方が分からない。
「学園はどうだ? 」
「慣れた……と思います」
「不安なことがあればすぐに言いなさい、私が解決する」
「ありがとうございます。今のところは……問題ないです」
「そうか? 我慢するんじゃないぞ」
「はい」
「昨日、ロヴァルト様に送られたようだが親しいのか? 」
父の方からキングズリーの話をされた。
「私の異変に気が付き、色々お世話になっております」
「記憶が無い事を話したのか? 」
「はい」
「彼はいつ気が付いたんだ?」
「……初日です」
「初日にシャルロッテの変化に気が付いたのか?」
私が迷子になって気が付かれたとは言い辛い。
「あっ……はい」
「そうか……彼はとても生徒の事を見ているんだな……どうだ? 彼は」
「えっと……素敵な先生だと思います。優しくて、いろんな場面で助けてくれるので」
「婚約者には? 」
思いがけない父の言葉に驚く。
「婚約者ですか? 」
「あぁ。私は昔、シャルロッテとロヴァルト様との婚約を考えていたんだ」
「そう……だったんですか? 」
何してんの過去の私。
絶対に、アンダーソンよりキングズリーの方が断然いい男よ。
婚約と言う重大な事は、目の肥えた父に任せておきなさいよ。
幼かったとは言え、なんて過ちを……
「シャルロッテの気持ち次第だ」
「私は……キングズリー先生と婚約出来たらと思いますが……過去の失敗から相手の気持ちを蔑ろにしたくありません」
「ロヴァルト様はシャルロッテの気持ちが大事だと話してくれたよ」
もうすでに話しているの?
父よ、行動が早い。
でも嫌いじゃないよ。
相手がキングズリーなら……
「大事に……私が、望んだら婚約が? 」
「あぁ」
「少し……考えさせてください」
「急いで結論を出す必要はない。ゆっくり考えなさい」
「はい」
父とのお茶会は終わった。
過去、見た目で婚約者を選んだことのある私だから、先生の容姿で父が乗り気になるのではないか? と再び話を持ちかけたとか?
だけど、まさか過去に父が私の婚約者に選んでいたのがキングズリーだったとは……
「私が先生と婚約したいと言ったら、本当に婚約するんだろうか? そこに先生の気持ちは? 先生が私を……ありえない」
私はこの提案を喜んでいいのだろうか?
父との会話で、キングスリー家が侯爵家だと初めて知る。
もし公爵の父が婚約を申し込んだら、侯爵家の先生は断ることが出来るのだろうか?
もしかしたら、キングスリーは私が婚約を申し込むことがないと思い私に決断を託したのではないだろうか?
ここで私が『先生と婚約します』なんて言ったら、キングスリーを困らせるだけ……
「はぁ……どうしたらいいんだろう? 」
嬉しい提案なのに……
769
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした
柚木ゆず
恋愛
行き倒れていた3人の男女を介抱したら、その人達は8年前にわたしをお屋敷から追い出した実父と継母と腹違いの妹でした。
お父様達は貴族なのに3人だけで行動していて、しかも当時の面影がなくなるほどに全員が老けてやつれていたんです。わたしが追い出されてから今日までの間に、なにがあったのでしょうか……?
※体調の影響で一時的に感想欄を閉じております。
婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです
柚木ゆず
恋愛
コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。
ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果
柚木ゆず
恋愛
※4月27日、本編完結いたしました。明日28日より、番外編を投稿させていただきます。
姉マリエットの宝物を奪うことを悦びにしている、妹のミレーヌ。2人の両親はミレーヌを溺愛しているため咎められることはなく、マリエットはいつもそんなミレーヌに怯えていました。
ですが、ある日。とある出来事によってマリエットがミレーヌに宝物を全てあげると決めたことにより、2人の人生は大きく変わってゆくのでした。
婚約者が妹と婚約したいと言い出しましたが、わたしに妹はいないのですが?
柚木ゆず
恋愛
婚約者であるアスユト子爵家の嫡男マティウス様が、わたしとの関係を解消して妹のルナと婚約をしたいと言い出しました。
わたしには、妹なんていないのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる