【完結】浮気しておきながら婚約は継続してほしい? 何言ってるの?

天冨 七緒

文字の大きさ
61 / 63

公表

しおりを挟む
「報告が遅れましたね。私……婚約しています」

 私の宣言に会場が静まり返る。

「……え? 俺達……婚約解消していなかったのか?」

 どこまでも自分を信じている男だ。
 それは彼だけでなく、周囲も同じ反応。

『二人って婚約解消していなかったの? 』
『てっきりしているものだと……』
『そこは公爵が裏で手を回したんじゃないのか?』
『なんだよ、俺達は婚約者の痴話喧嘩に巻き込まれただけかよ』

 安堵する令息。
 反対に令嬢からは軽蔑とも取れる視線を受ける。
 男性達の都合のいい解釈が波のように広がって行く。

「はぁ……私の婚約者は……」

 溜息を吐き、彼らに真実を告げる。

「俺だ」

「「えっ? 」」

 私とアンダーソンの声が被ってしまった。
 いつの間にか私の隣にキングズリーの姿がある。
 しかも卒業式とは違う衣装。

「パーティーに間に合う予定だったんだが……色々あって遅れた」

「……来ないものと……思っていました」

 泣いてない。
 声が震えているだけ。
 本当は一人で不安だった。
 彼の姿を見た瞬間、目頭が熱くなる。
 熱くなるだけで、何度も言うが泣いてない。

「来ない訳ないだろう、婚約者の卒業パーティーに。公爵からパートナーをもぎ取ったんだ……でも、遅刻したから怒られるかもな」

 キングズリーの登場には全員が驚愕していた。
 私の婚約者がアンダーソンでない事や、本当の婚約者が教師のロヴァルト・キングズリーだったという事にこの場にいる全員が唖然としている。

「アンダーソン伯爵令息、これ以上俺の婚約者を困らせるようなことは遠慮願う」

「えっえっ……キングズリー先生が? どうして? 」

「それと、俺は今日で教師を辞職した。今後はアイゼンハワー公爵家に移り、当主になる為に公爵から色々と学ぶつもりだ」

「辞職……公爵……」

 良く考えると、父はアンダーソンに公爵となる教育をさせていなかった。
 以前から彼を信用していなかったのかもしれない……

「先生、辞職なんて私も聞いてないよ? 」

「婚約が決定した時点で公爵から話があり決めていた」

「教えてくれたらよかったのに」

「驚く顔が見たかった。それと……」

「なんですか? 」

「ドレスよく似合ってる、一番に見るのが俺じゃなくて悔しいけどな」

「……私もっ先生に一番に見てほしかった」

「シャルロッテ、俺はもう先生じゃないぞ? 」

「……ふふっ。はいっ……ロ……ヴァルト様」

 照れてしまうのは仕方がない。
 好きな人が嫉妬を見せるのだから。
 私としては見せ付けている訳ではないが、結果としてはそうなってしまっている。
 優しくて誠実なキングズリーの男の顔に令嬢達は釘付けとなっていた。

「俺達は婚約した、順次婚約発表パーティーの招待状が届くはずだ。急遽となってしまったが、多くの人に参加してほしいと思っている」

 全員がキングズリーの言葉に聞き入っていた。
 そして誰か一人が拍手すると、つられるように拍手が生れ次第に会場を包み込む。
 見計らったように王族が到着し、卒業パーティーが開始される。
 国王陛下の挨拶の最後にはダンス開始の合図が降りる。
 私達もダンスをする。

「ダンス、うまくなったな」

「先生が相手だから」

「俺は上手いからな」

「先生って意外に……」

「何だ?」

「子供っぽい……キャッ」

 子供っぽいという言葉が気に障ったのか、突然抱き寄せられ顔の距離が縮まる。

「なんだ?」

 私の視界にはキングズリーしかいない。
 一気に顔が熱くなり、心臓が激しくなる。
 
「せ……せい」

「曲……終わっちまったな」

 心臓の音が大きすぎて曲が終わった事に気が付かなかった。
 というより、ここがダンスホールだというのも忘れていた。
 
「飲み物取りに行くか?」

「……ぅん……」

 顔が熱すぎて冷たい飲み物が欲しい。
 キングズリーに手を繋がれながらダンスホールから離れる。

「お二人共、婚約おめでとうございます。それで……キングズリー先生、卒業の思い出に私と一曲お願いいたします」

 見知らぬ生徒は祝いの言葉と同時に、ちゃっかりダンスに誘っている。

「……ん? ちょっと、先生は私以外とは誰ともダンス致しませんっ」

 キングズリーの不意打ちが頭から離れず、相手がキングズリーを誘っていることに気付くのに遅れた。
 婚約を公表したので、ここぞとばかりに割って入る。

「アイゼンハワー令嬢、男性を縛り付けると『また』奪われますよ? その時は私が候補に名乗りを上げさせていただきますね」

 面と向かって喧嘩を売られた。
 婚約を発表したのにキングズリーの人気は衰えることなく、それどころか愛人候補に堂々と名乗りを挙げてくる始末。
 
「貴方、何を言っているの? 浮気なんてさせませんから」 

 愛人や浮気相手に対して不快に思っていた令嬢達は、キングズリーに対して自ら愛人・浮気相手に立候補すると宣言。
 教師の時に優しさを振りまき過ぎな結果、これからもキングズリーファンに悩まされそう。
 ひたすら優しいキングズリー先生から男らしい『俺』のキングズリーに令嬢達は心奪われている。
 婚約するつもりがない人だと諦めていた人が婚約したことで、希望? を見つけたらしい。

