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第一章「冒険者編」
第七話「ローラとの時間」
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それからギルド区を歩き、安い宿を探して回った。ギルドが立ち並ぶエリアから離れる程、宿泊費の安い宿が見つかった。一泊二百ゴールドという格安の宿を見つけたので、俺達は迷わず宿に入り、二部屋借りる事にした。俺とローラで一部屋、シャルロッテが一部屋使う。
ローラが『みんなで泊まれば二百ゴールドで済む』と言ったが、流石に出会ったばかりのシャルロッテと同じ部屋を使う事は出来ないので、俺とシャルロッテは別々の部屋を使う事になったのだ。
「それじゃギルベルト。明日の朝七時にロビーで待ち合わせましょう」
「わかったよ。それじゃまた明日」
「またね。シャルロッテ」
俺とローラはシャルロッテと別れ、自分達の部屋に入った。俺達の部屋は二階の一番奥の部屋だ。部屋の扉を開けると、狭いが雰囲気の良い空間が広がっていた。天井付近には小さな魔石が浮いており、魔石の中には魔法の炎が灯っている。魔法の炎が古ぼけた家具を照らし、幻想的な雰囲気を醸し出している。
室内にはボロボロになったソファと小さなベッドが置かれている。それから浴室もあるみたいだ。二百ゴールドで浴室付きの宿が利用出来るとは、何と運が良いのだろうか。俺達は狩りで汚れた体を洗うために、まずは風呂に入る事にした。
ローラは俺の前に居るにも拘らず、豪快にレザーメイルを脱ぎ捨て、浴室に入った。人間としての知識が無いから風呂の入り方が分からないみたいだ。湯も張っていない浴槽に入り、体を舐め回している。やはり常識から教えなければならないんだな……。
「ローラ。ここはお湯に浸かる場所なんだよ。まずはお湯を入れようか」
「どうやってお湯を入れるの?」
「ここにガーゴイルの像があるだろう? 右の翼を捻ると水が出て、左の翼を捻るとお湯が出るんだよ。これは水とお湯を作り出すマジックアイテムなんだ」
「知らなかった! 翼を捻ったら良いんだね!」
ローラが左の翼を捻ると、大理石の様な肌をしたガーゴイルの像の口からはお湯が流れ出した。ローラ一人では体を洗う意味すら分からないと思ったので、二人でお風呂に入る事にした。
ローラの豊かな胸を見ない様に目を隠し、ローラの隣に腰を下ろす。ローラは俺の体にペタペタと触れると、突然俺の唇に自分の唇を重ねた。何が起こっているんだ? 俺の胸にはローラの豊かな胸が当たっている。何と柔らかい感触なのだろうか。俺は思わずローラの顔を掴んで引き離してしまった。
「ギルベルトはローラの事が嫌いなの……?」
「まさか。俺はローラの事が好きだよ」
「ローラはギルベルトのゴールデンスライムなんだからね……。ローラの事大切にしてね……」
「当たり前じゃないか。だけど、こういう事は恋人同士がするんだよ」
「恋人? ローラはギルベルトの恋人じゃないの?」
「ああ。勿論違うよ」
「そうなんだ……。どうしたら恋人になれるの?」
「お互いの事を好きになったら恋人になれるんだよ」
「じゃあ私達は恋人だね! ギルベルトがローラの事を助けてくれた時、ローラはギルベルトの事が好きになったの!」
きっとローラの好きは恋愛感情ではない。人間としての思考を理解していない相手に、恋愛とは何かという事を教える事は非常に難しい。俺はローラの頭を撫でると、彼女は俺の体を抱きしめた。ローラの大きな胸が俺の体に当たり、視線を落とすと豊かな胸の谷間が見えた。相手はモンスターなのだから興奮してはいけない……。相手はゴールデンスライムなんだ……。
『ギルベルト。もしかしてモンスター相手に興奮しているの?』
「まさか、何を言っているんだい?」
『ガチャに嘘は通じないもんね』
美しい銀色の指環は楽しげに輝くと、脳裏のガチャの声が響いた。まるで俺をからかうように、俺の心境を的確に言い当てるのだ。
