召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

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第一章「冒険者編」

第二十一話「父の遺品と町長の気持ち」

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〈シャーローンの武器店〉

「シーローンさん、注文の品を頂きに来ました」
「待っていたぞ。首飾りが二つ。最高の出来だ」
「え? 二つですか?」
「ああ、金属が余ったから二つ作っておいたよ。ハーピーの彼女とお揃いだ。いいだろう?」
「わざわざありがとうございます! それでは頂戴しますね」

 片方は男物で、銀細工が施されている首飾りだった。首飾りの中央にはオニキスが埋め込まれている。やや無骨だが立派な装飾品だ。もう片方は女物で、こちらは複雑な銀細工と金細工が施されている。ひと目見ても高価な首飾りだという事が分かる。首飾りの中央にはエメラルドが嵌め込まれている。

 首飾りをルナの首に付けると、ルナは俺の頬に口づけをした。宝飾品を貰った事が嬉しかったのだろう。俺の体を強く抱きしめると、何度も俺の頬に接吻をした。ルナの豊かな胸が俺の体に当たる。信じられない程柔らかくて暖かい。

「サシャ……ありがとう!」
「良いんだよ。俺とルナがお揃いの首飾りか……何だか恥ずかしいね」
「どうして恥ずかしいの?」
「女の子とお揃いの物なんて初めてなんだよ」
「そうなんだ。私は嬉しいけどな。サシャとお揃い!」

 ルナは上機嫌で俺の手を握ると、キングは寂しそうに俺を見つめた。キングの頭を撫でると、キングは満足そうに微笑んだ。キングにも何か新しい装備を与えよう。実は俺キングのための装備にはアイディアがある。キングにはアースウォールの魔法を応用して装備を作るするつもりだ。土を使って壁を作れるなら、溶かした金属に魔力を注げば、装備を作る事も出来るだろう。

 俺はシャーローンさんから装飾品の作成に必要な彫金の道具や、武器や防具の作成に必要な鋳造の道具も買い取った。それから俺達は旅立ちの日まで入念に準備をした。ゲルストナーは自分の店をたたみ、店の商品の中から召喚のための素材を譲ってくれた。以前ゲルストナーから借りたお金も返しておいた。これで旅の準備は完璧だ。あとは出発日まで剣と魔法の訓練を行う。

 フィッツ町を守る仲間達と共に廃坑に入り、戦い方を教えた。アースウォールの魔法も毎日百回以上使用し、魔力の強化をしながら、魔法を使う感覚を体に覚えさせた。体力を付けるために、朝の四時から走り込み、素振りを二時間行った後、筋力のトレーニングを行う。早朝から五時間ほど徹底的に鍛え、傷ついた筋肉を回復させるために、大量の食事を摂取した。これを出発日までの日課にし、少しでもキングやルナの強さに追いつくために、俺は死に物狂いで努力を重ねた……。


 ついに旅に出る時が来た。目的地はアルテミス王国。馬車で移動すれば三ヶ月程掛かるらしい。ゲルストナーは冒険者時代に、何度かフィッツ町とアルテミス王国を往復した事があるらしいが、途中で高レベルの魔物が湧いて難儀したと言っていた。宿を出ると、宿の前には町長が立っていた。

「ボリンガー様。騎士団の拠点も出来てこの町の警護は完璧です! 色々とありがとうございます」
「お役に立てたなら光栄です。俺達はこれから旅に出る事にします。また戻ってきた時はもう一度宴をしましょう」
「そうですね。旅の出発の記念に、贈り物を用意しました、 ボリンガー様のお父上がグラディエーターをなさっていたとの事で、町で一番の鍛冶職人に最高のグラディウスを用意させました」

 俺は町長から一振りのグラディウスを頂き、腰に差した。父と同じタイプの武器か。これは嬉しい贈り物だ。俺達は町長に別れを告げると、宿の前に停めておいたユニコーンの幌馬車に乗り込んだ。

 町の馬車職人に作らせた幌馬車だ。ユニコーンと馬車を連結させる金具のすぐ後ろ側には二人がけの御者台があり、馬車の荷台には荷物や人を乗せる空間がある。広さ的には大人六人以上は乗れるだろう。俺とルナは御者台に乗り込むと、キングとゲルストナーが荷台に乗った。俺達は町の人達に見送られながらフィッツ町を出た……。


 フィッツ町を出発してから五日経過した。旅は至って順調だ。移動の間に何度か魔物からの奇襲を受けたが、御者台に座っているルナが撃退した。そう言えば、ゲルストナーは町で暮らしていた時にはローブを着ていたが、旅に出てからはメイルを装備している。装備だけ見れば明らかに戦士に見える。

「ゲルストナー。確か昔は冒険者をしていたと言ってましたよね」
「敬語は使わなくていいぞ。うむ、昔は戦士としてパーティーを組んで旅をしていた。十年前に引退して、魔法動物の育成士としてフィッツ町に店を構えたのだ」
「そうだったんだね。どうりで立派な装備だと思ったよ」
「若い頃の装備なんだが、今着てみると随分重いよ。年を取ったのだろうか……」

 一度ギルドカードでゲルストナーのステータスを確認してみよう。

『育成士 LV39 ゲルストナー・ブラック』
 所属:ボリンガー騎士団
 武器:鋼鉄のロングソード
 防具:丈夫な花崗岩のライトメイル・ガントレット・グリーヴ
 装飾品:育成士の指環 再生の首飾り
 魔法:ガード スラッシュ ハック ハウリング 鑑定
 効果:丈夫(防御力上昇、耐久性上昇)

 驚異的な魔法のバリエーションだ。剣技も魔法の項目に表示されているのは、魔力を込めた攻撃だらなのだとか。これなら安心して前衛を任せられるだろう。俺はゲルストナーのステータスを見て実感した。旅のメンバーで一番弱いのは俺だ。間違いない。レベルは高いが俺は戦い方を知らない。攻撃に使える魔法を考えなければならないな……。
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