魔石物語 - 魔石ガチャとモンスター娘のハーレムパーティーで成り上がり -

花京院 光

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第一章「冒険者編」

第六話「魔法都市での生活」

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 木刀が一振り、レザーメイルが一着。それからホワイトベアのぬいぐるみが一つ。竹槍が一本、学習セット(羊皮紙・羽ペン・インク)が一セット。最後にレザーブーツが出た。

 俺はレザーブーツをローラに履かせると、ローラは何度も俺に感謝の言葉を述べて喜んだ。そんな様子をシャルロッテは不満そうに見つめている。竹槍や木刀は予備の武器として保管しておこう。それからレザーメイルは俺が装備する事にした。学習セットは特に使い道も無さそうだが、持っていればいつか使う事もあるだろう。

 手に入れたアイテムをマジックバッグに仕舞い、最後にホワイトベアのぬいぐるみを持つと、シャルロッテが物欲しそうな目でぬいぐるみを見つめた。

「これが欲しいのかい?」
「いらないわよ……。子供じゃないんだし……」
「そう……」

 ホワイトベアのぬいぐるみを鞄に仕舞うと、シャルロッテは寂しそうに俯いたので、俺は再びぬいぐるみを取り出してシャルロッテに渡した。シャルロッテは目に涙を浮かべて俺を見上げると、俺は彼女のモフモフした頭を撫でた。ついに美しい猫耳に触れる事が出来た。柔らかくてとても温かい。暫く彼女の頭をモフモフしていると、シャルロッテは嬉しそうにホワイトベアのぬいぐるみを抱きしめた。

「昔こういうぬいぐるみを持っていたの。冒険者になると決めてから、旅に必要ない物は全て実家に置いてきたのだけど、なんだか懐かしくて……」
「ホワイトベアもシャルロッテと居られて嬉しいと思うよ」
「もう……。そんなに子供じゃないもん……」
「ところでシャルロッテは何歳なんだい?」
「私は十五歳よ。ギルベルトは」
「俺も十五歳だよ。成人を迎えてすぐに旅に出たんだ」
「私、体の小さなケットシーと人間のハーフだから、普通の人間よりも背が低いの。だから子供みたいな扱いを受ける事が多かったのだけど……。今日は私を信じて狩りをしてくれてありがとう!」
「当たり前じゃないか。シャルロッテは俺達の頼れる魔術師だからね。遠距離からウィンドショットの魔法を使ってくれたから、狩りが随分楽だったよ」
「本当? ギルベルトの役に立てたのなら嬉しいわ! 私、力も弱いし、体力も無いから敵と剣を交える事も苦手で……。だから魔術師になりたかったの」
「シャルロッテの魔法は素晴らしいよ。素早く動くスライムを的確に捉える事が出来るんだからね。もし良かったら、明日も一緒に狩りをしてくれないかな?」
「ええ! 私達、暫くパーティーを組んでいましょう!」

 シャルロッテが手を差し出すと、俺は彼女の小さな手を握った。ローラはシャルロッテを抱きしめ、彼女の頬に何度も頬ずりをした。モンスター時代の名残だろうか? ローラは暫く頬ずりをすると、やっと気が済んだのか、シャルロッテから離れた。

「ギルベルト……。ローラはもう眠いよ。スライムの頃はこんなに動く事はなかったから……」
「疲れたんだね。先に休んでも良いよ」
「おやすみ……。ギルベルト」

 ローラはすっかり疲れてしまったのか、俺の肩にもたれ掛かって眠り始めた。俺はそんなローラを背負い、ヘルゲンに向かって歩き始めた。春の涼しい森をゆっくりと歩き、シャルロッテと他愛のない話をする。一時間ほど森を進むと、魔法都市ヘルゲンに到着した。

 それからすぐに冒険者ギルドに向かい、スライムの討伐数を報告した。三十体討伐したので、今日の報酬は百八十ゴールドだ。俺は百ゴールドをシャルロッテに渡し、残りの八十ゴールドを懐に収めた。一日働いて八十ゴールドとは随分稼ぎが少ないが、初めて自分の力でお金を稼げた事に喜びを感じた。

 金額は確かに少ないが、仲間と力を合わせて、冒険者としてお金を稼いだ事に意味があるのだ。初めての狩りだったから、効率良くモンスターを狩る事は出来なかったが、それでもシャルロッテやローラ助けてくれたので、予想よりも遥かに多くのモンスターを討伐する事が出来た。

 魔法都市に来てから、一歩ずつ自分の足で人生を歩んでいる実感が出来て、常に幸せを感じる。これが自分の人生を切り開く感覚なんだ。稼ぎは重要じゃない、好きな職業に就いて少しでもお金を稼ぎ、仲間達と楽しく暮らす事が大切なんだ……。

