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10.社交場
しおりを挟む正月休み最終日に、祓い屋都築の門戸を叩く者がいた。
「もう充分生きました。思い残すことはありません。ですので、都築利音さんのお力をお貸しいただきたく……」
訪ねてきたのは、妙齢の着物に身を包んだ『はざまの住人』だった。彼女は、都築に自身の消滅を願いに来たのである。それ自体は、これまでにもあった事らしい。都築利音の噂を聞いて、長過ぎる生に終止符を打ちたがる『はざまの住人』も、いなくはない。問題は、彼女が持参した手土産だった。
「とある『はざまの住人』の社交場に、最近新顔が出入りしているそうです。全身真っ白のその男は、白井と名乗っているとか。『はざまの住人』は固有名詞を持たないので珍しく、噂になっております」
彼女が持ち込んだのは、まさかの白井に繋がるかもしれない情報だったのだ。
都築が身を乗り出し、尋ねる。
「その社交場は、どこに?」
よりによってなんでそこ?
着物の女が答えた公園は、この辺では有名なハッテン場だった。蘭太でさえ知っている。白井は、そこに深夜になると現れるという。
はじめ、蘭太は置いて行かれそうになった。深夜だし、危ないからと。それを言うなら都築だってそうだ。しかも都築は男の蘭太から見てもイケメンフェイス。危ない。危な過ぎる。蘭太は強引に押し切ってついて来た。絶対に離れないでとしっかり言い含められはしたが。ていうか、
「黒井さんは普通の人には視えないんだから、むしろ都築さんと僕とでカップルっぽく振る舞えばよいのでは?」
「天才か?」
即採用された。
これなら声を掛けられずに白井を捜せるかもしれない。
そもそも、本当にこの公園がハッテン場だと決まったわけではなーー現実は甘くなかった。
「つ、都築さ……」
「しっ、見ちゃだめ」
カップルっぽくとか考えるまでもなく、蘭太は都築の腕にしがみついた。
「つーかあれ、現世の人間じゃなくて俺らがハッテンしてないか? 『はざまの住人』だろあれ」
と、平然とハッテンしている男達を見ながら黒井が言う。
「えーー」
ということは。ここは『はざまの住人』の社交場という名の『はざまの住人』にとってのハッテン場でもあるのでは?
「そもそも『はざまの住人』って生殖機能あるんですか?」
「ない。はざまの住人は『無』から生まれる。でも男性器は勃つし射精の真似事もできるから、やろうと思えばセックスできる」
「え、じゃあやばくないですか? 黒井さん、今一人ですよ。狙われません?」
「黒井……おまえの犠牲は忘れない」
「何言ってるんだ? くっついてるお前らのそばを会話しながら歩いてるんだぞ。現世のゲイはおまえらをカップルだと思っても、『はざまの住人』からは俺らこれから3Pなんだと思われてるわ」
「さんぴー!?」
「やめて! 蘭太くんの口から言われるとなんかすごい胸がざわつく!」
「騒ぐな。白井を捜せ」
公園内を歩き回ってみたが、この暗闇では目立つであろう白井の姿は見つからず。
「空振りか」
「今日はたまたまいなかっただけかもしれないですよね」
「毎日来てるわけでもないだろうしねえ」
明日また出直すということで、今回は一旦帰ることとなった。
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