「婚約発表前より発表後の方がライバルが現れるってどう言うことよ……」

「キングズリー先生。私、気分が……」

 キングズリーの腕に絡みつく令嬢。
 分かりやすい、色仕掛けだ。

「ちょっと……近い、近い、離れて」
しおりを挟む
感想 58

あなたにおすすめの小説

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

わたしとの約束を守るために留学をしていた幼馴染が、知らない女性を連れて戻ってきました

柚木ゆず
恋愛
「リュクレースを世界の誰よりも幸せにするって約束を果たすには、もっと箔をつけないといけない。そのために俺、留学することにしたんだ」  名門と呼ばれている学院に入学して優秀な成績を収め、生徒会長に就任する。わたしの婚約者であるナズアリエ伯爵家の嫡男ラウルは、その2つの目標を実現するため2年前に隣国に渡りました。  そんなラウルは長期休みになっても帰国しないほど熱心に勉学に励み、成績は常に学年1位をキープ。そういった部分が評価されてついに、一番の目標だった生徒会長への就任という快挙を成し遂げたのでした。 《リュクレース、ついにやったよ! 家への報告も兼ねて2週間後に一旦帰国するから、その時に会おうね!!》  ラウルから送られてきた手紙にはそういったことが記されていて、手紙を受け取った日からずっと再会を楽しみにしていました。  でも――。  およそ2年ぶりに帰ってきたラウルは終始上から目線で振る舞うようになっていて、しかも見ず知らずの女性と一緒だったのです。  そういった別人のような態度と、予想外の事態に困惑していると――。そんなわたしに対して彼は、平然とこんなことを言い放ったのでした。 「この間はああ言っていたけど、リュクレースと結んでいる婚約は解消する。こちらにいらっしゃるマリレーヌ様が、俺の新たな婚約者だ」  ※8月5日に追記させていただきました。  少なくとも今週末まではできるだけ安静にした方がいいとのことで、しばらくしっかりとしたお礼(お返事)ができないため感想欄を閉じさせていただいております。

もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました

柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》  最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。  そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。

お姉様、今度は貴方の恋人をもらいますわ。何でも奪っていく妹はそう言っていますが、その方は私の恋人ではありませんよ?

柚木ゆず
恋愛
「すでに気付いているんですのよ。わたくしやお父様やお母様に隠れて、交際を行っていることに」 「ダーファルズ伯爵家のエドモン様は、雄々しく素敵な御方。お顔も財力も最上級な方で、興味を持ちましたの。好きに、なってしまいましたの」  私のものを何でも欲しがる、妹のニネット。今度は物ではなく人を欲しがり始め、エドモン様をもらうと言い出しました。  確かに私は、家族に隠れて交際を行っているのですが――。その方は、私にしつこく言い寄ってきていた人。恋人はエドモン様ではなく、エズラル侯爵家のフレデリク様なのです。  どうやらニネットは大きな勘違いをしているらしく、自身を溺愛するお父様とお母様の力を借りて、そんなエドモン様にアプローチをしてゆくみたいです。

どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね

柚木ゆず
恋愛
 ※今後は不定期という形ではありますが、番外編を投稿させていただきます。  あらゆる手を使われて参加を余儀なくされた、侯爵令嬢ヴァイオレット様主催のパーティー。この会には、先日婚約を破棄された私を嗤う目的があるみたいです。  けれど実は元婚約者様への好意はまったくなく、私は婚約破棄を心から喜んでいました。  そのため何を言われてもダメージはなくて、しかもこのパーティーは侯爵邸で行われる豪華なもの。高級ビュッフェなど男爵令嬢の私が普段体験できないことが沢山あるので、今夜はパーティーを楽しみたいと思います。

酒の席での戯言ですのよ。

ぽんぽこ狸
恋愛
 成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。  何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。  そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

姉のものを欲しがる性悪な妹に、墓穴を掘らせてみることにした

柚木ゆず
恋愛
 僕の婚約者であるロゼの家族は、困った人ばかりだった。  異母妹のアメリはロゼの物を欲しがって平然と奪い取り、継母ベルは実子だけを甘やかす。父親であるトムはベルに夢中で、そのためアメリの味方ばかりする。  ――そんな人達でも、家族ですので――。  それでもロゼは我慢していたのだけれど、その日、アメリ達は一線を越えてしまった。 「マエル様を欲しくなったの。お姉様の婚約者を頂戴」 「邪魔をすれば、ここにあるユリのアクセサリーを壊すわよ?」  アメリとベルは自分達の都合でこの婚約を解消させようとして、ロゼが拒否をしたら亡き母の形見を使って脅迫を始めたらしいのだ。  僕に迷惑をかけようとしたことと、形見を取り上げられたこと。それによってロゼはついに怒り、僕が我慢している理由もなくなった。  だからこれから、君達にこれまでのお礼をすることにしたんだ。アメリ、ベル、そしてトム。どうぞお楽しみに。

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

処理中です...