「それで、これからどうするつもり?」
「そうだね……。八十ゴールドでは宿に泊まれないだろうし、町の外で野営するしかないかな」
「確か町の宿って、一泊三百ゴールドくらいよね」
「そうだね。スライムを大量に狩れる様になるまで、暫くは野宿するしかないのかな。もしくは、より高難易度のクエストを受けるか」
「私達にはまだ厳しいんじゃない? 装備だって整ってないし」
「そうだね。せめてシャルロッテとローラに杖があれば、魔法の威力も上がると思うんだけど」
「そうね。杖を手に入れるまでは、地道にスライムを狩り続けましょう。焦ってはだめよ、ギルベルト」
「そう! 焦ったらだめ! 白猫ちゃんの言うとおりだよ。ギルベルト」
「誰が白猫ちゃんよ……」

 ローラがからかうと、シャルロッテは顔を赤らめてローラを見つめた。旅の間は毎日野営をしていたが、暫くはヘルゲンからほど近いの森の中で過ごすとしよう。俺はなけなしのお金で夕食を買い込んだ。ローラが食べたいとねだった大きな堅焼きパンが二つ。それから食べ応えのある乾燥肉の塊が一つ。最後に小さなチーズを一切れ買うと、八十ゴールド全てを使い果たしてしまった。

 お金は一切無いが、ローラの笑顔を見ていると何だが心が暖かくなる。今の生活は決して豊かとは言えないが、こうして素晴らしい仲間達と出会えた事は何よりの幸福だ。仲間達が裕福に暮らせる様に、更に力を付けてモンスターを狩れる冒険者になろう。

 シャルロッテは五十ゴールドを貯金し、残りの五十ゴールドで格安の葡萄酒とスパゲッティを購入した。スパゲッティはトマトソースで味付けされており、量がとても多いものだ。冒険者ギルドの酒場で作られた料理で、ギルドメンバーは格安で食べる事が出来るのだとか。

 すっかり日が暮れたヘルゲンの町を、シャルロッテとローラと共に歩く。ローラは見るもの全てが新鮮なのか、ゆっくりと町を眺めている。北口を目指して町を歩くと、立派な深紅色のドレスを着た、金髪ツインテールの少女が立ちはだかった。

 背後には執事だろうか、燕尾服を着た二十代前半程の女性が立っている。少女はシャルロッテが大切そうに持っているホワイトベアのぬいぐるみを見つめ、それから俺を見上げた。身長は百四十センチ程だろうか。つり目気味の三白眼にサファイアの瞳が美しい。

「ちょっとそこの平民! 可愛らしい人形を持ってるじゃない。それ、私に譲りなさいよ」
「平民? どうして私が譲らなければならないの?」
「私が欲しいからよ! そのぬいぐるみを言い値で買うわ!」
「これはギルベルトがくれた物なんだから、あなたになんてあげないわ!」

 シャルロッテが断ると、少女は目に涙を浮かべた。背後に控えていた執事が少女をなだめると、俺はマジックバッグからホワイトベアのぬいぐるみを取り出した。

「お嬢さん。これが欲しいのでしょう? 一つ余っているからあげるよ」
「本当か? お前は良い平民だな! アンネや、この者に謝礼を渡して頂戴な」
「千ゴールド程度で宜しいでしょうか?」
「え? お金は要りませんよ。余っていた物ですし……」
「そういう訳にもいきません!」
「お前は本当に善良な市民だな! アンネ。無理やりにでもお金を渡すのだ。フロイデンベルグ公爵家の娘である私が、平民からタダで物を貰う訳にはいかないからな!」
「はっ! ヴェロニカお嬢様」

 長い赤髪を綺麗に纏めた執事は俺の鞄に無理やりお金をねじ込むと、柔和な笑みを浮かべて俺の肩に手を置いた。シャルロッテが頬を膨らませて俺を見つめると、ヴェロニカお嬢様なる人物は満面の笑みを浮かべて俺の手を握った。

「平民よ! 何か可愛い物を見つけたらいつでも私を尋ねてくるのだ! 私は可愛い物に目がなくてな! それではまたな!」

 お嬢様と執事が楽しそうに去ってゆくと、俺は突然の出来事に唖然としてしまった。公爵家? という事は貴族だろうか。貴族相手に頭も下げず、ため口をきいてしまった……。とんでもなく無礼な振舞いをしてしまったのではないだろうか。しかし、余っていたホワイトベアのぬいぐるみが千ゴールドになるとは!

「もう! どうして見ず知らずの女の子にぬいぐるみをあげたのよ!」
「一つ余っていたからね。欲しがってたんだから良いじゃないか」
「貴族はいつも偉そうで気に入らないわね。だけど、ガチャで手に入れた物が千ゴールドになるなんて。本当に運が良いわ!」
「これもシャルロッテとローラが狩りを手伝ってくれたからだよ」

 俺は五百ゴールドをシャルロッテに渡すと、シャルロッテは呆然と俺を見上げた。

「どうして……? ギルベルトが受け取ったお金なのに。私に五百ゴールドもくれるの?」
「皆で集めた魔石で得たアイテムじゃないか。だから報酬はなるべく平等に分けたいんだ」
「ギルベルトは本当に優しいのね。ありがとう。このお金で宿に泊まらせて貰うわね」
「ああ。安い宿を探しに行こうか」

 俺達は予想外の収入に喜びながら、ゆっくりと夕方のヘルゲンの町を歩き、安く宿泊出来る宿を探し始めた……。
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