魔石物語 - 魔石ガチャとモンスター娘のハーレムパーティーで成り上がり -

花京院 光

文字の大きさ
11 / 59
第一章「冒険者編」

第十一話「公爵家令嬢」

しおりを挟む
 シャルロッテは大粒の涙を浮かべ、俺に頭を下げた。シャルロッテが女の挑発に乗らなければ、ここまで大事にはならなかっただろう。俺もローラも男の暴言を無視してギルドを出た筈だからな。

 ローラがシャルロッテを抱きしめると、シャルロッテはローラの豊かな胸に顔を埋めてすすり泣いた。そんな様子をヴェロニカ様は優しい笑みを浮かべて見つめると、俺に向き直り、俺の顔を見上げた。

 つり目気味の三白眼には優しい笑みが浮かんでおり、朝日が少女の美しい金色の髪に反射して輝いている。なんと堂々とした、美しい少女なのだろうか。

「おいお前! 自分の命を捨てる気か? 私はお前の事が気に入っているのだ! お前は私のために可愛い物を集めていれば良いのだ! 勝手に死なれては困るのだからな」
「ヴェロニカ様のお陰で助かりました。ありがとうございました」
「当然の事だ。貴族の私は平民を守る義務がある。それに、お前は私のギルドのメンバーなのだからな」
「私のギルド……?」
「うむ。私がユグドラシルのギルドマスター、ヴェロニカ・フォン・フロイデンベルグだ」
「紹介が遅くなりました。俺はギルベルト・カーフェン。この子はローラ。それからこちらはシャルロッテ・フランツです」
「ギルベルトというのだな。お前が譲ってくれたホワイトベアのぬいぐるみ、あれは誠に良い物だ。もっと可愛い物はないのか?」
『ギルベルト。なんだかこの子には運命を感じる。この縁は大切にした方が良いよ』

 ガチャの声が響くと、俺はマジックバッグの中を確認した。可愛い物か……。ホワイトベアの着ぐるみはどうだろうか。着ぐるみを取り出してヴェロニカ様に見せると、彼女は目を輝かせ着ぐるみを抱きしめた。なんだか小さな女の子の様で可愛らしいな。

「ギルベルト……。お前は天使なのか? どうしてこんなに可愛い物ばかり持っているのだ? アンネや、ギルベルトが装備を買えるだけの金額を渡すのだ」
「そんな、お金を貰う訳にはいきません」
「まぁまぁ、平民は私の言う通りにしていれば良いのだ。それで、一体どうして決闘をしていたのだ?」

 執事のアンネさんが俺の懐にお金が入った袋をねじ込むと、俺はありがたく頂戴する事にして、一連の事情をヴェロニカ様に伝えた。彼女は俺達に同情しながら、何度も着ぐるみに頬ずりをして幸せそうに俺を見つめた。

「ギルベルトよ。確かにフェスカ達はお前達を愚弄したが、それでも怒りを抑えなければならない時がある。常に相手と争えば良いという訳ではないのだ。冒険者なら自分の命を守りながら、民を守れる人間になるのだ。分かったな?」
「はい。ヴェロニカ様……」
「素直でよろしい。それで、再び聞くが、どうしてギルベルトはこんなに可愛い物をいくつも持っているのだ?」
『ギルベルト。彼女は間違いなくギルベルトの救世主になる人物。僕の直感がそう言っているんだ。僕は人を見る目だけは確かなんだ』

 指環が優しく輝くと、次の瞬間、魔石ガチャが現れた。ヴェロニカ様は愕然とした表情を浮かべてガチャを見下ろした後、ガチャがヴェロニカ様に握手を求めた。ヴェロニカ様はすぐにガチャの手を握ると、満面の笑みを浮かべた。

