召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

文字の大きさ
5 / 188
第一章「冒険者編」

第五話「狩場を求めて」

しおりを挟む

 冒険者ギルドの建物と隣接するように建つ木造の宿に入る。どうやらこの建物は冒険者ギルドが経営しているらしい。受付の男性に宿代の確認をすると、一泊10ゴールドで宿泊出来る事が分かった。朝食も料金に含まれるらしく、追加で4ゴールド支払えば夕食も食べられるのだとか。

 まずは一泊だけ泊まる事にした。どうやら宿の受付でもギルドカードが必要らしく、身分を証明した者だけが宿泊する事が出来るのだとか。カウンターの上に置かれている石版にギルドカードをかざす。すると石版は静かに輝き始め、石版には光の文字で俺のステータスが浮かんだ。

 代金を支払い、鍵を受け取って階段を上がる。部屋は二階の四号室だ。木製の扉を開き、室内に入る。日当たりが良い部屋で、広さは大体四畳程だろうか。少し狭いが、値段が安いのでこれくらいが妥当だろう。天井にはランプが付いており、ランプの中では魔法の炎が楽しそうに揺れている。家具は必要最低限の物だけで、シングルサイズのベッドとテーブルのみだ。

 室内には浴室もある。湯船にはガーゴイルの石像が設置されており、石像に手を触れるだけでお湯が流れ出す。火の魔法と水の魔法が掛かっているのだろう。きっとこの石像はマジックアイテムに違いない。

 剣とガントレットを外し、鞄からパンを取り出した。小腹がすいていたので、パンを一口齧った。キングが俺のパンを見つめていたので、小さく裂いてキングに渡すと、彼は嬉しそうにパンを食べ始めた。

 久しぶりにベッドに横になった。村を出てから北の街道を越え、墓地でキングと出会った。まさか俺が召喚士になるとは思わなかったが、キングとの出会いを大切にしながら、冒険者として生きていこう。それに、実力もないのにレベルだけが高くなってしまった。自分自身のレベルに見合う冒険者にならなければならない。

 だが、冒険の旅に出たのは正解だった。田舎の村で生まれてから、外の世界も知らずに、冒険者になる夢を叶える事も出来なかった。成人を迎えて直ぐに旅に出たのは、俺自身の視野を大きく広げるきっかけになった。墓地でのスケルトンとの戦闘もいい思い出だ。更に強くなるために、剣の腕を磨き、魔法を習得する必要がありそうだ。

 今日は早めに休む事にした。明日からもまた忙しくなるだろう。明日はキングと共に魔物を狩り、お金を稼がなければならないからな……俺はキングの小さな体を抱きしめながら眠りに就いた。


〈翌朝〉

 随分朝早くに目が覚めた。母と共に働いていた時の習慣だ。まずは朝食を食べてから、キングと共に狩りに出る。

「キング。朝ごはんを食べに行こうか」
「ゴハン……?」
「そう。食事だよ。ゴハンを食べないと動けないだろう?」
「ワカッタ……」

 キングはまだこの世界の常識や言葉を知らない様だ。ショートソードを腰に差し、ガントレットを身に付け、鞄を背負ってから部屋を出た。階段を下りて宿の一階に降りる。今は朝の六時だ。宿の一階は食堂兼受付だ。食堂に入ると、宿の主人が朝食を作っていた。

「昨日はよく眠れたかな?」
「はい。ゆっくり休めました」
「今ご飯を作ってるから、好きな席で座って待っていてくれ」
「分かりました」

 俺とキングは食堂の空いてる席に腰を掛けた。食堂には険者ギルドの犬耳のお姉さんが居た。目が合ったので手を振っておく。確か彼女はレベル21のシンディ・ブラフォードだ。しばらくすると宿屋の主人が料理を運んできた。久しぶりにパン以外の食事だ。

 今日のメニューは鶏肉の照り焼きだった。肉をナイフで切り、キングに差し出すと、彼は美味しそうに食べ始めた。俺達が食事をしていると、ギルドのお姉さんが隣の席に座った。

「おはよう、サシャ。今日は狩りに行くつもり?」
「おはようございます。ブラフォードさん! そうですね、今日はキングと共に狩りに行くつもりですよ。だけど、狩場が分からないので、町の周辺を見て回ろうかと思っています」
「それなら……町からほど近い位置に廃坑があるんだけど、どうかな? 私も駆け出しの
冒険者の頃は廃坑で狩りをしていたんだよ。サシャのレベルなら、相手が弱すぎて退屈かもしれないけど」
「いいえ。俺はまだ一度しか魔物と戦った事が無いので。廃坑というのはどんな魔物が湧くんですか?」
「アンデッド系の魔物を中心に、スライムやゴブリンなんかも出るわね。低レベルの魔物の巣になっているの。廃坑の入り口は、町の北口から出てすぐの所にあるわ」
「色々教えて下さってありがとうございます! ブラフォードさん!」
「どういたしまして。それから、私の事はシンディって呼んでくれるかな……?」

 シンディさんは茶色のモフモフした耳を恥ずかしそうに垂らしながら俺を見つめている。革製の鎧を装備しているが、防具の上からでも彼女の豊かな体つきが分かる。やはり人間とは違う生き物なのだろうか。尻尾を楽しそうに振りながら、彼女は俺の手を握った。

「シンディさん。それでは、俺達は廃坑で狩りをする事にしますね。また冒険者ギルドでお会いしましょう」
「ええ。いってらっしゃ」

 シンディさんに挨拶をすると、宿の主人に朝食のお礼を述べてから宿を出た。朝の町は早朝だと言うのに活気があり、冒険者達が旅の準備や防具の点検等をしている。行商人の数も多く、荷物の搬入や売買を行っている。朝から随分活気が良い町なんだな。

 フィッツ町の北口を出て廃坑に向う。暫く森を進むと廃坑の入り口が見えてきた。廃坑に勤務していた人が暮らしていた住宅だろうか。木造のボロ屋が四軒建っている。ボロ屋の中は暗くて見えないが、目ぼしいアイテムは無いだろう。更に奥に進むと廃坑の入り口を見つけた……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

処理中です...