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近づくと遠いと感じる
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それからは昼休み、先輩の膝枕をするようになった。
どうしていつもそんなに眠いのか尋ねると、先輩は学校に黙ってバイトをしているそうだ。
先輩の秘密を知るのは嬉しい。
そんな毎日に浮かれて油断していたのかもしれない。
その光景を俺が見ていたように、誰かが観ていたなんて全く想像もしていなかった。
久しぶりに下駄箱に手紙が入っていた。
入学して直ぐは呼び出しにも応じていたが、ある時を境に行かなくなった。
行かなくなってあの事件が起きた。
呼び出しに行くのはちょっと気まずいけど、行かなかったらまた同じことが起こるかもと思うとどうするのが正しいのか分からなくなる。
悩みに悩んだけど、行くことにした。
誠実に対応したらきっと向こうも分かってくれるはず。
呼び出された場所は本校舎に近い空き部屋だった。
相手は既に部屋の中央に居た。
警戒しているのを悟られたくはないが、一応あまり中には入らず扉付近に立った。
「良かった来てくれたんだね」
相手の人は賑やかに話し始めた。
あの男とは多分違うと信じたい。
「覚えてるかな?俺は二年の石倉泰司。前に一度君に告白してるんだけど」
ヤバい、全く覚えてない。
初めましてかと思った。
とてもがたいが良い人だ。
なにか運動をしているはず。
こんな人と逢っていたとは全く記憶に無い。
「単刀直入に聞くが、瀬里崎君は叡とどんな関係なんだ」
「え?…あきら?」
あきらって人がまず分からなかった。
「叡だよ、永瀬叡分からない?」
石倉先輩の質問に素直に頷いた。
だって、本当に叡何て人知らないから。
「叡は瀬里崎君がよく昼休みに逢っている男だ」
あっ、先輩はながせあきらって言うのか。
そういえば、俺達自己紹介してなかった。
先輩もきっと俺の事知らないよね。
次逢ったとき名前覚えてもらわないと。
「それで、あいつとはどういう関係なんだ」
ついあきら先輩の事を考えて目の前にいる人の事忘れてた。
先輩との関係は…なんだろう昼休みに膝枕をしてあげる仲。
それ以上でもそれ以下でもなくそれだけの関係。
何て答えれば良いのか悩んでいると
「あいつはダメだ。あいつは誰か一人と付き合うなんてしない。君が傷付くだけだ」
先輩の全てを知っているわけではないが、少しだけなら分かる。
昼休みに色んな人とそういうことをしている。
何度も見かけた。
俺が先輩といるのは、そういう相手が居ないときだけ。
「僕は君に好きな人がいない事や、男がダメなのかなと思ったから引き下がった。無理に君と関係を持とうなんて思わなかったのに、あいつを選ぶなんて。他の誰でもなくあいつなんて。……瀬里崎君が傷付くだけだ。だから、あいつをやめて僕に」
石倉先輩は興奮して来たのか、あの日のあの男に似てきた。
両肩を掴まれると一気に恐怖が甦った。
硬直した身体と勢いで倒れてしまった。
俺を見下ろす男は野獣のように感じる。
先輩たすけてと願った。
ガラガラガラと大きな音と共に扉が勢いよく開く。
「何してるんですか。今すぐ瀬里崎君から離れてください」
先輩?と期待したが、扉付近に立っていたのは功刀だった。
それでも安心した。
第三者の侵入により石倉先輩も冷静になり、あっさりと俺は解放された。
「大丈夫?だから呼び出しに無闇に行くなって言ったろ」
心配してくれる功刀の腕にすがり付いた。
「……うん。ごめんなさい」
功刀はそれ以上何も言わずに頭を撫でてくれた。
どうしていつもそんなに眠いのか尋ねると、先輩は学校に黙ってバイトをしているそうだ。
先輩の秘密を知るのは嬉しい。
そんな毎日に浮かれて油断していたのかもしれない。
その光景を俺が見ていたように、誰かが観ていたなんて全く想像もしていなかった。
久しぶりに下駄箱に手紙が入っていた。
入学して直ぐは呼び出しにも応じていたが、ある時を境に行かなくなった。
行かなくなってあの事件が起きた。
呼び出しに行くのはちょっと気まずいけど、行かなかったらまた同じことが起こるかもと思うとどうするのが正しいのか分からなくなる。
悩みに悩んだけど、行くことにした。
誠実に対応したらきっと向こうも分かってくれるはず。
呼び出された場所は本校舎に近い空き部屋だった。
相手は既に部屋の中央に居た。
警戒しているのを悟られたくはないが、一応あまり中には入らず扉付近に立った。
「良かった来てくれたんだね」
相手の人は賑やかに話し始めた。
あの男とは多分違うと信じたい。
「覚えてるかな?俺は二年の石倉泰司。前に一度君に告白してるんだけど」
ヤバい、全く覚えてない。
初めましてかと思った。
とてもがたいが良い人だ。
なにか運動をしているはず。
こんな人と逢っていたとは全く記憶に無い。
「単刀直入に聞くが、瀬里崎君は叡とどんな関係なんだ」
「え?…あきら?」
あきらって人がまず分からなかった。
「叡だよ、永瀬叡分からない?」
石倉先輩の質問に素直に頷いた。
だって、本当に叡何て人知らないから。
「叡は瀬里崎君がよく昼休みに逢っている男だ」
あっ、先輩はながせあきらって言うのか。
そういえば、俺達自己紹介してなかった。
先輩もきっと俺の事知らないよね。
次逢ったとき名前覚えてもらわないと。
「それで、あいつとはどういう関係なんだ」
ついあきら先輩の事を考えて目の前にいる人の事忘れてた。
先輩との関係は…なんだろう昼休みに膝枕をしてあげる仲。
それ以上でもそれ以下でもなくそれだけの関係。
何て答えれば良いのか悩んでいると
「あいつはダメだ。あいつは誰か一人と付き合うなんてしない。君が傷付くだけだ」
先輩の全てを知っているわけではないが、少しだけなら分かる。
昼休みに色んな人とそういうことをしている。
何度も見かけた。
俺が先輩といるのは、そういう相手が居ないときだけ。
「僕は君に好きな人がいない事や、男がダメなのかなと思ったから引き下がった。無理に君と関係を持とうなんて思わなかったのに、あいつを選ぶなんて。他の誰でもなくあいつなんて。……瀬里崎君が傷付くだけだ。だから、あいつをやめて僕に」
石倉先輩は興奮して来たのか、あの日のあの男に似てきた。
両肩を掴まれると一気に恐怖が甦った。
硬直した身体と勢いで倒れてしまった。
俺を見下ろす男は野獣のように感じる。
先輩たすけてと願った。
ガラガラガラと大きな音と共に扉が勢いよく開く。
「何してるんですか。今すぐ瀬里崎君から離れてください」
先輩?と期待したが、扉付近に立っていたのは功刀だった。
それでも安心した。
第三者の侵入により石倉先輩も冷静になり、あっさりと俺は解放された。
「大丈夫?だから呼び出しに無闇に行くなって言ったろ」
心配してくれる功刀の腕にすがり付いた。
「……うん。ごめんなさい」
功刀はそれ以上何も言わずに頭を撫でてくれた。
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