「これは……! これは一体なんなのだ? 自分の意思で動く箱なのか? ギルベルト!」
「これは俺の相棒。魔石ガチャです」
「魔石ガチャだと? ガチャとは一体なんなのだ?」
「僕はギルベルト本人、もしくはギルベルトの仲間のみが使用出来るガチャなのさ。錬金術師、ジェラルド・ベルギウスが作り上げたマジックアイテムなんだ」
「ジェラルド・ベルギウス……。大陸で最も偉大な錬金術師だな! その錬金術師が作り上げたマジックアイテムか。一体どんな効果があるのだ?」
「僕はギルベルトの冒険者生活を支える仲間なんだ。モンスター封印と魔石ガチャの力でギルベルトを最高の冒険者にするのが僕の目標さ」
「それで、魔石ガチャとは一体何なのだ?」
「ヴェロニカ様。実はこれからモンスター狩りに行って魔石を集めてきます。町に戻って来たら実際にガチャの力をお見せする事が出来るのですが……」
「そうかそうか! それなら狩りが終わったら私の屋敷に来るのだ! アンネや、地図を書いてギルベルトに渡しておくれ」
「かしこまりました。ヴェロニカお嬢様」

 アンネさんはヴェロニカ様の屋敷の地図を書くと、俺は地図を受け取ってマジックバッグに仕舞った。シャルロッテはすっかり泣き止んだのか、ローラから離れると、何度も俺に頭を下げた。

「ギルベルト。さっき渡したお金で武具を揃えるのだ。仲間を守るために、更に強くなるのだぞ」
「はい! ヴェロニカ様!」
「良い返事だな。私はギルベルトが戻って来るまで着ぐるみを着て待つとしよう」

 ヴェロニカ様はホワイトベアの着ぐるみを抱きしめながらアンネさんと共に帰路についた。なんと気さくで雰囲気の良い少女なのだろうか。

「ギルベルト、相手の挑発に乗ってしまってごめんなさい……」
「良いんだよ。シャルロッテ」
「だけど、ギルベルトは私を守るために怪我をしてしまった……」
「この程度の怪我、ローラの魔法があればどうという事もないよ。シャルロッテが無事なら良いんだ」
「ありがとう……。ギルベルト、私達ってまだまだ弱いのね。力があれば馬鹿にされる事もないのにね」
「確かに。改めて自分の弱さを実感したよ。俺があの男に勝てたのは偶然だったし、ローラが居なければ俺は今頃焼死していたかな」
「ローラがギルベルトを守るんだもん」
「ありがとう、ローラ」

 俺はローラを抱きしめると、ローラは嬉しそうに微笑んで俺を見上げた。彼女が満足するまで頭を撫でると、ローラはすっかり機嫌を良くした。しかし、ローラの回復魔法の威力は驚異的だな。剣で肩を貫かれても、次の瞬間には痛みすら消えているのだから……。

「さて、お金も頂いたし、武具を買いに行こうか」
「そうね。ギルベルトの剣と防具が必要ね」
「ああ。強い武器と防具があれば安全に狩りを行えるからね」
「ギルベルト、ローラの着ぐるみが……」

 ローラは自分の着ぐるみを失って悲しんでいるのか、寂しそうに俯くと、俺はローラを抱きしめた。

「ヴェロニカ様には助けて貰ったし、着ぐるみならまたガチャから出てくるよ」
「本当?」
「勿論。だから魔石を沢山集めて、ヴェロニカ様と一緒にガチャを回そう!」
「うん!」

 ローラは満面の笑みを浮かべると、シャルロッテの手を握り、楽しそうに町を歩き始めた。敵意を持つ人間を前にしても動揺せずに、的確に回復魔法を使用出来るローラの意思の強さに驚きを感じる。全く、モンスター娘とは頼りになる生き物なのだな。これからも大切にしなければならないな……。

『そうそう。更に多くのモンスターを封印して、理想のハーレムを作ろうよ。ギルベルトなら第二のジェラルドになれる!』
「なんだって? 第二のジェラルドさんに?」
『ああ。彼はモンスター娘と重婚したって言っただろう? ジェラルドは数多くのモンスターを封印したんだけど、全てのモンスター娘と結婚したんだよ。全く、凄い男だろう? 僕が知っているだけで十二人のモンスター娘と結婚したんだ!』
「重婚か……。女性と付き合った事すらない俺には理解出来ないよ……」
『ギルベルトなら第二のジェラルドになれると信じてるよ!』
「そんな事を信じられても困るよ」

 俺はガチャと他愛の無い話をしながら、シャルロッテとローラと共に朝の魔法都市を歩き、低価格の武具を販売する店を探して歩いた……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...