「今変な声が聞こえた!」
『それはギルベルトに触れているからだよ。僕は魔石ガチャ。錬金術師のジェラルド・ベルギウスに作られたのさ!』
「変なの」
『ちょっと! 本当に失礼なスライムだな……。誰のお陰で人間になれたと思っているんだい?』
「ギルベルトのおかげだよ」
『君が人間になれたのは僕の力のお陰なんだからな! そこのところを勘違いしてもらっては困るよ!』
「ギルベルトのおかげだもん!」
ローラは俺の強く抱きしめると、俺は思わずローラの体を引き離してしまった。すると、ローラは目に大粒の涙を浮かべ、悲しそうに俯いた。なんだか小さい子供を虐めているみたいで悲しくなってきたな。
『人間化したモンスターの扱いはとても難しいんだよ。僕の事を作ってくれたジェラルドが言っていたけど、人間化したモンスターに殺された人も居るんだってさ』
「怖い事を言うなよ……」
『モンスターは人間よりも繊細なのかもしれないね。好きなものは好き。嫌いなものは嫌い。性格がはっきりしているから、人間の様に様々な人種が共存する事も出来ないんだ。モンスター間でも争いが起きるのは、自分とは異なる者の存在を認められないからなんだよ』
俺は涙を浮かべるローラを抱き寄せると、彼女が満足するまで頭を撫でた。ガチャの精確な正体は分からないが、発言の内容から察するに知能は俺よりも高いのだろう。それに、かなりユーモアもある。ガチャとは長い付き合いになりそうだ。
『長い付き合いじゃなくて、ギルベルトは死ぬまで僕と一緒に居るんだよ。勿論、ローラも一緒さ』
「本当? ローラも一緒に居て良いの?」
「ああ。ガチャもローラもずっと一緒だよ」
それから俺はタオルに石けんを付け、ローラの体を隅々までこすった。肌は陶器の様に美しく、透き通る白い肌に見とれてしまった。ローラはタオルがくすぐったいのか、楽しそうに笑い出すと、何だか俺も面白くなって笑い出してしまった。相手がモンスターでも興奮するのは仕方がない事なんだ。どう見ても人間にしか見えないのだからな。
元々ゴールデンスライムだったんだ。これから人間としての生き方をゆっくりと教えれば良い。俺はローラの美しい金色の髪を洗うと、ローラは気持ち良さそうに目を瞑った。そんなローラが愛おしくなり、俺はローラを強く抱きしめた。
旅に出てから無数のモンスターから追い回され、大金をはたいて購入した剣も失った。ゴブリンすら狩れない自分の弱さを知り、冒険者になる事を不安に思った。故郷では同世代の友達よりも力も弱く、頭も悪かった。生まれ持った魔力も低いから、魔法を使ってもゴブリン一体すら倒せなかった。
同世代の村人はパーティーを組んで村の近くに巣食うモンスターを狩り、村人を守っていた。ろくにモンスターと戦えない俺は、いつも『役立たずのギルベルト』と言われていた。確かに俺は役立たずだった。だが、俺はスライムの集団から暴行を受けるローラを見て、勇気を振り絞ったのだ。
不当に暴力を受けるローラを助けられるなら、死んでも良いと思った。俺みたいなちっぽけな人間が一人死のうが、世の中にはなんの影響もないと思った。しかし、スライムの前に立ち、ローラを抱き上げた時、不思議と力が湧いてきたのだ。
活力とでも言うのだろうか。何が何でもスライムを蹴散らし、ローラを守りきると決意した。案の定、力の無い俺はスライムの集団からひどい暴行を受けたが、それでも何とかローラを守り切った。最高の気分だった。役立たずと言われていた俺が、自分の力で命を救ったのだから。
「ギルベルト。これからもローラの事を守ってね」
「勿論。ローラは俺が守るよ」
俺はローラの頬に口づけをすると、彼女は満面の笑みを浮かべた。それから俺はローラと共に浴室を出て、彼女の長く美しい髪をゆっくりと乾かした。ファイアの魔法を弱めて熱風を髪に当てると、効率良く髪を乾かす事が出来るのだ。
それからローラは俺の髪をタオルで乾かしてくれると、疲れ切っていた俺の心が暖かくなった。もう一人じゃないんだ……。守らなければならない仲間が居る。俺を助けてくれるシャルロッテも居る。冒険者として成り上がり、二人から受けた恩を返そう。俺はそう心に誓うと、町で購入した食料を取り出し、二人で細やかな宴を開く事にした……。
ローラが『みんなで泊まれば二百ゴールドで済む』と言ったが、流石に出会ったばかりのシャルロッテと同じ部屋を使う事は出来ないので、俺とシャルロッテは別々の部屋を使う事になったのだ。
「それじゃギルベルト。明日の朝七時にロビーで待ち合わせましょう」
「わかったよ。それじゃまた明日」
「またね。シャルロッテ」
俺とローラはシャルロッテと別れ、自分達の部屋に入った。俺達の部屋は二階の一番奥の部屋だ。部屋の扉を開けると、狭いが雰囲気の良い空間が広がっていた。天井付近には小さな魔石が浮いており、魔石の中には魔法の炎が灯っている。魔法の炎が古ぼけた家具を照らし、幻想的な雰囲気を醸し出している。
室内にはボロボロになったソファと小さなベッドが置かれている。それから浴室もあるみたいだ。二百ゴールドで浴室付きの宿が利用出来るとは、何と運が良いのだろうか。俺達は狩りで汚れた体を洗うために、まずは風呂に入る事にした。
ローラは俺の前に居るにも拘らず、豪快にレザーメイルを脱ぎ捨て、浴室に入った。人間としての知識が無いから風呂の入り方が分からないみたいだ。湯も張っていない浴槽に入り、体を舐め回している。やはり常識から教えなければならないんだな……。
「ローラ。ここはお湯に浸かる場所なんだよ。まずはお湯を入れようか」
「どうやってお湯を入れるの?」
「ここにガーゴイルの像があるだろう? 右の翼を捻ると水が出て、左の翼を捻るとお湯が出るんだよ。これは水とお湯を作り出すマジックアイテムなんだ」
「知らなかった! 翼を捻ったら良いんだね!」
ローラが左の翼を捻ると、大理石の様な肌をしたガーゴイルの像の口からはお湯が流れ出した。ローラ一人では体を洗う意味すら分からないと思ったので、二人でお風呂に入る事にした。
ローラの豊かな胸を見ない様に目を隠し、ローラの隣に腰を下ろす。ローラは俺の体にペタペタと触れると、突然俺の唇に自分の唇を重ねた。何が起こっているんだ? 俺の胸にはローラの豊かな胸が当たっている。何と柔らかい感触なのだろうか。俺は思わずローラの顔を掴んで引き離してしまった。
「ギルベルトはローラの事が嫌いなの……?」
「まさか。俺はローラの事が好きだよ」
「ローラはギルベルトのゴールデンスライムなんだからね……。ローラの事大切にしてね……」
「当たり前じゃないか。だけど、こういう事は恋人同士がするんだよ」
「恋人? ローラはギルベルトの恋人じゃないの?」
「ああ。勿論違うよ」
「そうなんだ……。どうしたら恋人になれるの?」
「お互いの事を好きになったら恋人になれるんだよ」
「じゃあ私達は恋人だね! ギルベルトがローラの事を助けてくれた時、ローラはギルベルトの事が好きになったの!」
きっとローラの好きは恋愛感情ではない。人間としての思考を理解していない相手に、恋愛とは何かという事を教える事は非常に難しい。俺はローラの頭を撫でると、彼女は俺の体を抱きしめた。ローラの大きな胸が俺の体に当たり、視線を落とすと豊かな胸の谷間が見えた。相手はモンスターなのだから興奮してはいけない……。相手はゴールデンスライムなんだ……。
『ギルベルト。もしかしてモンスター相手に興奮しているの?』
「まさか、何を言っているんだい?」
『ガチャに嘘は通じないもんね』
美しい銀色の指環は楽しげに輝くと、脳裏のガチャの声が響いた。まるで俺をからかうように、俺の心境を的確に言い当てるのだ。
「今変な声が聞こえた!」
『それはギルベルトに触れているからだよ。僕は魔石ガチャ。錬金術師のジェラルド・ベルギウスに作られたのさ!』
「変なの」
『ちょっと! 本当に失礼なスライムだな……。誰のお陰で人間になれたと思っているんだい?』
「ギルベルトのおかげだよ」
『君が人間になれたのは僕の力のお陰なんだからな! そこのところを勘違いしてもらっては困るよ!』
「ギルベルトのおかげだもん!」
ローラは俺の強く抱きしめると、俺は思わずローラの体を引き離してしまった。すると、ローラは目に大粒の涙を浮かべ、悲しそうに俯いた。なんだか小さい子供を虐めているみたいで悲しくなってきたな。
『人間化したモンスターの扱いはとても難しいんだよ。僕の事を作ってくれたジェラルドが言っていたけど、人間化したモンスターに殺された人も居るんだってさ』
「怖い事を言うなよ……」
『モンスターは人間よりも繊細なのかもしれないね。好きなものは好き。嫌いなものは嫌い。性格がはっきりしているから、人間の様に様々な人種が共存する事も出来ないんだ。モンスター間でも争いが起きるのは、自分とは異なる者の存在を認められないからなんだよ』
俺は涙を浮かべるローラを抱き寄せると、彼女が満足するまで頭を撫でた。ガチャの精確な正体は分からないが、発言の内容から察するに知能は俺よりも高いのだろう。それに、かなりユーモアもある。ガチャとは長い付き合いになりそうだ。
『長い付き合いじゃなくて、ギルベルトは死ぬまで僕と一緒に居るんだよ。勿論、ローラも一緒さ』
「本当? ローラも一緒に居て良いの?」
「ああ。ガチャもローラもずっと一緒だよ」
それから俺はタオルに石けんを付け、ローラの体を隅々までこすった。肌は陶器の様に美しく、透き通る白い肌に見とれてしまった。ローラはタオルがくすぐったいのか、楽しそうに笑い出すと、何だか俺も面白くなって笑い出してしまった。相手がモンスターでも興奮するのは仕方がない事なんだ。どう見ても人間にしか見えないのだからな。
元々ゴールデンスライムだったんだ。これから人間としての生き方をゆっくりと教えれば良い。俺はローラの美しい金色の髪を洗うと、ローラは気持ち良さそうに目を瞑った。そんなローラが愛おしくなり、俺はローラを強く抱きしめた。
旅に出てから無数のモンスターから追い回され、大金をはたいて購入した剣も失った。ゴブリンすら狩れない自分の弱さを知り、冒険者になる事を不安に思った。故郷では同世代の友達よりも力も弱く、頭も悪かった。生まれ持った魔力も低いから、魔法を使ってもゴブリン一体すら倒せなかった。
同世代の村人はパーティーを組んで村の近くに巣食うモンスターを狩り、村人を守っていた。ろくにモンスターと戦えない俺は、いつも『役立たずのギルベルト』と言われていた。確かに俺は役立たずだった。だが、俺はスライムの集団から暴行を受けるローラを見て、勇気を振り絞ったのだ。
不当に暴力を受けるローラを助けられるなら、死んでも良いと思った。俺みたいなちっぽけな人間が一人死のうが、世の中にはなんの影響もないと思った。しかし、スライムの前に立ち、ローラを抱き上げた時、不思議と力が湧いてきたのだ。
活力とでも言うのだろうか。何が何でもスライムを蹴散らし、ローラを守りきると決意した。案の定、力の無い俺はスライムの集団からひどい暴行を受けたが、それでも何とかローラを守り切った。最高の気分だった。役立たずと言われていた俺が、自分の力で命を救ったのだから。
「ギルベルト。これからもローラの事を守ってね」
「勿論。ローラは俺が守るよ」
俺はローラの頬に口づけをすると、彼女は満面の笑みを浮かべた。それから俺はローラと共に浴室を出て、彼女の長く美しい髪をゆっくりと乾かした。ファイアの魔法を弱めて熱風を髪に当てると、効率良く髪を乾かす事が出来るのだ。
それからローラは俺の髪をタオルで乾かしてくれると、疲れ切っていた俺の心が暖かくなった。もう一人じゃないんだ……。守らなければならない仲間が居る。俺を助けてくれるシャルロッテも居る。冒険者として成り上がり、二人から受けた恩を返そう。俺はそう心に誓うと、町で購入した食料を取り出し、二人で細やかな宴を開く事にした……。
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